2009年02月03日
中国の現代の「性」について~抑圧から開放へ急速転換~
(↑画像はレコードチャイナさんよりお借りしました)
東洋と西洋。
前回 「日本の現代の「性」について~世界で抜きん出た傾向~」 に引き続き、商品市場=性市場にひきつけた、世界の現在の「性意識」についてのシリーズ第2回。
今回は、中国の現代の「性」について見て行きたいと思います。
↓まず、いつものをヨロシク。
ありがとうございます。
前回「日本の現代の「性」について~世界で抜きん出た傾向~」で紹介されたdurex社のデータ「世界各国のセックス頻度と性生活満足度(41カ国)」より、着目点のひとつとして「中国」について見てみます。
同データの中国の位置は、グラフ中央の下の方、「セックス回数は世界平均並(96回/年)なのに、満足度は世界最低(22%)」。これはなんで???
そこで、この30年間の中国の性意識の変化についてまとめられた記事がありましたので紹介します。
レコードチャイナ:<愛と性の改革開放30年・第1~5回>より、以下に抜粋紹介します。
「男女交際は堕落」黎明間近のアングラ時代(78~82年)
78年に改革開放政策が施行され、文化大革命の影から脱却を図る中国では「談恋愛(恋愛をする)」という語彙がようやく全国的に普及し始めた。従来の「男女交際は堕落の象徴」「自由恋愛は恥」といった考え方が徐々に軟化していったのである。なおこのころ、政策の上では自由離婚が認められ、避妊や堕胎が合法化されるなど大胆な改革が見られる。
【主な出来事】
■78年/自由恋愛解禁元年
■79年/キスシーン写した洋画ポスター&裸婦壁画が公の場に初登場
■80年/新「婚姻法」で離婚自由化
■80年/性のノウハウ本登場、続々再版に
■81年/一人っ子政策本格化で避妊や堕胎が合法化
■82年/全国初の結婚紹介所が登場
■82年/性愛場面を描写した色情図書「バラの夢」が「低俗」「下品」との理由で発禁に
「不倫」「愛人」など新概念、性の改革開放始まる(83~89年)
経済発展とともに恋愛は徐々に自由化と多様化が進み、社会現象を反映して「不倫」「愛人」などの新語が続々誕生する。同じくタブーとされていた同性愛の領域でもカミングアウトを決行する者が現れ、「個人の生き方」を主張しはじめる。この時期には性教育研究会が発足したり、同性愛や女装癖を取り上げた性医学書(一部削除処分)が出版されたり、2万人を調査対象とした全国初のセックス・レポートが出現するなど、「性を科学する」試みも見られだしている。
【主な出来事】
■83年/北京の著名外科医による初の性転換手術、張克莎(ジャン・カーシャー)さんが全国初の「変性人」に
■84年/全国の美術大学10校で初のヌードモデルを募集、ニートから応募殺到
■85年/不倫・愛人・性生活・メイクラブなどの新語が出現、恋愛の多様化はじまる
■88年/国内最大級の中国美術館で初の裸婦画展「油画人体芸術大展」開催、18日で入場客22万人を記録
■89年/初の同性愛カップルが公開挙式、農民と公務員の同性夫婦が誕生(公務員は免職処分に)
※統計/中国人夫婦の60%が「性生活に不満」
89年に劉達臨(リウ・ダーリン)氏がまとめた全国初のセックス・レポートによると、調査対象となった8000組の夫婦のうち、60%以上が「性生活に不満」と回答した。これは、中国人が性観念において徐々に解放されていく一方、従来の保守的な観念から完全に脱却できないことからくるアンビバレンスの表れといえる。
咲き乱れる関連産業、自由化を謳歌(90~95年)
90年代に入り、ますます膨らむ人々の欲求を土台に、さまざまな受け皿が生まれはじめた。ホステスやホストを置くナイトクラブが香港から流入し、これらのサービスを求める富裕層と、経済的潤いを求める農村部出身者らの双方の欲求を満たすことになる。それは次第に多様な性サービス産業へと発展、愛人稼業やゲイバー、アダルトグッズやアダルトビデオの販売などへ広がっていく。
【主な出来事】
■90年/広東省を中心にホステスが出現、愛人やホスト稼業も誕生
■93年/大量のヌードシーンを含む映画「画魂 愛、いつまでも」が国内上映
■94年/アダルトショップ(性用品商店)が都市部に登場しはじめる
■95年/著名舞踏家・金星さんが性転換手術に成功、その過程が「金星小姐」と題したドキュメンタリー映画に
■95年/ゲイバーが都市部に出現しはじめる
法規制緩和の夜明け(96~03年)
時代は2000年に近づき、社会で生まれはじめていた「愛と性における自由化」が、少しずつだが法制度を動かしはじめた。これまで犯罪行為とされてきた同性愛や性転換が認められ、「未婚の母承認」や「セクハラ裁判勝訴」など、力強く自立をはじめた女性像も垣間見える。また、個人的な性の姿態を何のてらいもなく表現する若者が出現し、インターネットというメディアに乗って社会現象を巻き起こした。
【主な出来事】
■97年/中国の新刑法発布、「同性愛行為」が法的罰則の対象外に
■00年/「性別選択における個人の権利」を公安局が表明、性転換を暗に容認する
■02年/「未婚の母を承認」
婚姻年齢に達しており、かつ一生独身を決意した女性を対象に、子を持つ権利を認め、法的保護を保証(吉林省で全国に先駆け実施)
■03年/初のセクハラ裁判勝訴事例が伝えられる
原告は教師、被告はその上司で、精神的苦痛を与えたとして2000元(約2万8000円)の慰謝料が命じられる。
■03年/アダルトサイト氾濫、自身の性愛体験を綴るブロガー・木子美(ムーズメイ)が話題に
■03年/夫婦のスワッピング(パートナー交換)、ネット婚、非婚主義など、新しい婚姻の形態が出現
※統計:女性の80%「オーガズム知らない」
