2021年10月28日
オランウータンの肌感覚の変容
サルの同一視・共感機能が知能進化につながったことを、前回(リンク)扱いました。オラウータンの性は親和充足を高め合う性であることを、以前(リンク)に扱いました。
今回は、サル時代に獲得した同一視の機能が、どのようにオランウータンの親和充足を高める性にまで至るのかを考えてみます。
おさらいになりますが、類人猿のなかでもオランウータンの性はヒトに類似しています。チンパンジーやゴリラの交尾時間は数秒~数分と短く、他の哺乳類同様に後背位です。オランウータンだけが25~40分と長い交尾時間であり、正常位です。メスはヒト同様に1ヵ月に1度排卵し、発情期を示す変化はありません。詳しくはこちらを参照ください。
まずは写真をごらんください。
・雨を嫌がるオラウータン。寝床に雨除けをつくることもあります。
・寝床はフカフカ、毎日ベッドをつくります。
・毛は長いのですが、実は毛がうすいのです。手はもうヒトです。
いかがでしたか?
雨を嫌がるところや、フカフカのベッドを用意するところに、快・不快がハッキリと感じられます。
オランウータンは長い母子密着期間を通じて安心感だけでなく、快・不快といった『ここちよさ』を感じる肌に変容したのだと考えられます。
性成熟したオス・メスは母親のもとを離れても、その肌感覚の充足は残り続けます。サル以降に獲得した同一視回路と肌感覚を、オランウータンは生殖行為に適応したのではないでしょうか。『ここちよさ』を感じる肌感覚と、『自分が気持ち良ければ、相手も気持ちが良い』という同一視が相乗し、繁殖戦略としての生殖行為を、親和充足を高める性の交歓へと転換させたのだと考えられます。肌の分厚いザラザラとしたオスとのスキンシップを心地よいものとしてメスが受け入れたのも、他の類人猿に比べて毛をうすくしていった理由もここにあるのではないでしょうか。
真猿以降のサルは「毛づくろい(グルーミング)」により分泌されるオキシトシンやエンドルフィンの脳内物質(モルヒネの数倍の鎮痛効果・脳内麻薬)を獲得しています。しかし、オランウータンは母子間でさえ「毛づくろい」をしていません。長い母子密着期間や、親和充足を高める性の交歓が「毛づくろい」を不要としたのではないでしょうか。さらにヒトは、歌や踊り、笑いなどでエンドルフィンが出るようになっており、親和充足や一体充足を求める方向へと進化しています。
次回はオランウータンの肌感覚の進化が、どのように知能進化につながったのかを追求します。お楽しみに。
- posted by sai-nao at : 2021年10月28日 | コメント (0件)| トラックバック (0)
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