ミクロネシア・ポリネシア諸島など、オセアニアに点在する島々の民族には、母系制・共同性など、人類社会の原初の姿を示唆する部分が色濃く残っており、本ブログでも多くの事例が紹介されています。
そして特筆すべきは、彼らの多くが（人種としては）我々と同じモンゴロイド人種に分類されることです。
そこで今回は『オセアニアへの人類の拡散』の続編として、人種的特長に触れながら、人類拡散の状況について追求・補足してみたいと思います。
オセアニアへの人類拡散も、その謎を解く鍵は“スンダランド”にありました。
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●スンダランドの先史
スンダランド（スマトラ、ジャワ、ボルネオ島がマレー半島とつながり、周囲の大陸棚と一体となっていた亜大陸）では、100～65万年前にジャワ原人が、20～15万年前にはソロ人と呼ばれる旧人が存在していたことが知られています。
※骨格の類似性から、ソロ人を現在のオーストラロイド人種の祖先とする説（多地域進化説）もありますが、ＤＮＡによる分子系統解析から、多地域進化説は否定されつつあります。
現代人の直接的な祖先（新人）は、8.5万年前にアフリカを出た後、7.5万年前にはスンダランドに到着し、6.5万年前にはその一部がニューギニア島及び陸続きとなっていたオーストラリア大陸に渡ったと考えられています。この、最初にスンダランドに到着した新人が、概ねオーストラロイドと呼ばれる人種の系統になります。
地域別に見ると、ニューギニア島に渡った一派が現在のパプア人に、オーストラリア大陸へ渡った一派がオーストラリア先住民（アボリジニ）に繋がっています。
一方、スンダランドに留まった新人は、（発見されている1.2万年前の化石から、ワジャク人と呼ばれていますが）彼らのうち、密林で暮らしていた者たちは体が矮小化してネグリト人になり、海岸地帯や湿地帯のようにもっと開けた土地で生活していた者たちはプロトマレー人になります。
●モンゴロイド人種のスンダランド進出
BC9000年頃、中石器文化を持ったアウストロネシア語族と呼ばれる南方モンゴロイド人種が中国大陸から南下し、スンダランドに移動したと考えられます。（ベトナム付近で発見された当時の遺跡から、ホアビン文化と呼ばれています。）
当初は、スンダランド先住のネグリト人やプロトマレー人と住み分けていたと考えられますが、この時期、スンダランドに異変が起こります。
最終氷河期が終わり、BC12000からBC4000にかけてスンダランドは水没していきます。住むところが消滅するという劇的な環境変化の中、BC5000年頃、アウストロネシア語族の一部は台湾へ移住、一部は移動しながらスンダランドやニューギニア島の先住民と混血していきます。
その結果、プロトマレー人と混血した者たちはデュテロマレー人に、パプア人と混血した者たちはが現在のメラネシア人の系統になります。（危機にあって、南方モンゴロイド人種が他の人種と混血していく状況は、縄文人が弥生人と混血していく状況に似ているとも言えます。）
一方、台湾に移住したアウストロネシア語族は、土器を作り、アウトリガー付きの外洋用大型カヌーを建造し、種々の漁法を身に付けるとことで海洋民族として適応していきます。その後BC3000年頃にはフィリピンに渡り、そこから二手に分かれて更に拡散していきます。
東インドネシア方面に移り住んだ集団は現在のインドネシア語族に繋がり、スラウェシ→モルッカ→オセアニアへと広がっていったグループはオセアニア語派（オセアニア諸族・ミクロネシア諸族・メラネシア諸族）に繋がっています。
このオセアニアに広がった集団が、使用していた土器からラピタ人と呼ばれています。
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以上、オセアニアの複雑な人種の系統を以下のサイト・書籍を基に紐解いてみました。
『インドネシア歴史探訪』
『アウストロネシア語族の歴史』
『理解する世界史』
『人類の足跡10万年史』（ｽﾃﾘｰｳﾞﾝ･ｵｯﾍﾟﾝﾊｲﾏｰ著）
それにしても、スンダランド水没という危機の中、他人種との混血や海洋民族への転換など、南方モンゴロイド人種の適応力には驚嘆です。
読んでくれてありがとう。（マツヒデ）