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2019年9月5日

2019年09月05日

真似という身体行動によって活性化する同一視機能(ミラーニューロン)

身ぶり手ぶりから相手の意図をくみ取ろうとするとき、「ミラーニューロン」と呼ばれる神経細胞が働いている。サルが手で餌をつかみ取る時に反応する脳内の神経活動が、他のサルが餌を取る様子を見るだけでも同様に反応する。他人の動作を自分の頭の中に写し出す鏡のような反応を示すことから、ミラーニューロンと名付けられた。

国立身障者リハビリセンターの西谷信之感覚認知障害研究室長らが、人にもミラーニューロンのような部位があることを明らかにした。
棒の先を自分でつまんだ時にも、他人がつまむのを見るだけの時にも、いずれも言葉をしゃべるときに関係する前頭葉の運動性言語野(ブローカー野)の領域が反応する。この反応部位は解剖学的にサルのミラーニューロンがあった部位に近く、他人がつまむのを見てすぐに自分もつまんだときは、その反応が一層強くなる。赤ちゃんは親の身ぶり手ぶりから様々な動作を学び、自分の意思を表現できるようになる。今回の結果は、言語に関係する部位で他人の行動をあたかも自分の行動のように感じ取っていることを示した。

このミラーニューロンは「相手と自分を同一視する機能が共認機能の原点であること(実現論1_4_05)」の証拠であるが、ミラーニューロンは相手の表情を真似することで活性化することがわかっている。逆に、自分が相手の表情を模倣できなくなると、相手の感情が分からなくなってしまうという。

以下、 池谷裕二著『脳には妙なクセがある』新潮文庫のp.132「ボトックスの意外な効果」の要約である。

 ボトックスは食中毒の原因として知られるボツリヌス菌の毒素を顔に注射すると、顔面筋の動きが鈍る。顔のシワができにくくなるので肌の老化を防ぐとされているが、ボトックスを使用すると、相手の感情を読みにくくなるという。

南カリフォルニア大学のニール博士が、次のような実験を報告している。総勢126人の参加者にさまざまな表情の写真を見せ、その表情から「楽しい」や「悲しい」などの感情を読み取るという実験であるが、ここでボトックスを顔に注射すると、表情を読み取る能力が低下した。ニール博士は「無意識のうちに相手の表情を模倣しながら、相手の感情を解釈している」と説明している。笑顔の人を見ると自分も楽しく感じるのは相手の表情を真似するからであって、笑顔の人を見ても全く真似しなければ楽しくは感じないのだ。

赤ちゃんに微笑みかけると笑顔で返してくるように、サル・人類には相手の仕草を真似る機能が備わっている。特に共感している相手には、無意識に似た動作をする。むしろ、真似するからこそ共感できる。表情から感情を読むときも、たとえば「笑顔」をしている相手を見たら、自分もその表情をわずかに真似してみる。すると、笑顔の効果で、自分の感情が楽しくなり、「真似したら、楽しくなった。ということは、相手は楽しかったのか」と、そんな推論を重ねて、私たちは相手の感情を読んでいる。

また、対談中に相手がコーヒーを飲んだらこちらもカップに手を伸ばしたり、相手が頬づえをついたらこちらも頬づえをついたりなど、さりげなく相手の行動を真似すると、相手からの好感度が増す。サルでも自分の真似をしてくれる人を好きになると言う、真似は種を超えて心を近づけ合う力がある。

このように、ミラーニューロンの同一視機能も、真似という身体行動によって活性化するのである。

 

 

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