2007年08月03日
アボリジニのドリームタイム(創世記の神話世界)―1
【図解】交叉婚って何?(3)::スキンネームの謎に迫る を受けて、ドリームタイムについて少し書いてみたいと思います。
オーストラリア先住民アボリジニには、ドリームタイム(創世記の世界)を語るドリーミングストーリーという口承による昔話(神話)があります。
人々はドリーミングストーリーによって、自然の世界観を学び、生き方を学び、規範を学び、共に生きる意味を学びます。
ドリーミングストーリーには、原始人類が自然の背後に精霊を見出し、様々な自然外圧を対象化し同化を試みた様が窺えます。
今日は、原始人類アボリジニの世界観、ドリーミングストーリーの各あらすじを掻い摘んで紹介したいと思います。
(上図はアボリジニの集団分布図です。下記ドリーミングストーリーの地域をご確認頂けます。)
上図を見ていただくと、アボリジニの様々な集団が、どういった地域に分布しているかがわかると思います。オーストラリア大陸は、北部は熱帯雨林地帯、中部は砂漠地帯、南部の海岸地帯は温帯林が広がっていて、自然環境は変化に富んでいます。
今回、友人の錦糸赤直記さんのサイトに、国立民族博物館 松山利夫教授の文献よりまとめたページがあるので引用させていただきました。ドリームタイムの概略紹介です。
earthtube(←引用先)
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1.はじめに アボリジナル社会における精霊とは(類型的な把握のために)
★創世時代に秩序をもたらした存在
(緑の文字は集団名、以下同様)
●人の誕生にかかわった精霊:アーネムランドのジャンガォウルと姉妹が代表的
●大地を創造した存在:アーネムランドのムッカルがその例
●天空の構造を構築した存在:マレー河下流域のングルンデリなどこれらのすべてを創り出した創造主:各地、とくに西オーストラリア北海岸カラジェリのニジヘビがその典型
●成人儀礼をもたらした精霊:ノーザンテリトリー北部ムリンバタのナルパジン、中央砂漠ワラムンガのウォルンクァなど、ほぼすべてがニジヘビ
●婚姻の法則を定めた精霊:ケープ・ヨーク半島のココヤルニュの月の神話など
●狩りなどの生活の方法を教えた精霊:アーネムランドのミミが典型
●魂の行き先を定めた精霊:ングルンデリはその例
2.神話が語る精霊の来歴と行為
(1)人の誕生
a. アーネムランドのジャンガォウルと姉妹
来歴: はるかな海の彼方からグルート島の東のどこかにあるブラッグル島へ、そこからカヌーでアーネムランドへ
行為: ジャンガォウルと姉妹は各地で性交をくり返し、男女の赤ん坊をドァ半族の祖先として生み出し、彼らのためにドリーミングの動植物を残す。
b. メルボルン東南ブーヌロングの精霊プンジェルと息子のパリィヤン
来歴: 不明、人を創造した後の大嵐とともにどこかへ立ち去る。
行為: 精霊プンジェル・・粘土で2人の男性をかたどり、口と鼻とへそから息を吹き込む
精霊パリィヤン・・川底から2人の女性を見つける。2人の精霊は4人の人間にカンガルーやエミュの狩り方、植物の根の見つけ方を教える。
c. 南方熊楠も紹介したディエリの精霊ムーラムーラ
来歴: 不明、ディエリの土地にいた?
行為: 黒トカゲの足指でトカゲの顔に目、鼻、口、耳をつくり、尻尾を切って直立させ、人を創造。
行為: 南方は『十二支考』の「田原藤太竜宮入りの譚」のなかで紹介。
(2)大地の創造
a. アーネムランド、ジナンのムッカル
来歴: ガタラーラからカヌーでアーネムランドへ、各地に名前をつけ(=ドァ半族の土地を創造する)、ガタラーラへ。
行為: 陸地を見つける(創造する)、火おこし棒をつくり、天の河に名前を付け、ブッシュファイアをつくり、エルコ島で赤オーカーを発見し体に塗る(ボディ・ペインティングの起源)。
b. 類型2ヴィクトリア河流域ヤラリンのネッド・ケリー
来歴: 空から海に降りたち(クロフォード・ノブという場所)、ボートで旅。エンジェルを伴っていた。
行為: 旅の途中に浅瀬にぶつかり、溝を刻んで陸地を創造。クロフォード・ノブから多くのドリーミングが出現(創り出す)。
参考文献
松山利夫 1996 『精霊たちのメッセージ―現代アボリジニの神話世界―』角川書店
松山利夫 2004 「キャプテン・クックとネッド・ケリー:アボリジナルが描くふたつの白人像」『民博通信』105号、6~9頁 *******************************************************
以上、引用終わりです。
以上のようにアボリジニの様々な集団によって、様々な創世記の神話が創りだされています。
それぞれの集団の地域特性を合わせて見て行くと、様々な地域の自然環境において、原始人類が不可思議で、あるときは驚異をもたらし、あるときは恵みをもたらす大自然を、慄きながらも対象化していった世界観が見て取れます。ドリームタイムと呼ばれるアポリジニの創世記の神話世界は、大自然を対象化した世界観であると同時に、行動指針や婚姻規範にもなっています。
大自然をある意味、擬人化することにより、大自然との密接な繋がりを見出し、共に生きる術を見出そうとしている様を見ることが出来ると思います。
明日は引き続き、天空の創造を紹介しようと思います。
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- posted by yidaki at : 2007年08月03日 | コメント (2件)| トラックバック (0)
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