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2019年05月09日

分子時計による年代推定は当てにならない

サルの進化史・人類史年表(定説)を読み解く上で注意すべきことがある。
それは、ヒトとチンパンジーの分岐年代を400~600万年前とする定説をはじめとして、年代推定の根拠となっている分子時計法が、当てにならないということだ。

分子時計法とは、異種間のDNA塩基やタンパク質、アミノ酸の分子の違いに着目し、その分子変異を時計と見なして進化系統上の分岐年代を決める手法である。ミトコンドリアDNA解析やY染色体亜型分析など様々な手法があるが、共通するのは、分子の変異速度が一定であるという仮定が措かれていることである。例えば、化石記録から10万年前に分岐したと確定しているAとBという種のDNA塩基配列が10個違っていたとすると(分子変異速度が同じであるとして)Aと5個しか違わない種は5万年前にAから分岐したと推定される。
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ところが、分子時計法は様々な矛盾を露呈している。

ヒトとチンパンジーの分岐年代が400~600万年前という定説も、分子時計法によるものだが、2001年にアフリカのチャドで発掘された猿人の化石は700万年前のものとされている。
また、種によって分子変異速度は異なることがいくつも報告されるようになった。
例えば、一般哺乳類よりもゲッ歯類は速く、サルは遅い。とりわけ、真猿は進化するほど分子変異速度が低下することがわかっている。
その結果、分子時計による分岐年代と古生物学的な推定年代とが大幅に食い違っている。
例えば、分子時計では1500万年前以前に分岐したとされるサルについては、化石年代はその1.5倍以上古い。分子時計で1000万年前以降の分岐と推定されるサルについては、化石年代はその2倍以上古い。このように分岐時期が新しいものほどズレが大きくなっており、人類の分岐年代も500万年前より古い可能性がある。(1960年代に分子時計法が登場する以前の人類学者は、人類の分岐を1000万年前以前と主張していた。)

こんなことになるのは、分子時計法が前提とする「分子の変異速度が一定」という仮定が、現実には有り得ないことだからである。
∵生物は外圧適応態であり、急激に外圧が変化すれば変異スピードは著しく早くなる。実際、カンブリア大爆発や哺乳類の適応放散をはじめとして、急速に進化する事例は生物史には無数にある。また、紫外線による破損やコピーミスをはじめとしてDNAの突然変異は日常的に起こっているが、それは修復酵素によって修復されている。その修復度合いも種や環境によって異なっており、分子の変異速度が一定になるはずがないのである。

「分子変化率は一定か~古生物学からの分子時計への疑問~」
この論稿の著者(古生物物学者の瀬戸口烈司氏)は、分子時計説を痛烈に批判している。
その骨子「分子時計は分子変化率一定の仮説に立脚しているが、実際は分子変化率は一定ではない。にもかかわらず、変化率一定の仮説をあてはめる分子時計は、科学的根拠がない。ところが分子生物学者たちは変化率一定の仮説に固執し、ヒトとチンパンジーの分岐時期は500万年という標語を繰り返している。分子時計の概念が提示された当初から、分子変化率一定の仮説には疑問が投げかけられてきたが、この仮説が覆されると分子時計の計算式が成立しないので、分子進化研究者はその疑問を無視し続けてきた。そして分子時計説に整合しないゲッ歯類を除外し、整合するものだけを集めてテストする。すると分子時計説に都合のよい結果が得られるが、その結果は分子変化率の一定性の証明にはなっていない。」

このように、分子の変異速度一定という仮定は、現象事実と照らしても、また論理的にも破綻している。にもかかわらず、分子時計年代がまかり通っているのが、生物学界の現状である。

さすがに、あまりにも矛盾が大きいので、分子生物学者の一部は、分子変異速度は一定ではないと認めつつあるが、彼らは分子変異速度という概念を温存したまま、種別の変異率を変えたり、統計的手法を用いるなどして、化石年代との辻褄合わせを図っている。しかし、ヒトとチンパンジーの分岐年代の辻褄を合わそうとすれば、オランウータンの分岐年代が古くなりすぎるなど、混迷を続けている。
『自然史ニュース』「ヒト進化で分子時計は正確?」

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