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2020年10月01日

これからの共同体社会はどのように創られていくのか-17

 

前回は、共同体における課題について、全員一致の話し合いと結論への過程を重視することで本質的な合意に至ることを述べた。

そもそも共同体にとっての課題は、これまでの分業化した社会を前提としたものから大きく転換し、はるかに統合的、網羅的なものとなっていく。生産課題=企業として特化した集団も、家庭が持つ生殖課題を包摂していくことで共同体化が進んでいくし、逆に家庭は育児、教育が外注化されてしまい、その生殖の場としても風前の灯であるので、新たな場の構築が不可欠となっている。かつて「百姓」は百の姓=役割=仕事を持つ力があり、ほとんどの課題をこなしてきた。そのような全方位的な生き方が求められる。

現代的な課題の次元を考慮すると、社会次元で解決しなければならない事が大半であるので、共同体どうしの連携が不可欠となる。その場合も前回述べたような全員一致の原則に照らして合意に至ることが重要だと思われる。現実的には、賛否を問うような単純な課題ではなく、環境問題のように何をいつまでにどうするのか段階的に確定していくような課題になるし、地域差などおかれた環境によってもその内容の差が許容できる原則が求められる。いかに重層的な社会構成となっても、単位となる共同体も全体のネットワークでの課題も同一の原理で方針化されていくだろう。

今回は、そういった事例として超古代のインカ文明やネイティブアメリカンの社会を紹介したい。

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■社会の統合原理として非強制な合意の原理が垣間見えるインカ帝国

下記はインカ帝国における神殿更新という課題の事例であるが、宗教的な信仰と言ってしまえばたわいもないが、当時の最高価値を全員が共有して課題を担っていたことに注目したい。

「神殿更新」による社会統合~インカ帝国の事例~

集団を超えた社会を共認原理で統合するには、「社会的役割」の創出とシステム化が不可欠だと思います。このように考えると、以下に紹介するインカ帝国の「神殿更新」も、これに該当すると思います。文中で、「神殿更新は、当初は単なる神殿の建て替えを行う慣習であった」とありますが、私は当初から集団内統合の手法(慣習)を集団間統合のために応用していたと思います。

>インカ帝国では、国家のための建設や農作業に人民を働かせる場合、その間の食事と酒は施工者である国家が提供した。この慣習はアンデスでは非常に古くからあったと考えられるので、形成期にまでさかのぼるとすると、神殿更新時の労働力に対しては神殿の管理者が酒食を提供したものであろう。一方、神殿側は一般の農民に生産物の幾分かを神殿に寄進させたであろう。新しく建てる神殿の規模は前よりも大きくなる。その分、労働量は多くなり、そのためには更新の時までに食料などをより多く神殿の倉庫に蓄えておかねばならない。そのために神殿は農民に生産を高めるよう要請する。その要請はまた人口増加を奨励するものでもあった。

>神殿がこの要請をできるのは、宗教の正当性にある。一般の農民が神殿の祭祀とそのもとにある宗教を信じたからである。農業も建設の労働も宗教的行為という一面を備えていた。生産量の増加のために、品種改良や増産技術には積極的な関心がもたれ、そのような技術革新はすばやく各地で採用された。一方、神殿の管理者も更新のたびに祭祀や神殿の装飾などに洗練を加え、更新の正当性の論拠を強化した。

>こうして神殿更新は、当初は単なる神殿の建て替えを行う慣習であったが、次第に技術革新を促進する効果を発揮しはじめ、さらには宗教思想とその表現方法の洗練を強化し、労働力の必要が増して人口増加を促進し、さらには増加した人口の社会的統制の必要が政治制度の改変に向かわせたのである。中央アンデスでは神殿更新こそが文明化の最初の原動力となったのである。

(参考)
・「神殿の発達と文明の起源」
・「プレ・インカの謎に迫る」

 

