2008年11月04日
外圧状況から見る日本婚姻史1
当ブログの岡さんが『日本婚姻史』を非常によくまとめてくれています。でもちょっと難しいのでもう少しポイントを絞って補足して行こうと思います。特に外圧と婚姻の関係に注視して掲載して行く予定ですので、お楽しみに。
まずは
日本の婚姻通史
日本婚姻史2 族内婚
日本婚姻史3 族外婚
から、ポイントとなる部分のお復習いです。
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●ポイント①:外圧→集団統合としての婚姻
日本原始(無土器→縄文→弥生)において、婚姻様式は外圧状況に応じて変化してきていることが分かります。外圧状況とは主に自然外圧(気候、食糧事情、外敵等)ですが、大きく捉えると外圧が緩む課程で、集団規模が拡大して行き、集団統合の必要性から婚姻様式が変化して行くという関係になります。
例えば、補足として
るいネットから『漁労・採取系民族における婚姻制の変遷』では
■集団の分化と統合①→血縁分割から兄弟婚へ
洞窟脱出=地上進出した当初は、30~50人程度の単位集団だったが、自然外圧の低下+生産力の上昇に伴い、集団規模が拡大していく。その結果、防衛と採取の効率上、声が届く範囲、身振り手振りが分かる範囲に集団の規模を分化する必要が生じる。
■集団の分化と統合②→部族統合維持の為の交叉婚へ
分化された単位集団=氏族は拡大するにつれて、その氏族固有の共認と求心力を形成し、部族全体から見れば遠心力(集団閉鎖性・自立性)を持ち始める。その為、各氏族同士=部族の統合がバラバラになって行く。
部族統合を維持する為には、氏族成員の交流・交叉(=成員の入れ替え)が必要になり、成員交叉の最も有効な手段として、氏族内婚姻(=兄弟婚)が禁止され、別の氏族との婚姻(=交叉婚)が制度化されていく。
交叉婚は、氏族間で男兄弟が他氏族の女姉妹のもとへ通う通婚(≒夜這い婚)から、息子移籍の婚姻様式へと変化する。
(通婚による滞在時間の長期化→移籍化。通婚制度を残したままの先住民族も存在する)いずれにしても、男が移動し、女は氏族内に留まる母系制婚姻となっている。
●ポイント②:“性”は集団間の結束力と高める上で重要な役割をした
上記にも
>単位集団=氏族は拡大するにつれて、その氏族固有の共認と求心力を形成し、部族全体から見れば遠心力(集団閉鎖性・自立性)を持ち始める。
とありますが、そもそも“集団”とは団結を強めれば強める程“集団”は閉鎖性や自立性を強めると言う性質を持ちます。言い換えれば“集団”は自己求心性(集団閉鎖性)を持っていると言うことです。
※これは現在でも会社、学校、部活、家庭・・・をイメージしてもらえばわかりますね。
とは言え、当時は外圧が緩くなってきた課程と言っても、現代とは比べものにならない程、まだまだ外圧状況は高かったので、みんなで(集団同士)で力を合わせて行きてゆくことがより必要であったのです。(互いに奪い合ったのでは、共倒れになってしまうんですね!)そこで、各集団の結びつきを強くさせたのが性です。
>排他的な異族の間では性の交歓だけが(ときには性器の見せ合いだけでも)和平への道であり、理解への道であり、村つくり、国つくりの道でもあった。日本婚姻史3 族外婚
集団間の和平(統合)を目的として、性を交換(交歓)し、集団間の結束を高めたんですね。“性”が非常に重要な役割を果たした。これが、族内婚→族外婚(交叉婚)に変わってきた中身です。
●ポイント③:族内婚→族外婚になっても母系制は変わらず
>通婚関係にある男女は、各自別群に所属している。だから子は当然母の群に生まれ育ち母の族員になることにより、母系氏族制がはじまる。群は氏族になり、氏族は母系によって継承されることになる。そして族員たちは互いにハラカラ(同母族)と呼び合うようになった。日本婚姻史3 族外婚
とあります。が、そもそもなんで母系になるの?と言う疑問が生まれました。これもるいネットに答えがありました。
るいネットから『漁労・採取系民族における婚姻制の変遷』
婚姻制度は全員婚であるために、血縁関係は女の方から辿るしか解らず(男は自分の子が誰か解らないが、女は確実に自分の子供が解る)結果、必然的に母系社会が形成される。
なるほど、要するに相手が特定していない場合は母系制になる と言うことのようです。だから、族内婚→族外婚になっても母系制は残ったんですね!
●ポイント④:日本の族外婚の様式は世界でも稀!
