2021年06月24日
共同体社会の仕組みはどうなる? -3
前回、これからの共同体社会では、市場経済からクラウドファンディングに類する贈与経済へ移行していくであろうことを述べた。今回は、市場という肥大した匿名性の高い場はもうすでに持て余す状況であり、脱市場の観点で今後を探りたい。
現状は市場のニーズという最大公約数的な価値で生産計画が立てられ、拡大を不可欠のものとしている。しかし、衣、食、住をはじめとする物的生産については、人の欠乏、需要というものは無限にあるわけではなく、地球資源としてみても有限であることは自明である。すなわち、今後求められる課題は需要(人の欠乏)と供給(人の欠乏期待に応える活動)のバランスが重要となる。つまり量よりも質が問われてくる。それは必ずしも高額、高級であることは問わない。期待にどれだけこたえられているかという質である。だからこそ、量産というよりも少量多品種、特注、受注生産といった方向に進むであろう。そこでは、期待を上回る成果という意味で贈与→感謝といった連鎖による活動が繰り広げられ、その連鎖が広がることで社会が広がっていく。市場原理のように生産→消費という一回性で終わるものではない。
根底的な欠乏(期待)の次元では意識生産という側面がますます膨らむ一方であることから、それにこたえる供給=生産活動こそが主流となる。そこに活力が再生していくカギがある。
今回も
そのような可能性を示唆した記事を紹介したい。
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2021年06月24日
世界の婚姻制度~中国は派手だけど、恋愛御法度だった!?~
シリーズ第7弾は、
世界1位の人口を誇る「中国」について、迫っていきたいと思います。
中国は、56もの数の民族が暮らしている国です。
そのうち、ほぼ90%を漢民族が占めています。
民族ごとに婚姻形態は異なる部分があるのですが、
今回は、中国の婚姻について歴史的視点でみていきたいと思います。
~これまでの記事はこちら~
▶世界の婚姻制度~スウェーデン人は「結婚しない!?」~
▶世界の婚姻制度~スイス人は国際結婚が主流!?~
▶世界の婚姻制度~インド人は見合い婚が8割!~
▶世界の婚姻制度~インドの結婚式は子づくりのための儀式~
▶世界の婚姻制度~ロシアは世界1位の離婚国!?~
▶世界の婚姻制度~イスラム教は夫婦の日常生活まで定めている!?~
結婚の形は古来、国や時代ごとにさまざまです。近代以前の中国は一夫多妻制の一種である妻妾制をとっていましたが、他国の一夫多妻制とくらべても中国独特の特徴がありました。また、中国独特の「同姓不婚」や「冥婚」、「指腹婚」もありました。「いとこ婚」が許容されるか否かも、中国では時代や地域ごとに違いました。現代中国の結婚式も、そのコンセプトや様相は、日本の結婚式と大違いです。中国人が今も世界一の人口を誇る理由の一因である結婚の歴史的変遷について、わかりやすく解説します。
〇今回のポイント
・親族は血族と姻族。
・父系制、母系制、双系制。漢民族は父系制の宗族社会。
・姓と氏と名字は、本来は違うものだった。〇今の中国と日本の法的な結婚制度についての違い。
・いとこ婚・・・中国は1981年から法的に禁止。日本では合法。cf.中国婚姻法
・婚姻登記・・・中国においては「実質審査」が行われる。
・夫婦の財産・・・別産制ではなく婚後財産共有制を採用。婚姻期間中に夫婦それぞれが得た所得・財産は夫婦の共同所有とする。
・夫婦別姓・・・日本は明治から西洋風の夫婦同姓に。中国は今も夫婦別姓。
cf.林鄭月娥(りんていげつが)氏・・・氏名は鄭月娥。結婚後、夫の姓である「林」を前につけて林鄭月娥と名乗る。ただし「林月娥」と名乗ることはない。
昔の中国の女性は、蒋介石と結婚した宋美齢が「蒋宋美齢」とも呼ばれたように、夫の姓を自分の姓の前に冠する「冠姓」が普通だった。現在では、台湾も含めて、「林鄭」や「蒋宋」のような冠姓は少数派になった。〇同姓不婚
中国では、約3千年前の周代から20世紀初めまで、儒教的な「同姓不婚」の制度があった。現代では同姓不婚は法律的にも文化的にも消滅したが、台湾などではかなりあとまで残っていた。昔は、中国の林さんと日本の林さんの結婚にも抵抗感をもつ中国人もいた。
ちなみに、朝鮮半島では長い間「同姓同本不婚」制度が行われており、本貫が同じ同姓は結婚禁止、同姓でも本貫が違えば結婚が許された。同姓同本不婚は、1997年に憲法裁判所が違憲の決定をするまで、法的にも有効だった。
