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2022年10月16日

縄文人が生み出した道具・技術~食編②「調理法から捉えることができる自然現象の再現、応用や組み合わせ」~

火を使えるようになる前、洞窟に隠れ住んでいた時。前の記事で「食べ物を食べるための工夫はあっても、調理はしていなかった」と記しましたが、食べ物の保存もしていなかったと思われます。厳密には、策を施さなくとも保存できていた、そもそも保存していなかった可能性が高い。

洞窟の中は、湿度は非常に高いものの、気温は低く、食べ物の状態は悪くなりにくいです。洞窟の温度は地域差があり、南西諸島では20-22℃、九州以北では10-16℃、東北以北では10℃未満程度だそうなのですが、冷蔵庫は温度10℃程度、湿度60%程度なので、洞窟は冷蔵庫の中のような場所と言えます。
そして、そもそも、わずかな量の食べ物を分け合って生き延びていた状態で、先々のことを考えて長期的に保存していたとは考えにくい。

(保存が目的かどうかは別にして)乾燥や発酵などの方法が編み出されたのは地上で生活するようになってからだと考えられます。

では、具体的な調理方法から迫っていきます。

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■冷蔵・保温
涼しい洞窟出身の人類にとって、冷蔵は身近なもの。しかし、地上では工夫が必要です。そこで編み出したと思われるのが、土の中に埋めるという方法。土の中は、夏は涼しく、冬は温かいということを食べ物にも応用したのです。

福島県にある遺跡の縄文期の貯蔵穴とみられる土坑から、クルミが大量に詰まった編みかごなどが出土しており、クルミはわき水につかったおかげで腐らずに残ったと考えられています。
また、その他多くの出土物や縄文人の住んでいた住居の構造などからも、土の中を活用していたことは間違いがなさそう。食べ物を土器や編みかごに入れ、土の中にいれていたと考えられます。参考

 

■乾燥・燻製
縄文時代には、食べ物を太陽に当てて乾燥させたり、火で炙った後に風などによって乾燥させるなどの手法を持っていたと言われています。例えば、海苔は奈良時代の書物に登場しているのですが、縄文時代の遺跡からもわかめやひじきなどが発見されていることから、海藻を乾燥させていた可能性があると考えられています。

縄文人の追求力をより感じるのは、乾燥・燻製のために様々な種類の炉を作っていたこと。火を使った所を「炉」と呼ぶのですが、地上のものを含めて6種類ほどあるそう。

縄文時代早期を中心に見つかった、大小二つの穴がトンネルで繋がった連穴土坑という遺構は、トンネルの下の土が赤く焼けている場合があり、また、併せて動物の脂肪酸が検出されていることから、食べ物を火を使用して乾燥・燻製されたと考えられています。

食べ物を直接火にかざすことから発展して、空気や煙で温めることで、食べ物に熱が通るということ発見しているなんて、すごい!

 

■塩漬け・発酵
日本で見つかっている最も古い発酵食品は縄文時代の魚醤です。これは魚介類を塩漬けにして作る発酵調味料で、縄文時代には、塩、塩に漬ければ保存ができること、そして食べ物と塩により発酵することを発見していたことがわかります。

そして、驚くのが発酵を捉えていたこと。先の魚醤などの調味料、納豆などの食べ物、どんぐりや山ぶどうを発酵させたお酒(の醸造用樽と思われるもの)も、各地の遺跡から発見されています。

発酵とは人間にとって有効な微生物が働き、物質を分解させることを指すのですが、腐敗との線引きは曖昧。今でこそ、でんぷんは糖分に、たんぱく質はアミノ酸に変わり、甘み成分や旨味成分が増えるなどと解明できていますが、縄文人は腐敗との紙一重である物を食したり飲んでみて、食べられる、食べやすくなった、おいしいと発見したのでしょう。活用するにまで至った背景に、腐敗やカビなどに対して、価値観はなく、排除するのではなく受け入れていた姿勢が伺えます。

 

さて、縄文人が編み出した様々な調理方法をみてきましたが、縄文人は、なんのためにこのような調理方法を探究したのでしょうか。そして、どのようにして編み出したのでしょうか。

調理方法からも、自然の中にある現象を再現したり、その再現を応用させたり、ある再現とある再現を組み合わせたり、、、といった高い追求力を感じずにはいられません。

洞窟に住んでいた時には目にすることのなかった自然のあらゆる現象が、縄文人にとって未知の探究の対象であったこと。圧倒的な存在である万物から、何かを受け取って返そうとしていたこと。一体になろうとあらゆる機能を使って何度も何度も試みていたこと。縄文人が編み出した調理方法の背景からも、これらのことを垣間見ることができます。

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