中国人民大学性社会学研究所が99年から00年にかけて行った調査によると、中国人夫婦のうち「性生活に満足している」との回答はわずか27.1%。10.8%が「不満」とした。67%が「性は男性主導であるべき」とし、そのせいか80%の女性が「オーガズムとは何かわからない」と回答した。
時代はなんでもアリに、さらなる刺激を求め(04~06年)
伝統観念や共産党的保守思想から長らく抑圧されてきた中国人は近年、「自分の欲望に忠実に生きること」を最大のプライオリティにしている感がある。恋愛や性の観念においては、「試婚」とも呼ばれる婚前同棲や「奉子成婚(できちゃった結婚)」などが、都市部の若者の間では日本以上に一般化している印象も受ける。加速度的なスピードで開放の進む中国社会。急激な変化によって、今後どのような影響を社会にもたらすかは、誰もわからない。
【主な出来事】
■04年/82歳と28歳の年の差婚が話題に。新郎は82歳の科学者、楊振寧(よう・しんねい)さん。中国系としては初のノーベル賞受賞者(57年に物理学賞を受賞)。
■04年/「平均経験人数」が世界一に
ある調査会社のデータによると、中国人が一生で関係を持つ性パートナーは平均19.3人。世界で最多となった。わずか2年前の統計では2.1人と、世界最低水準であった
■04年/不倫を題材としたお正月コメディ映画「手機(Cell Phone)」が大ヒット
■05年/都市の若者間で、出会って一晩以内の「スピード婚(閃婚)」が流行
■05年/黒龍江省の人大代表が性風俗産業の合法化を提案
同時に、性産業従事者への身体検査を義務付け、エイズや性感染症の拡散を防止するよう訴えた。
※統計:大学生の13%に性経験アリ
06年に浙江省疾病予防センターが省内の2万3000人あまりの大学生を対象に行った性感染症に関する調査では、大学生の13.1%に性体験があることがわかった。うち27.4%が2人以上のパートナーと関係を持ったとしている。また、50%が「結婚前の性交渉に賛成」としている。
中国の現代の性意識は、”抑圧からの開放”というキーワードで表せそうです。
特に都市部においては、この30年間に、商品市場=性市場の拡大とともに急スピードで「恋愛・性」観念の転換が進行中であることが伺われます。
そして、’05中国の性(セックス回数)は世界平均並になった。それは、’78~30年間の急激な観念・制度の変化によるものであった。よって、現代、性関心は非常に高い。しかし、その関心(期待)に対して満足度(充足)は得られていない(⇒どうする?)という状況なのではないでしょうか?(→その結果が’05DUREX社データにも現れていると見れるのでは?)
こう見てくると、中国の現代の「性」は衰弱していない(衰弱前夜?)とも見られます。では、この間の世界金融危機(世界最終バブルの崩壊)の影響で、今後いかにして中国の商品市場=性市場は縮小していくのか?(いかにして性は衰弱していくか?)気になるところです。
以上、今回は中国について見てきました。
データ「世界各国のセックス頻度と性生活満足度(41カ国)」と現代の意識潮流には少なからず何らかの相関がありそうです。
他の国についても、データとその背後にある意識潮流を調べてみるのもおもしろそうです。 🙂
- posted by echo at : 2009年02月03日 | コメント (6件)| トラックバック (0)
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ドイツ人と日本人の共通性について、興味深く拝見しました。
かつて欧州を旅したときに感じたのは、ラテン系(カトリック圏)の人は、アバウト・いい加減である場合が多く、ゲルマン系(プロテスタント系)は律儀・几帳面である場合が多いことでした。
今思うと、ラテン系はいわゆる「自分発」。対してゲルマン系は「相手発」という印象もあります。伊・独の工業製品の違いを見れば、自分発か相手発かの違いがあらわれているように感じますね。
これは余談ですが、
ラテン系の国々(仏・伊・西)は、日本人に対する差別感情があります。特に仏・伊では「ジャポネーゼが何しに来たんだ」という主旨の陰口を聞きました。
一方、独は親日派という印象でした。夜行列車で一緒になったドイツ人のオジさんは「戦争(二次大戦)のときは仲間だったからな」と言い、旧帝国海軍の軍艦の名前をたくさん知っていました。
独は、再渡航したい国の一つです。
>hayabusaさん
早速の、体験にもとづく実感コメントありがとうございます。
>ラテン系はいわゆる「自分発」。対してゲルマン系は「相手発」という印象もあります。伊・独の工業製品の違いを見れば、自分発か相手発かの違いがあらわれているように感じますね。<
なるほどです。
車や光学機器や家庭用品など・・・人々が日常的に使うモノ(工業製品)にこそ、作り手のスタンス(相手発)が顕著に現れるのでしょうね。興味深いです。
また、各国、日本人に対する感情の違いがあるのも興味深いですね。
「相手発」のドイツ人(ゲルマン人)気質について、さらに調べてみたいと思います。
このテーマ、前から気になっていました。面白いですね。
>ドイツ人の気質の根源とは?さらに深くっ、掘り下げて行きたいと思います。
今後のエントリーを楽しみにしています☆
日本人の気質を縄文時代まで遡って探求してみるように、ゲルマン民族についても、歴史を遡っていけば、答えが見えてきそうな気がします。
>arincoさん
>はるか☆さん
コメントありがとうございます。
ドイツ人の気質の根源について、さらに追求していきたいと思います。
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