2021年10月27日
サル集団と知能進化の関係は?~個体識別から関係識別への大きく変化した~
これまでの記事で、サル以来の知能進化の基盤に”同一視”があったことを扱ってきました。前回記事ではそれをさらに掘り下げ、同一視が知能進化にどうつながったのかを扱いました。
哺乳類時代に得た、皮膚感覚による整合本能(なんだか気持ち悪い、不快だ)を発達させ、相手を同一視できない不全状態においても、充足を求め探索回路が働くようになったということがポイントでしたね。
今回の記事では、サル集団が同一視を基盤にどのように集団化をしていったのかを扱いたいと思います。
哺乳類は繁殖期にメスが発情し、そこにオスが集まることで集団化をしていきました。一方、サル集団は繁殖期に関わらず集団をつくっています。性闘争を繰り返していれば、集団はちりぢりになってしまうような気もしますが、サルはどのように集団を形成しているのでしょうか。
一点、おさえておく必要があるのは、共認が形成される過程の構造です。
人もサルも、状況を共認し、課題を共認し、役割を共認し、評価を共認することで、同類闘争の課題を乗り越えていきます。
以前の記事で、哺乳類が状況に応じて陣形や戦術を組替え、経験によって塗り重ねていることを扱いましたが、哺乳類が行っている役割分担よりも、共認機能を獲得したことにより、サルの集団形成はもう一段高度になっていると考えられます。
あらためて、サル集団に着目すると、集団内では様々な評価があるということが分かります。
No.1、No.2、No.3という序列は力の強さだけでなく、例えばボスザルとしての評価は、メスたちからの評価も関わってきます。評価軸は多様になっていき、しかも、その評価は、日々激しく変動しています。
また、哺乳類のように自分対相手の関係把握だけでなく、No.1とNo.2の関係は、No.2とNo.3の関係は、メスとの関係は、というように、自分以外のサル同士の関係も集団の評価につながっていきます。
つまり、哺乳類からサルへの進化に伴い、評価の対象が広がることで、個体識別は関係識別に進化していると言えます。
これらの関係識別が、サルの知能を著しく進化させたと考えられます。
それでは、サルからオラウータンにつながっていく過程では、知能はどうなっていったのでしょうか。オラウータンになるとサル時代よりも外圧が下がり、もう少し異なった要因で知能進化をしていったと考えられます。次回は、オランウータンの性充足と知能進化の関係を明らかにしていきたいと思います。
- posted by matu-syo at : 2021年10月27日 | コメント (0件)| トラックバック (0)