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2011年01月02日

遺伝子学から見た、人類拡散の多様性

崎谷氏の「DNAでたどる日本人10万年の旅」を紹介した投稿をここで紹介します。
るいネット:【遺伝子学から見た人類拡散の多様性~崎谷氏の著書より】
遺伝子の研究によりアフリカから、幾つかの人類が世界中に拡散していく様が、リアルに再現されて生きます。日本人のルーツの南方説VS.北方説もこれで決着が付くかもしれません。
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◆大地を移動する人類◆

■出アフリカ三大グループが共存する日本列島の多様性の高さ
DNA多型分析を人類学に応用する事は、まずミトコンドリアDNA研究者の手で始められた。しかし、その後、長期にわかるタイムスパンの追跡にはY染色体分析が適している事がわかり、10年ほど前から多くの研究者が急速な進歩を示して、今では世界的な人類の移動の歴史がほぼ再現できるところにまでなった。
なお、ミトコンドリアDNAは母方だけの遺伝様式を、またY染色体は父方からの遺伝様式を追跡する事になるので、これらはちょうど補い合う事になる。しかし、ここでは詳細なことには立ち入る事ができないので、Y染色体によるDNA多型分析を中心に話を進める事にする。Y染色体は大きく分けてAからRまでの18の系統に分けられる。
大別すると
A系統(アフリカに固有)
B系統(アフリカに固有)
C系統(出アフリカの第一グループ)
D,E系統(出アフリカの第二グループ)
F~Rまでの系統(出アフリカの第三グループ)
の5つのグループに分かれる。
現生人類の発祥の地アフリカに留まったA,B系統を除くと、アフリカから出ていったグループは3つの系統、つまりC系統、D系統、E~R系統に分かれる。
この出アフリカ三大グループの末裔が全世界に広がっていった結果、現在の全世界的なヒト集団の分布に繋がっている。

Y染色体亜型の分布は世界各地で大きな地域的差異を生んでいる。
たとえばパプアニューギニアには地域特性としてM系統やC系統が見られる。
またアメリカ大陸の先住民にはQ系統が広く分布し、C系統と合わて地域特異的な亜型分布を示している。
アメリカ大陸へ移住したQ系統とC系統はシベリアを経て移動したことが推定されており、シベリアには特にC系統(いわゆるアルタイ系言語集団)の高い集積がみられる。
なお、シベリア北部から北ヨーロッパにかけてN系統(ウラル系言語集団)の特異的分布が見られる。ヨーロッパではR系統が高い頻度で見られ、ヨーロッパ系言語が流入する以前の先住系ヒト集団を示すようである。なお、地中海世界の南ヨーロッパ、北アフリカ、中東にはE系統の集積が見られる。
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からお借りしました。
このE系統と近縁のD系統が世界的にも稀な例として日本列島とチベットに今でも高い率でみられる。
   
M系統、C系統:パプアニューギニア
Q系統、C系統:アフリカ ⇒シベリア(アルタイ系言語集団)
N系統    :シベリア北部~北ヨーロッパ(ウラル系言語集団)
R系統    :ヨーロッパ系語族が流入する以前の先住系集団
R系統    :アメリカ大陸の先住民 
E系統    :地中海(南ヨーロッパ、北アフリカ、中東)
D系統    :日本
 日本列島におけるY染色体亜型分布の特徴は高いD系統の分布だけに限らず、この出アフリカの3系統のいずれにも由来するグループ、つまりC系統、D系統、およびN系統、O系統が今でも共存していることが全世界的に見て非常に珍しい状況を生んでいる。
ヨーロッパは非常にDNA多様性が高い地域ではあるが、出アフリカの二系統しかみられない。
パプアニューギニア、アメリカ先住民、シベリア、インド、中国その他ほとんどの地域が出アフリカの二系統までしか見出せないのに対して、ここ日本列島では出アフリカの三系統の末裔が今でも認められる。これは歴史上の不思議である。
 なぜ、日本列島には遠く隔たったヒト集団が歴史的に消滅せずに今でも存続してきたのか、あるいは存続することができたのかは、非常に興味をひく現象である。それがどのような意味をもつのか、それを考えるのが本書の課題である。

著者が指摘しているD系統は世界的には極めて少数の頻度でしか出現せず、チベット、日本にしか見られないという特徴を示しており、このD系統が縄文時代に日本に渡来している。
D系統の経路は出アフリカをした後、13000年前(新石器時代への移行期)にE系統から分岐しユーラシア大陸南方を東に移動してインドー東南アジアー中国南部を経由してモンゴル高原で西と東に分かれる。
モンゴルにもD系統が発見されているが、多くはD1,D3がチベットに、D2が日本列島に見られる。大陸から日本への渡来経路は中国華北から朝鮮半島を経由して北九州に入ったと推定されている。

