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2022年4月28日

2022年04月28日

万物への一体化・感謝回路①~カスカ・イロコイ族の自然観~

前回の記事では、始原人類が、生物史上初の感謝回路を獲得したことを扱いました。この感謝回路は、メスが最初に獲得しましたが、オスにも転写されていくことで、万物へと対象が広がり、共認回路と観念回路が相乗的に発達していったのでしたね!それが道具の使用にどうつながっていくかは気になるところです。

今回、次回の記事では、もう少し、具体的な事例をふまえながら、その感謝回路と、道具の獲得(火の使用、石器や弓矢の発達)のつながりを考えてみたいと思います。

 

■北米インディアン カスカの自然観

カスカと呼ばれる北米インディアンは、独特の自然観をもっています。彼らは、動物に対する感謝や尊敬の念がとても豊かです。

例えば、彼らはヘラジカなどの野生の動物を食べますが、「動物のほうが食べにきてくれる」というような、野生の恵みを贈り物として捉えています。狩りの際は、怪我はさせずに一発で仕留め、食べるときには、骨まで残さずに食べます。動物は自然の一部であり、食べる気がないのに怪我をさせたり、彼らの体を無駄にすることは、自然や動物に対する罪と考えているからです。

 

■ネイティブアメリカン イロコイ族の自然観

もうひとつの事例として、イロコイ族が「おおいなる毛皮」(恐らくバイソンの事と思われる)を仕留める物語から引用します。

 

『〈おおいなる毛皮〉が一日のうちでどんな行動をするのか、一生を通じてどんな踊り(営み)を見せるのかを読み取り、それに基づいて狩人たちが力を合わせれば、一族に〈今日の満腹〉と〈明日の満腹〉という可能性とを持ち帰ることができるかもしれない。』

 

『そこで彼らは静かに穴を掘った。毛長たちを落とす大きな穴でなく、地面の小さな窪みをたくさんつくったのだ。〈おおいなる毛皮〉を脅かさぬよう、そっと集めた枯れ木や枝が積まれたのだ。・・・(中略)・・・立ち上がって、それぞれ手近な〈おおいなる毛長の民(バイソンのこと)〉を襲う。われらが一族の糧としてこの〈おおいなる毛長の民〉を招く長い旅がはじまった。』

 

一族すべての心は喜びにわいた。だが、いっぽうで悲しみもあった。大地にじっと横たわった(死んだ)大勢の〈おおいなる毛長の民〉に対する悲しみ。獣たちにはまだ理解できない何かが、明日へ続く新しい道を探し当てた二本足の民(自分達の部族)から、大地が身震いしたとき跳ねた小石の数ほど、あるいは海に向かって押し寄せた泡の数ほども浴びせかけられたことへの悲しみである。』

 

『そこで、一族のある者たちは歌を歌い始めた。どうか、この〈おおいなる毛長の民〉もまた新しい知恵を学んでほしい。あるべき明日に向かって生き延びる術を学んでほしい。彼らと一族とが、同じ土地で肩を並べて生きていけるように。ときおりお礼に築くみずみずしい草の山から、彼らの肉という大切な贈り物への感謝を受け取ってくれるように。

イロコイ族。画像はこちらより引用しました

これを読むと、彼らが動物たちを自分達と同じように捉え、動物たちにも学ぶことで生き延びてほしいと感じているのが伝わってきます。

 

これらはインディアンの事例ですが、初期の人類も、これに似たような自然観をもち、自然に感謝することで、道具を発達させていったのではないでしょうか。例えば、鋭利な石器は、食べるときに苦しめない、あるいは、残さず食べる、という感謝の想いから発達していったのかもしれません。

 

次回のブログでは、さらに他の事例についても、考察していきたいと思います。

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