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2010年02月26日

日本語の成り立ち(文字編)4~万葉仮名の発明;縄文以来の言霊を生かす~

前回の~漢字の輸入と格闘~では、漢字との格闘経緯を俯瞰しました。
今回は、5C(or6C)日本国内で漢字を書き出して間もない万葉仮名の発明?と、それゆえに生じた更なる格闘過程を紹介したいと思います。
まず万葉仮名については、Wikipediaによると>実際の使用が確かめられる資料のうち最古のものは、大阪市中央区の難波宮(なにわのみや)跡において発掘された652年以前の木簡である。「皮留久佐乃皮斯米之刀斯(はるくさのはじめのとし)」と和歌の冒頭と見られる11文字が記されている。<
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>しかしながら、さらに古い5世紀の稲荷山古墳から発見された金錯銘鉄剣には「獲加多支鹵(わかたける)大王」という21代雄略天皇に推定される名が刻まれている。これも漢字の音を借りた万葉仮名の一種とされる。漢字の音を借りて固有語を表記する方法は5世紀には確立していた事になる。<
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この「漢字の音を借りて固有語を表記する方法」の‘産みの苦しみ’については…
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以下『日本語の歴史』2006年 山口仲美著「Ⅰ漢字にめぐりあう」から抜粋引用します。

漢字を借りて日本語を書き表せば良い。けれども、そんなにうまく行くわけがありません。~(中略)~
また日本語には、多くの助詞・助動詞があり、それが実質的な意味を持つ単語に膠で接着したようにくっついて、文法的な役割を示しています。「膠着語」と呼ばれる言語の一つです。一方、中国語には、日本語の助詞・助動詞に該当するようなものがとても少ない。文法的な役割は、実質的な意味を持つ単語の順序で表します。「孤立語」と呼ばれる言語の一つです。
こんなふうに、異なる系統の言語の「文字」を借りてしまったために、日本人は日本語を書き表すのに、相当な苦労を払わねばならなくなった。表記に苦しむ日本人の姿は、『古事記』の序文に伺えます。『古事記』の序文はこう訴えます。
%E5%8F%A4%E4%BA%8B%E8%A8%98%E5%BA%8F%E6%96%87.JPG原文は左図;真福寺本『古事記』
🙄 記者注)『古事記』は、711年天武天皇の命を受けた太安万侶(おおのやすまろ)が書き記し、翌年献上された日本最古の歴史書とされている。
句読点を付して引用します。
「上古之時、言意並朴、敷文構句、於字即難、已因訓述者、詞不逮心、全以音連者、事趣更長。 是以今、或一句之中、交用音訓、或一事之内、全叵以録。 即辞理叵見、以注明、意況易解、更非注。」
「山口氏訳;昔は心が素朴だったので、文章にすることがとても難しい。漢字を使って述べてみると、どうも心に思っていることが十分にあらわされていない。そこで漢字の音だけを借りる方式で述べてみると、恐ろしく文章が長くなってしまう。困った挙句、この『古事記』は、表意文字としての漢字に、音だけを借りた漢字を交ぜて書くことにします。また、事柄によっては表意文字としての漢字を連ねて書きます。その場合、文脈がとりにくい時は、「注」をつけてわかりやすくしました。意味がとりやすい時は、「注」は加えません。」

また、漢字に、それ以前から話していた「やまとことば」の読み(いわゆる訓読み)をあてることも、かなり早くから行われていたようです。
引き続き『日本語の歴史』から引用します。

漢字が表意文字だったことが幸いしました。とにもかくにも「やまとことば」を漢字に当てはめることができるのです。たとえば「山」という漢字を受け入れる。同時に「サン」という中国音も受け入れる。次に「山」を意味する「やまとことば」を当てはめて、「やま」とも読む。こうすれば日本語を表すために漢字が使えるのです。一見すばらしい工夫に見えます。
ところが、これは漢字一字に対して複数の読みを与えてしまったことになるのです。~(中略)~韓国では日本と同じように中国から漢字を取り入れましたが、漢字とその発音を受け入れただけです。日本のように、該当する自国の言葉をその漢字の読みに振り当てることはしませんでした。これが普通の受け入れ方です。
~(中略)~
漢字の特徴である表意性をそぎ落として、音としてだけ使う以外に方法はなさそうです。ここに「万葉仮名」と呼ばれる漢字の新たな使用法が生まれました
~(中略)~
でも、漢字はもともと意味を持った文字ですから、どうしても、意味が匂い出してしまうことがあります。

以降は、同書から記者にて要約
音だけ借りるつもりが「漢字の意味が匂い出して、本意を邪魔してしまう」と感じていた古代日本人も、その後は、万葉集につづられている和歌を詠んだりして、漢字に親しみ、戯れる中で、漢字⇒万葉仮名を「自分たちの言葉」として手なづけていきます。
「戯書」と呼ばれる万葉仮名を用い、「二八十一」と書いて「にくく(憎く/81=9×9)」という言葉を表したり、「向南山」と書いて「きたやま(北山)」という言葉を表しているところから、古代人の茶目っ気振りと、楽しみながら漢字を使っているさまが想像できます。
漢字の輸入~5c頃までは、それまでの「やまとことば(≒縄文語・弥生語)」と対極にある=歯ごたえのある漢字を噛み砕くのに苦心、格闘していたが、万葉仮名を発明し(訓読みをし出し?)た5~7c頃には漢字に同化≒国語化し出し、万葉集の8c頃には漢字と戯れ、見事に使いこなし出している。
外来語である漢字を忠実に吸収し、縄文以来のやまとことばと融合させ、その言霊を守った。
このことが日本語の柔軟性(適応力・進化力)と、表現の自在性を育んだのではないでしょうか?
現在、日本語が『ハイブリッド言語』と呼ばれるようになる原点はここにあるような気がします。
次回は、引き続き~平仮名・片仮名の発明~の予定です。お楽しみに♪

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進化系統樹が、どうのような考え方に基づいて作られているのか、基本的な部分は理解できました☆
同時に、近代的な合理性とか効率性の視点が導入されているという印象を持ちました。何らかのモデルを作成しようとすれば、方法論としては止むを得ないのかもしれません。
一方で、生物の進化とは、その時々の外圧状況に応じて多面的に適応している認識しています。従って系統樹を、モデルとして参考にしつつも、絶対視することの危うさを感じました。

  • 世界のマツヒデ
  • 2010年7月3日 20:51

世界のマツヒデ さん、こんにちは。
>一言で言えば、進化系統樹(≒進化モデル)は、ひたすら近代的な合理性・効率性という観点から作成されています。
同感です。対象を分解し分析し、その因果関係のみで理論を組み立てようとする系統樹推定思考の背後には、近代の自然科学に共通の要素還元主義的な思考があるように思います。
ある仮定に基づく限定的な事実を、あたかもそれが自然現象全体を現しているかのように語られる風潮に危うさを感じます。

  • さいこう
  • 2010年7月3日 22:07

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共同体社会と人類婚姻史 | 単一起源説vs多地域起源説を切開するvol.6 DNA解析って何?-3~分子進化系統樹

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