■自然の摂理に従い、謙虚な姿勢が合意形成の根幹

人間社会である以前に自然に生かされているという謙虚な世界観を共有してこそ、社会的な合意が成り立つ。ネイティブアメリカンもそのことを認識していたようだ。

風の言葉を伝えて ネイティブ・アメリカンの女たち

●レッド・フォックスの言葉
白人の世界ではつい最近になってやっと、女性もまた知性があるのだから女性にも投票権をあたえてもよいだろう、ということがわかったのである。
インディアンはすでに原始の時代にそのことに気づいていた。
多くのインディアン部族のあいだでは、部族会議のメンバーになる男を女性が選んでいた。
それらの男たちの誰かが何か不都合なことをしでかせば、女たちはその男を解任することができた。
女たちはまた、子どもが七歳になるまでのしつけには完全な発言権をもっていた。
ときには女たちも戦闘に参加し、敵の馬を追い散らしたり、おとりとなって主要な戦闘の場から敵兵を他の場所へおびき寄せたりもした。
かつてあるインディアンが言った。
「われわれはずっと昔から、女たちのなかには男よりも賢いものがいることを知っていた。酋長の生みの親は女なのだから、彼女もまた酋長と同じように賢いにちがいない」(「白い征服者との闘い」より)

●ホピ族
白人の目には、わしらが馬鹿みたいに映っているかもしれない。
わしらがあんまりにも単純だからだ。
わしらは偉大な母である大地によりそって暮している。
わしらは、あなたがあなたの神を信じているように、わしらの神を信じている。
しかも、わしらの神はわしらにとっては最高だということも、信じている。
わしらの神はわしらに話しかけ、なにをなすべきかを教えてくれる。
わしらの神は、雨雲や太陽やトウモロコシなど、生活に必要なものをなんでもくれる。
わしらの神は、あなたの神のことを聞くはるか以前から、こうしたものを与えてくれていたんだ。
もし、あなたの神がそんなにも偉大ならば、わしらの神がそうやっているように、白人の口からじゃなく、直接わしらの心に話しかけてほしい。
あなたの神は冷酷で、けっして全能なんかじゃない。
なぜなら、あなたはいつも悪魔のことや、人が死後に行く地獄の話ばかりをしているからだ。
わしらの神は全能だし、まったく善良だ。
悪魔なんていないし、わしらが死後に行く霊の世界には、地獄などない。
いやいや、わしらは改宗なんかしないことにする。
わしは自分の神と自分の宗教についていくことにするよ。
あなたの宗教よりも、わしらのほうが、ずっと幸せになれそうだからな。

●ラモーナ・ベネット(プヤラップ族)の言葉
私たちインディアンは世界に伝えなければならない重要なメッセージを持っています。
私たちはこの大陸の環境を守る役目があります。
時代に逆行しているように見えるかもしれませんが、人間の生きる大地がヘドロと化してしまう前に、環境を保護し、再生しなくてはならないのです。
私はあるときネイティブ・アメリカン教会の儀式に参加し、ティピーの中で座り、皆の祈りを聞きました。
「偉大なる祖父よ、翼を持つ兄弟姉妹、大地に根を張る兄弟姉妹、大地を這う兄弟姉妹、浜辺に暮らす兄弟姉妹、海や河を泳ぐ兄弟姉妹をお救いください。白い肌の兄弟姉妹をお救いください。偉大なる祖父よ、彼らがこの地球を痛めつけるのを止め、地球を守れるようにお導きください」。
白人は、人間は死ねば天国に行けるから地球のことなどどうでもいいと考えているようです。
だからヨーロッパ大陸の環境を破壊した後アメリカ大陸に渡り、ここでまた破壊活動を繰り返しても何の罪も感じないのです。
しかしインディアンはこの世が楽園であることを知っています。
霊の世界はこの世にあるのです。
まだ生まれぬ者、すでに死んだ者、みんな私たちと日々共に存在しています。
(「風の言葉を伝えて ネイティブ・アメリカンの女たち」ジェーン・キャッツ編 舟木アデルみさ+舟木卓也訳 築地書館 より)

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