2012年08月07日
【世界の神話から見える男女の性】-9 ~神話が語る部族統合国家の形成過程と父権制への転換過程
みなさん、こんにちは。
【世界の神話から見える男女の性】シリーズでは、これまで日本神話、ギリシャ神話、エジプト神話、メソポタミア神話、インド神話、中国神話、マヤ・インカ神話と言った、世界各地の神話を扱い、各地域に伝承される神話を読み解きながら、その中に見いだせる男女関係について追求してきました。
今回は、そのまとめとなります。
まとめに入る前に、ポチッとよろしく
それぞれの神話によって様々な違いがありますが、世界の「神話」に共通する事項として、多神教であることと、神々の間に序列が設けられていることが上げられます。
この背景には部族間闘争→連合国家の形成が存在していると考えられます。
人類本来の共同体集団では、精霊信仰(アニミズム・シャーマニズム)が中心で、神話に出てくるような人格神は登場しませんが、集団規模が大きくなり、隣り合った部族間での同類闘争圧力が高まってくると、自部族を絶対化・正当化する守護神(人格神や祖霊神)信仰が登場してきます。
更なる同類闘争圧力の高まりは、単一部族を超えた部族連合の形成を進め、この段階から各部族の守護神を(観念的に)統合する為の「神話」が形成されていきます。
次の段階として部族連合間での縄張り闘争が進むと、勝利した部族連合の神々が最高神を中心とした序列上位の神として位置付けられ、負けた部族(連合)の神々は下位の神や対立する神として位置つけられる。この繰り返しによって、最終的には部族連合国家が形成され、世界各地に見られるような神話が体系化されてきたと考えられます。
例えば、ギリシャ神話における最高神ゼウスを中心としたオリンポス12神は、連合を組んだ中心部族の守護神、その他の神々(序列下位)は部族連合に後に組み込まれた部族の守護神、対立するティターン神軍は(オリンポス12神以前の神とされることから)、部族連合国家が浸入する前から、その地域の部族に信仰されていた守護神であったと考えることができます。
オリンポス12神とティターン神軍
重要なのは、このように形成されてきた部族連合国家の神話は、(部族連合を観念的に統合する上で)必ずと言ってよいほど多神教となっており、ユダヤ教やキリスト教のような「唯一絶対神」は登場してこない点にあります。この点は、次に古代宗教(ユダヤ・キリスト・イスラム・仏教)について考えていく上で重要になってきます。
次に「神話」世界の男女関係について着目すると、地域によって差はあるものの、概ねどの神話にも「地母神信仰」を中心とした母権制の名残(exギリシャ神話のヘーラーやアフロディーテ、メソポタミヤのイシュタル、インドのミナークシー、日本の天照など。これらの女神は性愛の女神であることも多い)と、兄妹婚の名残(ex日本神話のイザナミ・イザナギ、ギリシャ神話のゼウスとへーラー、古代エジプト神話の神々など)が見いだせる点が注目に値します。
ギリシャのアフロディーテ、メソポタミヤのイシュタル、インドのミナークシー
部族連合以前の各部族集団では、共同体集団として母権制と兄妹婚が継承されていることが多かったと考えられますが、部族間闘争→部族連合による略奪闘争の中で、略奪父権制に転換していく地域が続出します。
この為、「地母神信仰」や「兄妹婚」の名残や伝承を残していても、全体としては武力を有した男神が圧倒的な支配力を持つ形に再統合された神話が多くなっています。(最も典型的なのが、最高神ゼウスが己の欲望のままに略奪・強姦を繰り返すギリシャ神話)
略奪と強姦を繰り返すギリシャの最高神ゼウス
また、かつて地母神であった女神が、逆に恐怖の対象として描かれる神話も多くあります。(ギリシャ神話のヘーラー、メソポタミヤのイシュタルなど)
このような傾向はとりわけ戦争圧力が高く、略奪闘争が繰り返された、メソポタミヤ~ギリシャ地域に強く表れています。
※そう言う意味で、地母神が慈愛の最高神として描かれている日本神話は、世界的にも希な神話であり、日本の部族間闘争→国家形成過程が父権的な略奪闘争とは全く違ったことを物語っていると言えます。
以上、世界の神話の分析から、神話=部族統合国家の形成過程と父権制への転換過程を見出すことが出来ました。
今後このシリーズは、神話世界から(古代)宗教世界の分析へと以降し、「世界の宗教から見える男女の性」シリーズを展開していきたいと考えています。
第1回目となる次回は、唯一神信仰の原点となるユダヤ教について追求する予定です。
お楽しみに 8)
- posted by crz2316 at : 2012年08月07日 | コメント (0件)| トラックバック (0)
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