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2009年07月30日

中山太郎の「日本婚姻史」から~団体婚~☆2☆新婚初夜に『お連れ様』が…

kn-a4286-i.jpg こんばんは。日本各地で大雨 が降って、大変なことになっていますね
現代でもこんなに自然災害は恐ろしいのだから、天気予報もなにもない昔の人は、もっともっと怖かったのかも、なんて思います。
さて、中山太郎の「日本婚姻史」から、今回は初夜権についての記述をご紹介します。『初夜』 :blush: なんて言葉、もう死語かもしれませんね。この初夜権は、団体婚の名残だと、中山太郎は考えていたようです。
ではでは、続きを読む前に応援をお願いします
 
※写真は「花嫁人形 」です。最近あんまり見なくなった気がしますね。

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初めに、中山太郎の初夜権についての考え方について書いてある冒頭部分をご紹介します。

第一節 初夜権の行使は団体婚の遺風

 初夜権の起源や変遷や。これに関する諸学者の説を挙げて批判することは、本書の埒外に出るので省略するが、私見を素直に言えば、部落の共有であった女子共同婚から放たれて、一人の特定する男子の占有に帰するために科された義務である。
したがって、初夜権を行使する土俗の存することは、かつて団体婚のあったことを証明しているのである。
我国にも古くからこの土俗の存したことは事実である。允紀恭七年の條によると、当時、身分ある者の宴会の折に『座長(くらのかみ)』を勤めた者は、処女を請求すべき権利が与えられていたとある。これすなわち初夜権であって、当時専ら行われた習礼であった。
さらに『本朝文粹』に収めてある三善清行の十二封事を読むと、節会の折の舞姫は必ず処女に限られていたが、これにも初夜権の伴っていたことが考えられる。しかしながらこれらのものは、強者の弱者に対する股の権利の使用ともいうべきものであって、私のいうところの婚姻に限られた初夜権とは少し趣を異にしているのである。
さらに一種の呪術として処女膜を破る儀式が、往々この初夜権の行使と同視される場合があるが、これも私のいうものとは全く似て非なるものであることを注意されたい。私はこの立場から、我国における初夜権の土俗を次のごとく分類して記述を試みることにした。

 むむ。何やら難しいですが、簡単にまとめると、みんなの共有であった女子を、誰か一人の男子が独占するにあたって、その独占する男子以外の男に、初夜の権利を譲るのが「初夜権」で、それはもともと性がみなの共有物であったことの名残である、ということのようです。
ただし、婚姻における「初夜権」と、祭りなどで行われる強者の弱者に対する「股の権利の使用」とは別、というのが筆者の主張ですね。「股の権利の使用」…。なるほどですね。

 つづいて、事例をご紹介します。

土俗化された初夜権の存在

 婚姻に伴う初夜権が土俗としていかなる形式で行われたか。
淡路国の出島
漁民の多い部落であるが、ここでは結婚式を挙げる前夜に花嫁を、花婿の最も親しい友人三名が、天神様と俚称(りしょう)する鎮守の森に誘い出して交会するのを習俗としている。花嫁はこの義務を果たしてからでなければ花婿の許にいくことを許されず、また花婿もこの事件が済んだ後でなければ花嫁を独占する権利がないと定められている。

陸前国牡鹿群福井村の各部落
『おはぐろつけ』と称する結婚の奇習が、つい十年ばかり前までは盛んに行われた。これは乙女の縁談が成立し、吉日を選んで結婚式(嫁入りと婿取りの区別なく)を挙げるというその前夜に、新婦の家の近隣の若衆連の中で、平素から新婦が目星をつけていた青年に身を任せることなのである。
その方法は、青年が新婦を誘い出してもよく、また新婦の家に忍び込むのも差し支えなく、家族もこれを公然と認許し、新郎もまた黙諾するという入念の貞操蹂躪である。この奇習は今でも辺鄙の部落には若衆の悪戯として、稀に行われることがあるそうだ。

奥州の某地方
結婚の前夜に花嫁は、自分の親族中の未婚の青年と通じてから華燭の式を挙げ、花婿はその後において専占するということである。
これらは共に初夜権がその青年によって行使されたことを明白にした土俗である。

下野国塩谷郡栗山郷(筆者の故国)
山間の僻村で、昔は他人の顔は一年中にも数えるほどしか見られぬと言われた土地であるが、婚姻は概して近親同士で、しかも山では恋を知るのが早く、ことごとく早婚である。
『娘十三嫁(ゆ)きたがる』とことわざにあるように、都会であれば通学盛りの小娘が、この地では立派に母親となっている。
ここでは婚礼の夜には、花嫁も花婿も必ず『お連れ様』という者を帯同する。お連れ様は両親の揃った同性を選ぶのであるが、婚礼の式も進み、大盤振舞が終わり、御段振舞が済むと『床のべ』となるが、お連れ様は無遠慮にも新夫婦と共に同じ室に枕を並べて寝るのが礼儀とされている
このお連れ様なる者は、以前に載せた祭礼の神婚式における『御仲持』または『御取持』の意味の土俗ではないかと考えて見たが、それでは同室に寝るということが解釈されぬので、これも古くはお連れ様なる者が初夜権を行使したのを、かく合理的に通俗化したものと考え直した。なおこれについては同地の友人に照会して私見の是非を確かめたいと思っている。

