2021年01月14日
私有から共有へ
前回、世界的に私有から共有への潮流となる可能性について述べた。これまでの価値観と異なる世界が到来する。例えば、私有財産については所有権ではなく使用権に、人的な資産を集団(法人)単位、地域単位に帰属するなどが考えられる。
そうすると、人々の意識もよりよい集団へ収束する淘汰圧力が働くこととなり、帰属意識が高まる。その流れが集団としての自主自立の気運を促していくだろう。
これは、絵空事ではなく、近い将来の出来事として想像してほしい。
それらの兆しをとらえた記事を紹介したい。
まずは、男女関係の意識から、
殖産分離の犯人は男の独占欲!~ポリアモリー(共有婚)の可能性~
●ポリアモリーとは新しい共同体の可能性の追求である
(略)
HZ あたかもポリアモリーが個人の欲望を今以上に実現するための手段のように語られているわけですね。ただ、そうしたポリアモリーの理解のされ方それ自体が、ある意味でいまの日本社会の状況を表してるようにも思います。つまり、個人がバラバラに分断された社会では、ポリアモリーもまた、個人の欲望問題に還元されざるをえない。すると、個人や、せいぜい夫婦を前提とするような関係ばかりが語りの中心になってしまう。
幌村 それは本当によくない話です。正直、くだらない。個人の欲望実現や夫婦の関係改善を頑張ること、それ自体を否定するつもりはまったくないんですけど、個人がハーレムを作りたいから、夫婦がセックスレスだから、という理由でポリアモリーに取り組んでも限界があるでしょう。そうした動機に基づく限り、ポリアモリーはよくある恋愛マニュアルの域を出ない。私は、そこで、「トライブ」という視点が重要になってくると思います。
HZ 幌村さんが著書『サード・サマー・オブ・ラブ ポリアモリー』で強調されていた“トライブ意識”、あるいは“共同体感覚”のことですね。あらためて、このトライブ意識、共同体感覚とは、どういうものなのでしょう?
幌村 すごく簡単に言ってしまえば、生まれてきた意味のようなものだと思います。そんな意味などないと思っている人はそれでいいんだけど、少なくとも自身の生になんらかの意味を感じている人には、共同体感覚があるだろうと思っています。自分の生に意味があるということは、自分には何らかの「役割」がある、ということでもあり、それは、自分を超えた何かからもたらされるものですから。共同体や、種としての人類、他者と言ってもいいですけど。
そして、暮らし方そのものも、共有してこその価値を見出す潮流がうまれている。
■「住む」「働く」「交流する」を“一つ屋根の下”で
米ニューヨークで2015年に創業した「Common(コモン)」は、コリビングの先駆的存在である。現在、ニューヨーク、シカゴ、サンフランシスコ、ロサンゼルスなど、米国6都市15カ所でコリビング型施設を運営している。施設あたりの入居者は9人から130人で、利用料金は、光熱費やWi-Fi利用料、清掃サービス料などを含め、月あたり975ドル(約10万6650円)から2500ドル(約27万3500円)で設定されている。コモンは、個々のプライバシーに配慮され、快適かつ機能的に生活できる住環境と、思い切り仕事に打ち込めるワークスペース、多様なバックグラウンドを持つ入居者同士が交流できるコミュニティという3つの要素を“一つ屋根の下”で実現しているのが特徴だ。
寝室はすべて個室で、ベッドなどの家具が備えられ、コンパクトながら収納スペースも十分に確保されている。共用のキッチンには、冷蔵庫や食洗機、電子レンジ、調理器具などが揃えられ、自炊をしたり、仲間たちと一緒に料理を楽しむことができる。ワークスペースは、入居者たちが日々、集中して仕事に取り組める環境が整っている。また、コミュニティスペースでは、定期的にイベントなどが開催され、入居者同士の交流を深める機会にもなっている。
(中略)■「遊ぶ」まで包括した大型コリビング施設
コリビングは、欧州でも少しづつ広がっている。2016年5月には、英国初のコリビング型施設「The Collective(ザ・コレクティブ)」が英ロンドン東部でオープンした。コンパクトで機能的な個室と共用のキッチンスペース、ワークスペースに加え、入居者専用のフィットネスジムやバー、レストラン、イベントスペース、図書室、シアタールームなど、余暇を楽しめる設備が充実しているのも特徴だ。夏にはルーフテラスでパーティを開催するなど、500名を超える入居者がゆるやかにつながり、交流を深められるイベントが定期的に開催されている。利用料は12ヶ月契約の場合、週あたり290ポンド(約4万1430円)で設定されている。
欧州では、ザ・コレクティブのほか、コペンハーゲン、ベルリン、パリの3都市で展開する「LifeX(ライフ・エックス)」やブリュッセルの「Cohabs(コハブス)」など、コリビング型施設が増えつつある。
(中略)