古来、日本には同姓不婚という発想はなかった。儒教圏の中国人や朝鮮人が、「倭人」を禽獣のように軽蔑した一因も、ここにあった。〇今の中国と日本の文化的な結婚式についての違い。
結婚式は、個人的な考え方や、地域的な違いが大きい。一般的に、中国人の結婚式は派手で、式典の進行はゆるく、礼儀作法も厳しくない。以下は概略である。
・披露宴と結婚式・・・日本人は結婚式と披露宴を分けるが、中国人は分けずに行う。司会進行もダラダラと時間にルーズ。
中国人の結婚式は、早朝、新郎が新婦の家に新婦を迎えに行き、宴会場で宴会を行い、夜、新郎の家に行くまで続く。
・式場・・・日本では結婚式の専門の式場を使うことも多い。中国ではレストランなどを借り切って行うことも多い。日本の箱物はガラパゴス化、中国の箱物はコモディティ化。
・結婚写真・・・中国人は結婚式の前の「婚紗撮影」にこだわる。専門の写真店で、コスプレのような恥ずかしい写真も真面目に撮影する。
・服装・・・新郎新婦の衣装は中国式と西洋式があり、派手。中国では白は不吉な色で、赤はめでたい色なので、中国式の結婚衣装の色彩は赤が基調。
参列者は、新郎新婦を引き立てるため、おとなしめの服を着用する傾向がある。
・案内状・・・日本の場合は返信用の葉書を同封した丁寧な封書が届く。中国は学生のコンパの出欠確認と大差がない。
・お祝儀・・・お金について中国人はおおらか。参列者は現金を赤い封筒に入れた「紅包」を持参。日本の祝儀袋と違い、金額による紅包のランク付けはない。受付係が金額をその場で確認して堂々とノートに書き込んだりすることもある。また、受付ではなく、新郎新婦がテーブルを回るときに直接、紅包を手渡すという会もある。
・引き出物・・・中国人は、テーブルのうえに飴やお菓子をくばるだけ(参列者が適当に持ち帰る)。
・終わり・・・参列者はご馳走を食べ終わったあと、それぞれ、適当な時間に三々五々と帰ってゆく。式全体が終わるまで待つ必要はない。そもそも、式がいつお開きになるのか、判然としない結婚式も多い。
・鬧洞房=中国の簡体字では“闹洞房”・・・新婚の夜に、友人や親類が新婚夫婦の部屋に押しかけて、猥雑な冗談を言ったり、ゲームを強制させたりしてからかう、という中国独特の習俗。〇親族名称における父系と母系の区別
日本人が英語を訳すとき、ブラザーやシスターの訳で悩む。兄か弟か、姉か妹か。
中国人が日本語を訳すとき、「おじいさん」「おばあさん」の訳で悩む。父方のおじいさんと、母がたのおじいさんは、中国語では全く違う単語を使うから。英語・・・最もルーズ。兄と弟、伯父と叔父など、年齢の区別さえない。
中国語・・・細かく区別。父方と母方でも分ける。
日本語・・・英語と中国語の中間くらい。祖父・・・父方の祖父は「爺爺」、母方の祖父(外祖父)は「老爺」。
中国の親族呼称や結婚式のコンセプトには、過去、数千年に及ぶ漢民族の宗族社会の名残がある。
〇昔の中国人の結婚
昔は、上流階級は恋愛結婚は御法度で、親の言いなり。新郎新婦は「洞房」で初対面。
昔の中国は妻妾制。正妻=嫡妻は常に一人で、妻妾のなかでは別格の存在とされた。複数の妻を平等に愛するタイプの一夫多妻制は、儒教的にはかえって不道徳とされた。
昔の中国は、親や家の関係を重んずるあまり、「指腹婚」など特異な早婚もあった。
また「冥婚」や「童養媳(トンヤンシー)」(大陸での呼称。台湾では「新婦仔(シンプア)」)など、現代人から見ると奇怪な結婚習俗もあった。
※指腹婚とは:出生前の子を当事者として,親同士の間で取決める婚約のこと。
※冥婚とは:生者と死者に分かれた者同士が行う結婚のこと。
※童養媳とは:男女ともに幼児のうちに将来結婚する相手が決められ、幼女を婿になる男児の家庭が買い取って養育し、成人後に買い取った家庭の息子と正式に婚姻させること。
中国の歴史的変遷を見ていくと、親族や家制度をかなり重要視していたことが分かりました。
とくに、父方と母方で親族の名称を区別することからも、厳格に親族という考え方に特異性がありそうです。(この辺りはもう少し探っていきたいところですね。)
また、生まれる前から結婚相手を決めるという早婚も、当たり前だったそう。
それくらい、婚姻による集団の存続を重んじていたことが分かります。ただし、あまりにも規範的すぎて、なんだか少し苦しいようにも感じられますね。集団を守るため、とはいえ、もう少しおおらかでもいいんじゃないかと感じました。
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