>族外婚の典型はオーストラリアに見られ、A群の全男子はB群の全女子と夫婦、B群の全男子はA群の全女子と夫婦というもの。有名なカミラロイのように四群からなるもの、八群からなるものなどいろいろあるが、基本的には二群式が原則。
>ところが日本では、二群単位とは限らず、二群でも三群でもが集落をなし、その中央に祭祀施設のあるヒロバをもち、そこをクナド(神前の公開婚所)とし、集落の全男女が相あつまって共婚行事をもつことによって、族外婚段階を経過したと考えられる。(筆者注:拡大族内婚とでもいうべき世界史的にも非常に希な形態です。「日本の交叉婚の特殊性」参照。)
上記は何でなんでしょう???
これは想像なんですが、オーストラリアに見られるような“二群式が原則”と言うのは、なんとなく“集団と集団の取引”の印象を受けます。自集団第一と言った感じ・・・。それに対し“日本の二群でも三群でもOK”と言うのは“みんなでなんとかしよう!”みんな第一と言った感じを受けますね。この辺りの共同性の違いは今後の追求課題としましょう。
- posted by mrran at : 2008年11月04日 | コメント (12件)| トラックバック (0)
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comments
素朴な疑問ですが、ホモ・エレクトスってなんで滅びたんですか?
結果的には環境に適応出来なかったと言うことですよね?なんとなく仮説を読んでいると滅ぶことが無かった人種のように思えたもので・・・。
>ホモ・エレクトスってなんで滅びたんですか?結果的には環境に適応出来なかったと言うことですよね?なんとなく仮説を読んでいると滅ぶことが無かった人種のように思えたもので・・・。
こんにちわ。
なんで滅んだのかは・・・よく分かりません。おっしゃられるように、結局外圧適応できなかったということなのでしょうが。
ただ、多くが絶滅していく中で最初にアフリカから世界中に拡散しえたのがホモエレクトスで、その意味でプラスに捉えています。
骨盤は中心に対し対称に発達しているように観える。
左右の足がほぼ同程度に機能していた、または使われていた。
既に情報を得ている遠方には大きな距離を移動できるが、そうでない場合は移動距離は比較的小さい。
魚の尾びれに対し前方に目を持つ。
前方は左右に対称を有する空間。
上下は空間として対称性を欠く。
眼は空間の対称性に応じて2つが一様に発達する。機能はその空間に生じる現象に応じて変化できる。
弱い動物が安全な巣穴から出る場合、前方に左右対称の行動可能な空間が広がっている。
集団を維持できる種が、未知の空間を安全に移動する場合は、2匹ではなく少なくとも、3匹が基本となる。2匹では元の位置に引き返せる確率は非常に低くなる。
ダン・リーバーマンさんの見解には矛盾を観ます。
高田さん、コメントありがとうございます。
>ダン・リーバーマンさんの見解には矛盾を観ます。
書き込みして頂いた文面からはよく分からなかったのですが、どこがどう矛盾しているのでしょうか?
よければ教えてください。
120万年前の気温変化の状況が問題です。
変化とは気温差です。
夜と昼の温度差がどの程度であったかということです。
差が大きければ、1日に活動する時間が大きく制限されます。
夜の体内保持温度をどう確保するかです。
火の使用は考えられますが、体内温度を一定に保つにはやはり体の構造を環境に適応させるかたちが効果的でしょう。
ですから、女性(メス)が子を育てる条件を付加するなら、女性の体の構造が体内温度を保つ構造に適応することを期待します。
ズングリした体形でよさそうです。
食と生殖が最大の目的です。そして火よりたぶん水の確保が大切な問題だったと考えます。
サルはじっとしている木の実や葉っぱを主として食していた。その習性はホモ・サピエンス群にも受け継がれている。そして重要なことは実の成るのを待つという習性です。
この場合、木の実は食として一時期的なもので他に主たる食はあったと思われます。
じっと待つ習性は子育ての条件にうまく適応
しています。・・・それでは・・・
高田さん返信ありがとうごます。
わかりました。
つまり、メスの体型がずんぐり、どっしりとしている事は、なんら不思議でないということ。
その点でダン・リーバンマン氏の
【女性は非常に低身長でどっしりした体型というように、従来の想定以上の性差を考えなくてはならないが、どうも納得しかねる】
という見解のおかしさを指摘されたとうことですね。
高田さんは120万年前の気温差に着目されていますが、その頃の気温根拠データがあれば出典等教えていただけないでしょうか。
外圧状況を捉える上で当時の気候がどうだったのか、はとても重要だと思うのですが、中々よいデータが見つからないもので。
気温の変動について推測、その決定をすることは大変難しいことだと思われます。
まず「温度」についての理解を深めるための入門書には、ジノ・セグレの「温度から見た宇宙・物質・生命」が訳本としてブルーバックス(講談社)から出ていました。それから
住明正さんの「地球温暖化の真実」という本がウェッジ選書から出ていますね。
それらに出てくる科学者の主張を辿ってみてはいかがですか。
高田さん書籍の紹介ありがとうございます。
参考にさせて頂きます。
温度についてはもうおわかりでしょう。
気温の変化については植物の葉の気孔密度から推定される情報が比較的
信頼性が高いそうです。
オレゴン大学やユトレヒト大学のデータを参考にされたらよいかと思います。
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