2010年11月05日
女の配置が、集団の成果を決める2~旧石器時代~
女の配置が、集団の成果を決める1~集団と婚姻制の概略史~に続いて、今日から各時代を見て行きます。最初は旧石器時代です。
旧石器時代は、人類が旧石器を作り始めた約250万年前から、新石器を作り始めた約1万年前までをいい、500万年前の人類誕生からみると人類史の後半部を占めます。
日本列島では現在のところ、旧石器文化は約4~3万年前頃の後期段階しか確認されていませんが、アフリカ→ユーラシア大陸からやってきた人々なので、彼ら祖先の状況を見ることにします。
どのような時代であったか概観すると下表のようです(『詳説世界史研究』より)。
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脳の大型化から始まる後半部(250万年前~)は、野生動物の狩猟や植物の採集、礫石器の使用、言語の形成、道具の製作(ex.木や樹皮・獣皮の加工、石器と竹や籐を編んだ道具)、火の使用(防衛、調理、暖房)と進化。死者の脳を食べた形跡からなんらかの儀礼が推測される。
(注:言語の形成時期については、ヒトはいつから言葉を話し始めたのか(2)では200万年前頃としている。)
12万年前~のネアンデルタール人は、小屋をつくり、集団でマンモスなどの大型獣を狩猟、石器や木材・木器の加工場、動物の解体場などもあった。小屋には炉と調理場があり、漁労から得た貝など食糧の種類も多くなった。死者の脳を食べる儀式を行い、丁寧に埋葬した。
5万年前~の新人(クロマニョン人が代表)は、さらに石器製作技術が進歩し、多種多様な石器に加え、槍(ヤリ)・銛(モリ)・釣針(ツリバリ)、針などの細かく鋭い骨角器がつくられた。網など新しい生活技術も導入。集団墓地をも営み、埋葬の仕方も綿密になり、屈葬を行い副葬品も納めている。初めて彩色壁画(洞窟画)を残し、石のヴィーナスと呼ばれる素朴な母神像をつくった。
この時代は、群(族内婚)集団での狩猟・採集によって生存課題を克服しようとするが超困難で、大部分の種は絶滅し、かろうじて現代の人類につながる1種だけが生き延びることができた、極めて過酷な外圧状況の中にあります。
親和(充足)共認⇒課題・役割・評価共認⇒精霊信仰へ先端収束することで、かろうじて生存期待に応えられたといえ、したがって、一貫して洞窟に隠れ住んでいた。
この状況を突破したのが、男女の差異化をより推し進めた役割分担にあると考えられます。
動物考古学の研究(木村有紀『初期人類の行動戦略研究概説』)より紹介します。
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グレン・アイザックのホームベース理論は、現生類人猿が単独で採食行動を行いその場で食物を消費するのに対し、初期人類は男集団でさえ満足に生存課題を克服しえず、まして女や子供は採食行動が行えないので、必然的に男集団が食物資源を運搬し分配することを、人類進化の最も重要な戦略とする。ホームベースとは男集団が食物を持ち帰り、分配あるいは消費する場所である(注:洞窟がホームベース)。
約180万年のホモ・エレクトゥスは小さな臼歯、大きな臼歯を持ち、オープンなサヴァンナ草原地帯に住んでいたため、肉・果実・根菜などの食料資源を得るには広い行動範囲が必要であった。また道具の使用や集団での協調的な採集活動が求められた。
このホモ・エレクトゥスの骨格の分析から、脳容量の大型化には腰骨や産道の形質変化を伴っておらず、現代人とほぼ同様の二次的晩成性をもった新生児が存在し、長期間の育児が必要であったと考えられる。
(注:二次的晩成性=ヒトの新生児は頭蓋が産道を通る大きさのときに分娩となるため、出産前の発達を停止して脳が未熟な状態で生まれてくる。そのため、生後1年間に急速に脳成長させ、育てるのに極めて手がかかる。)
そのため性や年齢に基づいた生業の分化などの社会的協力、ホームベースでの食物分配がなければ、大脳化は成しえなかった。
注:女の生殖負担がより大きくなり、その分闘争負担が小さくなっていくことで進化(=大脳化)した。
子を産むことは母体にとって大きな負担であり、新生児を抱えた授乳期の女性の採食活動は制限されるので、男女のペアではなくより大きな集団での育児が有利である。
現在の里帰り出産などにみられるように、母系でつながる集団のほうが育児に適しているかもしれない。
ヒトの生活の根源は、食物を獲得する生産活動と子孫を残す再生産活動よりなる。脳が大きくなったために生物学的には未熟な状態で生まれることになった新生児や幼児の育児を担う女性が、その機動力の低下を埋め合わせる手段としてホームベースで男性を含む集団の中で食物の分配を受け生きていく戦略こそがヒトの進化を可能にしたのである。これこそが男女の分業の始まりといえよう。
参考:菱田(藤村)淳子『男女の分業の起源』(都出比呂志・佐原真編『古代史の論点2』)
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如何でしたか。「男は闘争、女は生殖」という役割分担をより推し進める方向で進化したことで、人類は過酷な生存課題を克服したことが分ったと思います。
では次回は、縄文~弥生時代の男女を見ます。
お楽しみに
- posted by okatti at : 2010年11月05日 | コメント (3件)| トラックバック (0)
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