2022年10月27日
人類の追求の原動力は何か?③~縄文人の同期と一体化と観念追求~
前回の記事では、人類の一体化と観念機能の関係から、追求力の源はなにか?を扱いました。子どものもっているような一体化の欠乏が、観念の進化に大きく関わっていることが見えてきましたね。
今回の記事では、明らかになってきた人類の観念追求の構造と、縄文人を結びつけながら、彼らの追求力の中身を捉えていきたいと思います。
前回のおさらいですが、人類の観念追求は、不整合や一体化が起点となっており、大きく3つの段階があることが見えてきました。
【段階1】これ何?を繰り返す(図解①の「不整合状態→交信」)
:「これ何?」「これ何?」を繰り返して、周りの対象や世界を掴んでいく段階
【段階2】類型化の始まり/「何?」が「なんで?」になっていく(図解②の「本質抽出→交信」)
:好奇心をもとに何?何?を繰り返していくうちに、これとこれは共通項がある、というのが分かり始める。また、少しずつ、疑問がなんで?に変わっていく段階
【段階3】本質の抽出ができ、全く違うものへの適用ができるようになる(図解③の「構造化→交信」)
:物事の関係が立体的にとらえられるようになり、関係ないものでもつなぎ合わせて考えることができるようになった段階。
縄文人は、これらの段階を経て、さまざまな観念(言葉や道具)を獲得していったと思われます。まず、これらを具体事例に絞り、イメージしてみましょう。
■「火」に対する観念進化
・段階1では、注意深い観察で、いろんな火の特性を捉えていったと思われます。火の色の違い、風や水があたったとときの反応、消えた後の炭など、何?何?を繰り返して、火という現象に一体化をしていきました。
・段階2では、火の本質の抽出に向かいます。これまでも、婚姻史ブログで扱ってきましたが、縄文人は見えない本質を抽出する力に長けています。(例えば、全ては再生・循環するという世界観は、月の満ち欠けや蛇の脱皮、人体に表れる周期といった現象から、自分たちと万物を結びつける原理を見出したものでした。)
火という現象の背後にも、火を感情のあるひとつの生命と捉えたり、循環の中にいると捉える中で、火の本質(良く燃える理由やすぐ消える理由)を見出していったと思われます。
・段階3では、さらに、本質を抽出する過程で得られた認識を、組み合わせて考えていたのではないでしょうか。例えば、火と土を一緒にしておけば、強度の高い土器ができるといったことや、火だけでなく、火から発生する煙と肉を一緒にしておけば燻製ができるなど、火に付随する現象を、応用することで道具を進化させています。
もうひとつ、具体事例で考えてみましょう。縄文人は、発酵食品をすでに見つけていました。
■「発酵」に対する観念進化
・段階1では、食物の変化に興味をもったと思われます。食物がすぐに食べられなくなったり、逆に長持ちすることに、興味津々だった縄文人がイメージされます。
・段階2では、そこに何らかのエネルギーや、存在を見出したのだと思います。長持ちしたり、色が変わったり、食べられなくなったりした食べ物を見て、そこには何か見えないけど確かに存在する対象やエネルギーが存在すると捉えたのではないでしょうか。
・段階3では、さらに、肉・魚・植物を長持ちさせる土や環境を把握し、それをいろんな食品に試行しながら、さまざまな発酵食品を見つけていったのだと思われます。
私たち現代人は、「微生物が物質の性質を変化させること」を、人間にとって有益なものであれば「発酵」、有害なものであれば「腐敗」というふうに捉えてしまっていますが、縄文人たちは、おそらく、腐敗という現象も、別の対象にとって意味がある重要なものと捉えていたように思います。全ては循環するという精霊観をもっていたからこそ、あらゆる現象を「良い」「悪い」といった自分たちの価値で判断せず、じっくり観察し、その本質を抽出できるようになったのだと思います。
「火」と「発酵」をどのように縄文人が追求していったか、イメージは膨らみましたでしょうか。次の記事では、その際に重要となったであろうポイントを深めたいと思います。
- posted by matu-syo at : 2022年10月27日 | コメント (0件)| トラックバック (0)
trackbacks
trackbackURL:
comment form