社会構造としての経済について、貨幣経済にかわる価値が求められている。
貨幣経済中心の社会から、共有経済・交換経済・贈与経済との融合へ
■4つの経済圏
長沼さんはこの著書で、これからの時代はこれまでの「貨幣経済」中心の社会から、かつてあったような「共有経済」、「交換経済」、「贈与経済」などの経済圏が復活し、貨幣経済と融合される時代になると説明をしています。これまでもコミュニティーの中では貸し借りや物々交換などによる経済圏は存在していました。高度に発達したインターネットなどの検索技術や商取引を瞬時に行えるプラットフォームの出現によってこれらが加速され、いままでの資本主義経済圏と融合した新しい社会のパラダイムが生まれつつあるというのです。長沼さんは、新しいビジネスモデルの代表例としてLINEやAirbnb、Uber、メルカリ、airClosetなどを紹介しています。これらのビジネスモデルでは、オンライン上の「口コミ」や「評価」が、相手の信用価値を増幅させることで、共有経済や交換経済はもとより、贈与経済の新たな形を創り出していると指摘しています。
■コストゼロ社会
このようなビジネスモデルを考える時の重要な視点は「コストがゼロになる」ということだそうです。例えば取引コストです。インターネット上にある様々なプラットフォームを利用することで、買い手と売り手、または提供する人と欲しい人が、瞬時にかつ直接つながり、かかっていた時間や中間マージンなどの取引にかかるコストはゼロに近づきます。(中略)ゼロになるのは取引コストだけではありません。最近ではデータ送信を使って、工場を持たずに3Dプリンターなどで生産するような試みも始まっています。データや図面を送信して、消費の現場で生産したり、ユーザーが自分でものをつくったりすれば最終製品における物流コストもゼロに近づきます。さらに、発注が来てからつくれば在庫コストもゼロになります。こうしたコストゼロ社会の衝撃は今までの経済圏に大きなインパクトを与えており、それを追い風にした新しいビジネスモデルが次々と生まれていくだろうと言います。
【取引コストがゼロになる理由】
1.スマホなどのモバイルデバイス
2.使いやすいアプリケーション
3.GPS(位置情報自動検索システム)
4.IoT(モノと人が自動的に繋がるシステム)
5.SNS(ソーシャルネットワーキングシステム)
※出典:『Business Model 2025』■新たな経済圏によって人間はどうなるのか
このように、新たな経済圏では様々なコストはゼロに近づき、ものの値段が下がり、生活者にとっては支出が少なくなる社会が実現します。また、人々の働き方も変わっていくでしょう。新たな経済圏のビジネスで収入が得られるようになれば、会社勤めや従来のビジネスで収入を上げることに依存しなくても暮らしていくことが可能になります。多くの人が、自分がどう貢献しているのか分からない単純労働から解放され、より豊かに、より創造的な仕事をするようになっていくのかもしれません。今あるものや空間をシェアし必要な人とモノを瞬時にマッチングする世界は、世の中から無駄をなくしてモノの所有への執着から解放し、社会を新しいステージへと推し進めます。貨幣的利益を最優先した社会から、人との関係性を大切にした、より人間らしい社会へと進化していくのです。モノやサービスなどの価値を貨幣以外でも交換できる社会は、決して貧しいものではなく、今よりもっと豊かな社会になるだろうと長沼さんは言います。
■人間の意識レベルが進化する社会
これらのビジネスモデルを考える時に、人間の意識レベルの変化が大切であると長沼さんは言います。一言で言えば「何ためにどのように生きるか」ということです。ある意味で文明的な転換期を迎えているのが今の時代です。下の図を見てください。人間の進化を考える時、この働き方のモデル、ビジネスモデル、社会モデル、マインドモデルというそれぞれのレイヤー同士を縦方向でも矛盾なく一致させていくことが大事な視点です。儲かるビジネスモデルをどのようにつくるかだけでなく、社会の進化や意識の進化とも合致したモデルが必要なのです。さらに一番下にあるマインドモデルの進化とは、自分のためや自社のためだけではなく、社会や未来の人類についても深く思いを巡らせることです。
現代は文明的転換という意味ではまだ発展途上にあります。新しいビジネスは次々と生まれつつも、今まで社会を担ってきた旧ビジネスモデルが急激に変わるわけではありません。しかし企業は、ビジネスモデルと社会の関係を考え、幸福とは何かという根源的課題を問い続けることで進化していくはずです。
このように多面的に意識下での変化が時代を動かしていく。
- posted by KIDA-G at : 2021年01月14日 | コメント (0件)| トラックバック (0)
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