2007年05月29日
「性否定社会」ってホントに存在したの?(2)
『「性否定社会」ってホントに存在したの?(1)』に引き続き“ファス族”社会を紹介します。
性否定的な雰囲気を漂わせている社会の背景には、部族間の縄張闘争圧力の上昇、圧力を緩和する為の敵対する他部族との婚姻関係の形成、などが関わっているようです。
以下、『性と出会う―人類学者の見る、聞く、語る』(松園万亀雄 編集/講談社)の中から”ファス族”について、栗田博之氏(東京外語大学 外国語学部 総合文化講座 教授)の調査内容を抜粋・引用します。
●嫁入り婚と婚資と親族関係
○結婚の際、新郎側が新婦側に対して婚資を支払う。この婚資を支払い終わるのが正式な結婚の成立を意味します。莫大な婚資を新郎一人で支払うことは不可能で、新郎の父方・母方両親族全体の援助をうけなければならない。親族間のネットワークを使い、みんなから金品を集めて新婦側に支払うわけです。受け取った新婦側はそれをやはり父方・母方両親族みんなで分け、自分たちの親族に属する男性が嫁を迎えるときには、前に分け前をもらった人が今度はみんなで婚資を援助してやる。
○通例、子供は母親が主に面倒をみるが、育児の過程で男の子は母親と頻繁に接触するために、体内に危険な女性的要素が蓄積されてしまい、長じて悪い影響が出るとされる。男の子が成長して大人になるためには、この点を何とかしなければならない。そのために、男の子が大人の世界へ仲間入りするためのイニシエーション儀礼で、男の子の体内から女性のものを排出させるために、無理矢理食べ物を吐かせたり、鼻血を出させたりするような操作を行う社会がある。
○ファス社会では、女性の胎内で胎児が形成されるには父親の精液と母親の経血が結合しなければいけないとされていて、その子供に関しては父方親族と母方親族の両方に権利があると考えられている。親族関係が交換や相互扶助の関係で結ばれている。当然、その親族同士は全くの赤の他人よりもつながりは圧倒的に強いのだけれど、どちらかが不義理をしたり約束を守らなかったりすると、逆に両者の間の緊張が一気に高まってしまう。両者の緊張が高まるのはたいていが婚資の件。
○女性の穢れに対するファス社会の忌避感を考えると、その根底にはやはり男性と女性の対立関係があるのかなという気がする。彼らの社会では今日でも居住空間そのものが男女で完全に分離されている。
なぜ、男と女が一つの社会の中でこうも対立する形になっているのか。その理由の一つとしてよく言われるのは、妻となる女性がよその集団から来る人間であったことと関連するのではないかという見方がある。かつて、ニューギニアのほぼ全域で、親族集団が自律的な地域共同体を形成していて、それぞれの集団は相互に敵対関係にあった。しかし、外婚規範(同じ集団内の男女の結婚を禁じる規則)のため、男が妻にできるのは敵対する別の集団の女性だけでした。そのために敵と味方という対立関係が、そのまま男と女の関係に反映されていたのではないかと。
“ファス族”社会は、「男と女の対立関係」というよりも、潜在的な「部族間の対立関係」なのかも知れません。また、性否定というよりも、男女の関係・性に関して距離を置いているような感じを受けます。男の子の「イニシエーション儀礼」は、その性の引力に負けない強固な男同士の絆を創る儀礼なのかも知れません。
背景には、「部族間の縄張闘争圧力の上昇」⇒「父系制、嫁入り婚への転換」「敵対する部族との婚姻関係」「婚資の登場」⇒「女の不安」「男の性的自我の発現」⇒「集団崩壊の危機に直面」⇒「性を否定的な対象として封じ込めようとする規範風土の形成」という状況があったのでしょうか?
ニューギニアは、自然環境が多様で、多くの部族が住んでいます。他の部族はどのような状況なのでしょうか。もう少し、ニューギニアという地域の形成過程や外圧状況を調べてみる必要がありそうです。
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- posted by sachiare at : 2007年05月29日 | コメント (5件)| トラックバック (0)
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「愛情表現」としての家事・育児って、何だかすごい観念的ですね。共同体的色彩を残している日本人からは、とても出てきそうにない発想です。
たかだか数十年の歴史しかなく、かつ、もはや衰退の一途を辿っている「恋愛結婚」に焦点をあてても、得られるものは少なそうな気がします。
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