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2008年05月02日

霊長類学の家族の起源3 人類の進化ストーリー(1)

霊長類学の家族の起源2 霊長類の社会構造に続いて、いよいよ人類の進化ストーリーです。山際寿一著『家族の起源 父性の登場』(1994年)より。
700~500万年前 チンパンジーとの共通祖先から初期人類が分岐
寒冷・乾燥化により、類人猿は熱帯林で多くが絶滅。
初期人類は、食域の拡大、道具の使用、二足歩行→食物の運搬→安全なキャンプ地での分配によって乾燥地適応した。キャンプ地を共有する者たちの分配と分業で人類集団が成立した。
人類ははじめから特定の男女による配偶関係の独占傾向をもつ→しかし★乱交の危機から⇒社会学的父性と、インセストと外婚を一致させて家族を誕生させた。
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初期人類は、チンパンジーのメスが性皮の膨張という特徴を獲得しないうちに分岐。メスは性的受容性を増し、発情周期を曖昧にしていった。このように初期人類は、メスの発情→誘引性と積極性に基礎付けられた乱交社会ではなく、オスが常にメスに対して性的な関心を示しつつ配偶関係の独占を保証しあう社会だった。
ただ人類はチンパンジーの父系的な血縁関係にあるオス同士の連帯意識をある程度発達させた後に分岐したに違いない。そしてゴリラのもつ父性を矛盾なく融合させた。
360万年前のアウストラロピテクス・アファレンシス
既に分配行動も芽生え、家族が分配と共食の単位に
初期人類の分配の報酬は、相手の笑顔と喜びの表現、そして相手との親密なきずなの獲得だった。分配を乞う類人猿から「与える人」へと進化したのである。
性交渉もこの分配と同じような発達経過をたどった。人類の性交渉は単に性器と性器の接触や結合に止まらず、目と目を合わすことや言葉を交わすことさえ性交渉を支える重要な部分となっている。お互いに感情を高め合い、相手の快楽を先取りしようと努めることによって、性交渉は快楽の度合いを高め持続的なものになる。自己と他者を同一化させて文脈を共有しようとする、遊びと共通した精神が息づいている。人類の女は発情徴候を顕在化して男の性的関心を性器に限定させることをせずに、受容性を高めてこの人類に固有な性交渉を可能にしたのである。
性交渉が日常的なものになると、出産した女は子どもたちの母親であると同時に、配偶者の性的パートナーでなければならない。男が父親の地位を確立すれば同じことが言える。さらに家族の輪郭が定まれば、家族の内外で性質の異なる付き合いをしなければならなくなる。
これらの変化は人類の知能を高め、行動様式を可塑的なものに変化させて、多様な付き合いを通して個人が同時にいくつもの集団に所属することを可能にしたに違いない。そして、このときから人類は自己が分裂する強迫観念に襲われるようになる。
そこで、人類はそれぞれ社会的役割を担う好ましいモデルを作らねばならなくなった。父親のあるべき姿、母親らしい態度etc。集団全体の認知によってそのモデルを常識化し、慣習として定着することで親族構造と精神の安定を図ったのである。社会的なインセスト・タブーもこうした過程で慣習化され、制裁を伴う掟として世代をこえて存続することになった。
200万年前のホモ・ハビリス
ゴリラの1.5倍に達する700立方メートルの脳をもつが、狩猟技術は未熟。屍肉あさりがメインで、キャンプ地に持ち帰って分配。ハビリスは分配と共食の単位としての家族、そしてその外延としての親族組織をもっていた。
150万年前ごろのホモ・エレクトス
地球が氷河時代を迎え、大規模な寒冷・乾燥化の影響にさらされた時期。大型獣の狩猟を行う。人類ははじめてアフリカを出てユーラシアに進出した。エレクトスは様々な材料を用いてハビリスよりずっと精巧な石器を作り、850~1000立方センチメートルを超える大きな脳をもっていた。
100万年前には火を使用
家族という共食単位がいくつか集まった地域集団を作り、効率的で安全な暮らしが営めるようになる。社会的なインセストの禁止と外婚の確立によって、人類の性交渉は現代の私たちとあまり変わらないものにまで進化。
エレクトスたちは不完全ながらも言葉を繰った
言語による約束と将来への期待が夫婦のきずなを支え、親族の仲間が家族を助ける。人類の女は日常的に性交渉を行えるとともに、ずっと性交渉を行わないこともできる。この自分の意志に応じて性的許容性を制御できる能力こそ、女が男に配偶関係の独占を保証し、父親であり続けることを可能にする根拠となった。
読んでもらってありがとう。
家族の成立が、人類の進化にとって中心的な役割を果たしているというストーリーですね。次回はこの考え方の根拠を紹介して、批判を加えたいと思います。

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