2006年09月02日
キクユ族の婚約から結婚まで
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キクユ族の青年は、直接相手の娘に求婚することは許されない。まず自分の気持ちを、その年齢集団の親友に打ちあけ、共に相手の娘の家を訪問することで、求婚の正式な幕が切って落とされる。
(中略)
青年たちを迎える娘の家では、彼らを母親の小屋に招き入れ、飲み物をすすめると母親は席をはずし、娘は青年たちと対座する。そこで青年の友人は、青年の胸のうちを訴え、結婚を申し込む。そこで娘が承諾すれば、彼女はそのことを両親に申し入れて欲しいと答えるが、なかなか一度だけの申込みではウンとは言わない。
そして二度、三度とこうしたことを繰り返すうちに娘がイエスというと、青年は意気揚々と両親のもとにとんで帰り、今度は両親とともに酒をたずさえ、娘の両親を訪問する。すぐに両親の間に酒宴が始まり、めでたく婚約が成立するわけである。
だが、青年の両親はそれからテンテコ舞いをしなければならない。結納の羊、山羊あるいは牛を容易しなければならないからだ。
結納として家畜を贈るという風習は、広くアフリカ各地で行われているが、同時にそれは、花嫁の価値を決定する意味もあるので、いい加減なことではすまされない。普通ケニヤでは、羊と山羊30頭というのが原則的な相場だが、牝牛なら山羊10頭分に、また牡牛なら5頭分といった換算である。また家畜の用意ができない場合には、現金、品物、賦役あるいはこういったものをミックスした支払い方法も利用される。
(中略)
結納の日から青年は、2人のスイートホームを作り、簡単な家財道具をそろえ、花嫁を迎える準備をすすめる。そして、やがて準備が整うと家族に頼んで花嫁略奪にかかる。
一方、娘の方は内心では期待しながらも、畠で耕作したり、あるいは森で薪木を集めたり、毎日の仕事に精を出している。そこを襲った青年の家族たちは、そのまま娘をかつぎ上げ、さらってくのである。
娘は大袈裟に抵抗し、大声で叫び喚き、ついには号泣する。その叫び声は部落内はいうまでもなく、遠くジャングル内にいる人々の耳にまで達するが、人々は驚かない。どこかで結婚の儀式が行われているな、と察するだけで、そのまま仕事をつづける。
また、たまには青年と娘の家族の女性たちとの間で、激しいつかみ合いのケンカが行われることもあるが、これは、あくまでも儀式的なもので、無事略奪が終ると、彼女たちは晴れ晴れとした表情で結婚の祝宴に参列する。
キクユ族の略奪結婚も他の風習と同様、略奪とそれをめぐる花婿、花嫁両家の争いというのも、今日では形式的、儀式的なものとなっている。
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以上「未開人のエロス」より抜粋
前回は、キクユ族の性の本源的な部分を紹介しましたが、今回の結納・結婚様式からは、その後、キクユ族が略奪闘争に巻き込まれて私権社会へと転換する中で、女が性を武器に私権獲得を図っていく歴史が垣間見られます。
- posted by staff at : 2006年09月02日 | コメント (5件)| トラックバック (0)
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comments
加護ちゃんのブログにマネージャーブログなる書き込みがあった、姓はマネージャー名はブログか?
お世話になります。とても良い記事ですね。
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