新婚さんの初めての夜に、『お連れ様』がいっしょに床へ 現代なら理解不能ですが、初夜の相手を結婚相手以外がつとめるのが決まりであれば、その名残としてはうなずけます。では、結婚の前に他の人に初夜の相手をしてもらうのは何で?もう少し事例を見て考えたいと思います。

婚姻の一儀式とまで退化した初夜権

 初夜権の行使が風俗化され、さらに通俗化されて、単なる婚姻の一儀式と考えられるまでに退化したものも相当に残っている。

三河国南設楽郡長條町附近の村落
結婚の当夜は『おえびす様にあげる』と称して、新夫婦が合衾せぬ慣習がある。これなどは蛭子神の名に隠れて古代の神官が、初夜権を行使したことを物語っている土俗である。

能登国の鳳至・珠洲の両郡の村落
結婚の式場には新郎は列座せず、したがって新婦と三々九度の盃事をなさず、新婦はわずかに舅姑とのみ親子の盃事をする習慣がある。

山城国葛野郡梅ヶ畑村
京都を西北へ二里余り隔たる僻邑であるが、この村では昔から他村と通婚せぬ。花嫁は近所の女達が送って新婿の家に行くが、家に着くと一応両親に挨拶して、すぐたすきをかけて勝手を出て手伝いする。そして夫婦の盃事もせず、その夜は合衾せぬことになっている。これなどもその古い世相は、新婦に対して初夜権を行使される間だけ新郎が所在を隠し、またはわざと合衾を避けたものであろうと考察される。

琉球
結婚式が終わると、それが中流以上の者であれば、新郎はその場から友人と連れ立ち遊郭に赴き、二三日流連するのが国風となっている。そして新婦はその間は毎日心を籠めたお料理をつくり、それを新郎の許へ持参するのであるが、これは新婦の嫉妬を矯(た)めるためだと言われている。
しかしこれなども土俗を方便的に倫理化したものであって、その真相は能登のそれと同じく、初夜権の実行される期間だけを、わざわざ新郎が逃避したものに由来しているのである。

さらに事例を続けます。

媒酌人が有したる股の役徳
純粋なる初夜権の行使から派生したものではあるが、それが時勢の推移につれて、後には破素(処女膜を破る儀式)のように解釈せられるようになった土俗に『媒酌人(なこうど)八番』というのがある。私は仮にこれを媒酌人の股の役徳と名づけるとする。

南下野の足利地方
今に媒酌人八番なる俚諺が土地の者の記憶に残っているので証明される。すなわち媒酌人は新婦に対しては八回だけ、新郎より優越権を有しているという意味なのである。

羽前の米沢市に近い萩村
媒酌する者が、まず花嫁となるべき者を貰い受けて(媒酌人が嫁を貰い受けるとは注意すべき事である)自宅へ連れ来たり、三晩の間は自分の側に起臥させてから、百八個の円餅をつくり、それを媒酌人が背負い花嫁を同行して新婚の家に赴き結婚式を挙げる慣習がある。これも要するに三晩だけが媒酌人の股の役徳であったに相違ない。

 まだこの外にわが国にも、神官僧侶や将軍大名などが、初夜権を行使した例証は相応に存しているけれども、それ等は概して婚姻に関せざるものゆえ、ここには省略し必要の場合に述べるとした。

 わざわざ、初夜に婿が姿を隠したり、はては仲人が花嫁を先に貰い受けてともに寝泊りさせたり。ここまで結婚前の性の経験にこだわるのは、結婚には大人(=性の経験がある)であることが必要だったからではないでしょうか?
これまでの記事に出てきた事例をみても、結婚するまで処女を大事にするなんてことはあり得ず、若衆集団で性の手ほどきを受けたり、村の信頼できる人に物を持参して頼んで、娘の初めての相手をしてもらったり、いかにみんなに遅れずに性を経験するかというのがほとんどでした。
また、仲人が初夜の相手をする事例からは、二人の今後の仲がうまくいくように、性も含めたいろんな意味での教育のという役割もあったのではないかと思います。
以上、ちょっとびっくり「初夜権」のお話でした。今回も最後まで読んでくださって、ありがとうございます

