2022年03月17日
観念機能とは何か?~ヒトが言語を獲得したことで失った能力
「観念機能とは何か?」を明らかにするために言葉の無い世界の追求をしています。
ヒトは、同類への一体化欠乏を自然対象にも適用することで、対象の本質を掴むことが可能になりました。その延長に言語の獲得があります。他の動物にはない、物理的には知覚し得ない領域、更には未来までもの対象世界を手に入れました。
しかし、その言語を獲得したことで失った能力もあるようです。今回は、そこに着目してみたいと思います。
まずは、その事例を紹介します。
京大霊長類研究所では、チンパンジーの記憶力を調べた研究があります。一番小さな数字に触れた瞬間に、数字が全て白い四角に置き換わります。そこから記憶を頼りに、小さい数字から順に応えていくという課題です。
アイの子アユムをはじめ、子どものチンパンジーたちがずば抜けた記憶力を発揮します。ヒトは全く太刀打ちできないレベルです。これは、画面を写真のように映像で記憶しているからだと考えられています。映像記憶とよばれるものです。
京大霊長類研究所の動画をぜひご覧ください。
つぎに、驚異的な才能が失われたサヴァン症候群の少女ナディアの事例を紹介します。映画「レインマン」でも有名になったサヴァン症候群ですが、そのひとつに卓越した記憶力をもつヒトもいます。詳細な原因は明らかではないですが、コミュニケーションが苦手といった言語能力の欠陥との関係が指摘されています。
ナディアは知的障害を持っている子供でしたが3歳の頃にはすでに、卓越した絵画の才能を発揮。下の写真はどれも、7歳までに描いた絵画です。
やがて、7歳になった彼女は、自閉症の学校に入学し、そこで言葉の教育を重点的に受けるようになりました。すると彼女の言語能力は改善とともに、幼い頃に見せていた天才的な絵画の才能はなくなっていきました。それが下の絵です。
現代の子どもは教育を受けるにしたがい、自由な発想が次第に抑制されていきます。子どもの頃にあった自由な発想が失われ、創造性がなくなっていくのに似たものを感じます。与えられた・詰め込まれた言語や知識は害にしかならないのでしょう。
以上のように、ヒトが言語を手に入れることで失った能力、それは、モノをありのまま写真のように知覚し記憶する能力であると考えられます。
参考:るいネット(人類がもたなくなった見たものをそのまま記憶する能力)
今回は以上となります。
ところで、ナディアの幼少期の絵画と洞窟壁画に近いものを感じませんか?言語のフィルターを通さずに身体を通して描いている感じ。
描く行為とは言葉以前の「ヒトの身体を通す(五感を使って)」ことによって大切なモノや新しい考えを伝えることなのでしょう。抽象化された言語の何倍も多くの情報が詰まっているのだと思います。
このあたりを次回、追求していきたいと思います。
- posted by sai-nao at : 2022年03月17日 | コメント (0件)| トラックバック (0)
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