2007年09月01日
トロブリアント諸島における母系社会の再整理
交叉婚って何?(4)で扱ったトロブリアント諸島の婚姻については、いくつかコメントをいただき、認識(及び図解)を修正する必要が生じましたので再投稿します。
そもそも“母系なのに嫁入り”することを、どのように解釈したらよいかが、疑問の出発点です。この点については『母系社会って何?』に重要な視点が投稿されています。
母系社会の基本原理として、
①氏族集団は、【母→子供】への血縁関係によってのみ継承される。
②所属する氏族集団は一つであり、(婚姻によって変わることは無く)生涯同じ出自集団に所属する。
③氏族集団の財産は【母(とその姉妹)→娘たち】へ相続され、財産の管理運営は【母の兄弟→母の息子たち】へ継承される。
という構造が挙げられます。
それらを踏まえ、改めてトロブリアント諸島の婚姻を考察してみたいと思います。
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日本の場合、家制度(→家観念)によって、嫁入りや養子縁組することは移籍(=所属集団が変わる)を意味しますが、母系社会では生涯同じ集団に所属していることがポイントです。
その上で、トロブリアント諸島の“母系なのに嫁入り”する構造を図解にすると以下のようになります。
図解は、A氏族の系統がどのように推移していくかに着目しています。
当初は通い婚の母系社会であったものが、恐らく同類圧力の上昇→男による政治的統合度の上昇により、居住規則だけが父方に転換したのではないかと推測されます。従って母系原理は踏襲され、父方居住(≒嫁入り)しても、女が元の出自集団に所属していることは変わらず、生まれた子ども(娘、息子共)も母の出自集団に所属します。そして、娘は婚姻によって父方居住に変わりますが、息子は母の出自集団に戻り財産の運営管理に当たります。
私たちからすると“母系なのに嫁入り”する構造は不思議に思えますが、父系観念のない社会においては、至極当然のことかもしれません。
読んでくれてありがとう。(by マツヒデ)
- posted by matuhide at : 2007年09月01日 | コメント (2件)| トラックバック (0)
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