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極限時代の婚姻制度について、よくわかる記事でした。ありがとうございます。
婚姻制度を考えることで、「人類の性の本質は共認充足を得ることにある」と言うことが、より鮮明になったと感じました。
また、同じ「首雄集中婚」でも、観念機能取得以降は、チャネリングによって、集団皆が性充足を得られるように変化して言ったというのは、非常に大きな気づきでした。
チャネリングの視点から考えると、人類の「観念機能」も性における共認充足をより高める為に、使われているのだと理解しました。
首雄集中婚については、動物原理的で人類社会では考えられないと一般的には認識されているようですが、現代でも強い飢えの圧力に晒されている部族では、首雄集中婚の名残を残した部族が多いようです。(ザイールのバクツ族や部屋ーインディアンなど)
やはり婚姻史を考えていく上では、価値観に捕らわれない事実追求が重要ですね。

  • MAXIMUM
  • 2009年10月31日 20:05

>この極限時代の婚姻様式はその後の外圧状況の変化に応じて無限に組み換えられています。
700万年前に誕生した人類は気の遠くなるような年月を経て概ね1万年前、洞窟生活から脱出し地上に進出していきます。
地上進出が可能になった背景には、弓矢をはじめとする道具を使いこなしはじめ、強力な外敵と互角に闘える力がついてきたことによります。
怯えるように生きながらえてきた「ながーい」極限時代に比べれば大きな変化です。
この外圧状況の変化は当然婚姻形態の変化を生み出します。
>外圧が低下すると集団統合力が低下し、規範収束力も低下してゆく。同時に、外圧の低下につれて解脱収束(中心は性充足の欠乏)が強まってゆく。更に、集団規模が拡大したこともあいまって、原モグラ以来1億年に亙って踏襲してきた首雄集中婚を維持することが困難になっていった。こうして約1万年前、人類の雌雄(婚姻)関係は劇的に変化してゆくことになったが、豊かな山野や海辺に進出して木の実などの採集や漁労に転じた採集生産の部族と、従来通り獲物の豊かな森林で狩猟を続けた狩猟生産の部族では、全く異なる婚姻規範を形成する。
>東アジアの黄色人(モンゴロイド)をはじめとして、世界人口の過半を占めていた採集・漁労部族は、仲間の解脱収束→性欠乏の上昇に対して、皆が心を開いた期待・応望の充足を更に高める方向を目指し、部族内を血縁分割した単位集団(氏族)ごとの男(兄たち)と女(妹たち)が分け隔てなく交わり合う、総偶婚規範を形成した
http://www.rui.jp/ruinet.html?i=100&c=1&t=8
外圧の低下+豊かな食料条件に恵まれた採集部族は性充足を集団全員の充足源にする総偶婚の婚姻様式をとっていきます。

  • chai-nom
  • 2009年10月31日 20:14

>外圧の低下+豊かな食料条件に恵まれた採集部族は性充足を集団全員の充足源にする総偶婚の婚姻様式をとっていきます。(chai-nomさん)
総偶婚における男女の役割は、
>採集部族では、弓矢を持った男たちが防衛する(狩猟もするが、獲物は少ない)安全域で、女たちが主要な食糧を採集する。(http://www.rui.jp/ruinet.html?i=100&c=1&t=8#04)
ということになっていますが、
>それでもなお男たちの期待の中心は性であり、従って女たち自身にとっても、自分たちの中心的な役割は性役(男たちに性的充足を与えること=自らの性的充足を得ること)であった。(同上)
その結果、採取部族の女たちは更に性機能を磨き、男性もそれを認めていたようです。例えば、初めてタヒチを訪れたスペイン人は、喜んで自分の妻や娘・妹などを提供する島民に驚いたというようなエピソードからもその様子が窺えます。
そう考えると、総偶婚という婚姻形態への移行は、それ以前の首雄集中婚における男女の役割をほぼ踏襲するかたちで発展していると言えそうです。

  • doUob
  • 2009年10月31日 20:23

採集部族→総偶婚とは別の流れもあります。
弓矢の発明の後、ヨーロッパの森林地帯に留まった部族は、狩猟部族として生きていきます。
彼らは、狩猟という生産様式から、まだまだ強い闘争圧力を受けて強い集団統合力を維持し続けました。その結果、狩猟生産時代でもしばらくは、首雄集中婚の規範が残り続けました。
しかし、外圧の低下によって次第に解脱収束が強まり、人口も増え集団規模も拡大してゆきます。そこで狩猟部族は、首雄集中婚を残しつつ、婚姻の資格を一段下に拡張した勇士集中婚を形成していきます。
勇士婚(勇士婿入り婚)とは、女長老が采配する母系氏族の姉妹たち全員が勇士を迎え入れる婚姻様式です。今まで首雄一人であったのが、何人かの勇士を迎え入れます。そしてその勇士は、今まで、みんなの評価によって選ばれていた首雄とは大きく変わり、何らかの資格で選ばれます。

  • yooten
  • 2009年10月31日 20:30

mbt ireland 共同体社会と人類婚姻史 | 本格追求シリーズ1 人類の”性”の本質を探る<人類にとって性とは?(2) 極限時代の人類の性(後半)>

はじめまして
とても、参考になりました。
種の保存
男と女 その本能に興味を覚えました。

  • taisi
  • 2014年2月15日 05:29
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