2007年05月22日
アボリジニ、氏族ごとのトーテムが氏族間の相互扶助を作り出している
オーストラリアのアボリジニの婚姻規範としてスキンネームがありましたが、氏族ごとに決まっている「トーテム」による規範も非常に興味深いものです。
経 済 生 活 の 原 初 形 態-原始社会の財貨取引
フェリックス・ショムロー(Felix SOMLO )著/島村博・三苫民雄訳
第2章オーストラリアの諸種族より引用、紹介します。
トーテムは氏族を象徴するもので、成員相互の結びつきと先祖との連続性を日常的に意識するものですが、アボリジニの殆どのトーテムはその地域でよく取れる動物・植物・芋虫など身近な食料となるものとなっています。
トーテムの持つ深い意味と全容については一旦置いて、食料とトーテムの関連について考えて見ました。
中央オーストラリアのアボリジニをなみはずれてよく知るスペンサーとギレンは、こうした仕方でその諸事実を説明している。彼らはカイティッシュ族とウンマチェラ族に関して次のように述べている。「トーテムの構成員は、トーテム動物あるいは植物の蓄えを確保する責任があるとみなされている。またさらに、あるトーテムに属していない種族の成員たちは、そのトーテム成員たちが自分たちのためにその蓄えを保っておいてくれるよう期待している。この結果、いかなる動植物も当該のトーテム氏族の男たちの許しがなければ、食べてはならないという事実が数多く認められる。アランダ族では、トーテミズムのこうした特徴がインティチウマ儀礼の締めくくりの際にのみ示されているが、カイティッシュ族やウンマチェラ族では、この特徴はより完全に発展し、アボリジニの日常生活に入りこんでいる」(3)。
氏族のトーテムをその氏族は基本的には食べず、他のトーテム氏族の食料として守り育てる役割を担っているようです。
異なるトーテムを持つ氏族同士が食料を相互に補完しあう規範は、乱獲や自集団優先意識を抑え、常に全体の調和、バランスを優先させる=みんなが上手くいくための規範のように感じます。
トーテム食料による氏族間の相互扶助やスキンネームによる婚姻規範が重層的に定められた、社会全体や先祖との一体感を大切にする規範によって、アボリジニはずっと戦闘や略奪などを発生させない社会を作ってこれたのでは、と思います。
- posted by sinkawa at : 2007年05月22日 | コメント (4件)| トラックバック (0)
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comments
今の若者の恋愛に対する意識が、僕らの恋愛に対する意識と違ってきた理由がなんとなく分かったような気がします。f(^^;)
マニマックさん、コメントありがとうございます♪
若者の恋愛に対する意識って、ほんとにどんどん変化してますよね~。駆け引きとか独占欲とか、日本人にとっては、歴史の中のほんとにごくわずかな期間にのみ出てきたものなんだなぁって思います。
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