2012年08月23日
シリーズ【共同体の原点(集団)を追求する】11 ~哺乳類の集団の原型は母子関係~
ライオンの母子(目線がいい感じですね)
いまから約1億年前の大型爬虫類の天下で、地上の弱者として土中に隠れ住み、夜行性や寒冷地にその活路を求めていった原哺乳類ですが、そこでの可能性として、「たくさんの子を確実に産み育てる」戦略を押し進めて行きます。
もともと哺乳類にいたる系統は、両性類から陸上適応していく際に「腺」を進化させた系統で、腺を使って卵に栄養を与え、乳腺を使って子を育てる方向で進化し、遅くとも1億5000万年前には「腺」が胎盤へ進化して哺乳類のスタイルを完成させています。
前回のシリーズ記事で、哺乳類の母子が、充足回路(大脳辺縁系:乳腺や嗅覚を司る脳)を強化して長期にわたる授乳・育児関係が可能になったという仮説を提起しました。
現存する哺乳類は、爬虫類や両生類と違って複雑な集団を形成しますが、その原型はこの母子関係にあります。現存する哺乳類を類型分析し、その原型が母子関係にある事を示した記事がありましたので紹介します。
るいネットの「哺乳類の摂理について1」「2」以下は引用です。
摂理や法則を論じる以上、もっと緻密に哺乳類の生態や習性、さらには進化系譜を観察する必要があります。そのポイントを以下に記します。
【1】哺乳類の共通の祖先と言われる原モグラ(現在の食虫目に似た姿形や生態を持つ)は『単体型』。『単体型』の哺乳類はメス同士でも性闘争or縄張り闘争を行っている。しかしその後の適応放散過程で数多く登場してくる『集団型』ではメス同士の性闘争は見られなくなる。一方、発情期におけるオス同士の性闘争は例外なく存在する。
【2】『単体型』『集団型』にかかわらず、オスの縄張りはメスの縄張りよりも広域。また妊娠期間や授乳期間中のメスは巣から離れず、食料確保や巣の防衛は主にオスの役割になっている。
【3】『父系制』を採っているチンパンジーとリカオンは、いずれも大型集団を形成できるレベルにまで進化した種。両者とも移動生活(≒行軍生活)を営んでおり、その結果、外敵や同類との生存競争が熾烈。
性闘争本能は集団や群れを形成するうえでは、一種の欠陥本能として作動します。それが『単体型』の哺乳類の特徴とも言えます。しかし集団や群れを形成するのは生物一般にも広く見られる重要な生存戦略ですから、その後の哺乳類の進化過程では、まずメスの性闘争を抑止することで群れを形成するようになったらしい痕跡が色濃く見られます。ちなみに、俗に言う高等哺乳類のメスは、生後の授乳だけではなく狩りや危機回避の教育なども行うのはよく知られた事実ですが、妊娠期間~育児期間中は、少なくとも子供に対しては性闘争本能が発現しないようにオキシトシン他の親和物質が分泌されます(これが世間で言う母性本能です)。
この間、オスは食料の確保や防衛のために、巣から離れずにこの母子集団と生活を共にします。
このように、胎内保育機能に不可欠な親和物質を利用してメスの性闘争を抑止できたからこそ、母子集団の形成やメスが複数いる集団の形成が可能になりました。さらには、この母子集団を庇護するオスの本能の強化も、集団形成上は不可欠のポイントです。これらの過程を経て、『単体型』から『集団型』への進化が可能になったのが哺乳類の特徴です。
ここまでの分析で、哺乳類は集団や群れを形成せず、一方で母子関係が極めて強い『単体型』から出発し、その後、(生物一般の戦略と同様に)集団や群れを形成する『集団型』に進化していった事がわかりました。
次に、大型でさらに複雑な『複雄複雌型』がその後に出現した事が示されています。
そして特殊な事例として、成体になった雄を集団に残留させるもの「父系」集団を形成する種の成立構造が示されています。
哺乳類の場合、成長したオスが生まれ育った群れを出て行くケースが大半であるのはそのとおりですが、なぜそうなるのか?。
前項でも少し触れたように、哺乳類の集団形成は『単体型』→『単雄複雌型』→『複雄複雌型』という進化の流れになっています。
群れを形成した哺乳類では、メス同士の性闘争は封鎖されているので、メスが出自集団を出て行く習性は形成されにくいと考えられます。しかし、オス同士の性闘争はどの群れにも残存し、この敗者は、基本的には勝者の縄張りから追い出されます。この本能を前提にしつつ、行動半径の広さも相まって、発情前に一旦出自集団を出て行く若オスの習性が形成されたのが『単雄複雌型』だと考えると納得がいきます。この集団形態は言うまでもなく母系制です。
その後、より大型の集団を形成していく戦略を採ったのが、若オスも縄張りから出て行かなくなった『複雄複雌型』ですが、発情期に性闘争に敗れたオスは、『複雄複雌型』の集団でも例えばアザラシやゾウのように縄張り=出自集団を出て行くケースが一般的なのも忘れてはならいない点で、この集団形態もムスメ残留の母系制になります。
その中で、例外的に父系制を採っているのがリカオンとチンパンジーですが、初期の『集団型』の1類型としてこの集団形態が登場したならいざ知らず、いずれも大型集団を形成できるところまで進化した種(=後発組)です。そして、共に移動生活を送っていることとも関連して、リカオンの場合は自分たちより強いライオンやハイエナなどに対峙する外圧を常時受けてながら狩りを行っている・・・、チンパンジーの場合は力の拮抗した同種他集団とのいつ果てるとも知れない縄張り闘争に遭遇する機会が多い・・・というような特徴があります。これらの状況に対応するために、群れの戦闘力を高く保てるムスコ残留という様式を選択したと考えると、他の哺乳類にほとんど例を見ない特殊な父系制集団の成立原因もほぼ理解できます。
以上、前稿と本稿の考察からは、哺乳類の摂理は、オス同士の性闘争の激しさと母系制による集団形成にあると言っても支障はないと思います。
哺乳類の集団は様々な形態があり、なんとなく見ていると「いろいろあるんだ」というところで終わってしまいがちです。
しかしこの記事は、「私たち自身はどうするのか?」という当事者意識を元に、外圧と進化の方向性という切り口から、哺乳類の集団構造(摂理)がオス同士の性闘争の激しさと母系制による集団形成にある事が解明されています。
ここまでで、哺乳類の原型が母子関係にある事を解明して来ました。
では、哺乳類のオスと集団の関係はどうなのでしょうか?次回は性闘争本能と庇護、防衛について解明を試みます。
乞うご期待!
by tamura
- posted by nishipa at : 2012年08月23日 | コメント (0件)| トラックバック (0)
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