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同じく崎谷氏の著書「DNAでたどる日本人10万年の旅」より日本列島に定着した各系統の特徴と、その分布を見ていきたい。
なぜ日本にこれほどのDNAの多様性が温存できたのかは大陸の戦乱史と比較して見ていくと明らかになってくる。
同じく崎谷氏の著書「DNAでたどる日本人10万年の旅」より日本列島に定着した各系統の特徴と、その分布を見ていきたい。
日本列島では維持できた高いDNA多様性
日本列島へは、
後期石器時代にC3系統、O系統のヒト集団(移動性狩猟文化)が、
新石器時代にはD2系統(縄文文化)C1系統(貝文文化)およびN系統のヒト集団が、
金属器時代以降にはO2b系統、O2a系統のヒト集団(長江文明)、
またその他、O3系統(黄河文明との関連)O1系統(オーストロネシア系)などの集団が渡ってきて、
現在までそれぞれの集団を維持している。このように日本列島は非常にDNA多様性が高い地域である。それもかなり遠隔なヒト集団が現在も共存しているという世界的にも珍しい地域である。
 これに対してユーラシア大陸東部に目を転じて見ると、そこには民族の存亡をかけた凄まじい戦争の歴史が大幅にDNA地図を塗り替えた事になる。
まず旧石器時代には東アジアにおいても狩猟採集の民族が広がっていたと思われる。それはおそらくインド経由で東アジアに達し、北上してきたC3系統の可能性が考えられる。今でもC3系統の末裔はシベリアの地の少数民族、先住民として残り、主に狩猟採集の生活を送っていた。
しかし東アジア東部においてシベリアやモンゴルなどを除く華北、華南、東南アジアにおいてはC3系統の比率は非常に低い。これはその後に膨張してきた別のヒト集団によって少数者へと追い込まれていったからではないだろうか。
また、D系統についてもその分岐の時期(13000年前)の推定値によると東アジアにもっと拡がっていた可能性が考えられる。しかし今では東アジア各地や朝鮮半島ではD系統は極めて稀で、この日本列島に最大の集積地点が残り、また遠く離れたチベットでD系統が存続するという事態に追い込まれている。両者を分ける広大な地域には後に別のヒト集団が割り込んでいたことが予想される。

このC3系統、D系統を圧迫してそれらを隅に追いやったのがO系統である。その分岐時期(17000年前)や移動の開始時期(8700年前)の推定値は新石器時代におけるO系統の拡大を示している。
漢民族と関連するO3系統は東アジア北部の華北、黄河上流域に端を発して次第に南へ東へと拡大していった事が指摘されている。O3系統の拡大は黄河文明の拡大を意味しており、長江文明として繁栄していたO2系統の集団を圧迫した。O3系統ヒト集団による先住系集団の圧迫・壊滅は朝鮮半島でも同様で、縄文文化を担ったとされるD2系統は朝鮮半島では壊滅している。
これらとは対照的に日本列島には東アジアの生存競争に破れたD系統およびO2b系統が非常にたくさん存続している。特に新石器時代のヒト集団の名残として貴重なD系統が世界的にも非常に高いレベルで今も日本列島の中心を担っている事は、日本列島の固有性を考える上で非常に重要であると思われる。
さらに日本では少数になっているが、今でもc3系統、Q系統、N系統、C1系統が存続しており、こうしてみると、日本列島には東アジアの古い歴史に関わる貴重な人々が今でもそのDNAを保存することができたこと、時代ごとに東アジアの変動を表すヒトの避難場所として古いものから新しいものまで重層したヒト集団の複雑な構造を示している事などの点で、貴重な地域であると考える事ができる。

崎谷氏のこの記事によれば、東アジアにはかつて多様な系統のヒト集団が気候変動の度に登場し、複層してきたが、やがて黄河文明を興したO3あるいはその前の長江文明を築いたO2bの集団による圧迫、拡大を受け、それ以外の小集団は方々へ散在したとされている。
集団間の圧迫の理由は時代的に見ても単に戦乱だけではなかったと思われ、ウィルスへの対抗性や寒さや乾燥への適応力だった可能性もある。いずれにしても日本列島へ渡来したのは、それらの外圧から逃れてきた民であった事は事実のようである。

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