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2011年01月14日

原始時代の社会期待(8)~アメリカ北西太平洋岸インディアンの闘争回避【ポトラッチ】

前回は、トロブリアント諸島で行われていた海洋民族の闘争回避儀礼【クラ儀礼】を紹介しました。
【クラ儀礼】とは、
①自然外圧▼による集団の共認統合をどうする?
②集団間の同類闘争をどう止揚するか?
という難課題を解決するために、「全ての共認は、評価共認に収束し統合される」という人類集団の集団原理に着目し、集団内・集団間を「評価共認」で統合する贈与による一つの統合様式でした。
今日は、アメリカ北西太平洋岸インディアンの贈与による統合様式【ポトラッチ】を紹介しようと思います。
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カラム族のポトラッチ。酋長の妻の一人がポトラッチを分配している。
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■【ポトラッチ】とは?

「ポトラッチ」というのは、アメリカ北西太平洋岸インディアンのチヌーク族の言葉で「与える」という意味ですが、地域により実態は異なります。平原インディアンも、貧しい人々を助けるために祭りを催し、特別な踊りを踊ったりしましたが、返礼を求めることはありませんでした。それに対して北西太平洋岸のインディアンは、大げさな宴会をひらいて高価な品物を配りました。その理由は、友情を確かめ合うというものから、他人に見縊られない様に、自分の富を見せつけるというものまで、様々でした。

■【ポトラッチ】の実態!

このポトラッチの主催者は、集まった有力者たちに豪華な贈り物をすることになっていました。遠くの村々から何百人という人びとが、ポトラッチに出席するために、カヌーをこいでやってきました。どのポトラッチも大変な騒ぎで、客に山ほどの食べもの、目用品、装飾品などが贈られました。ヒマラヤスギの皮から作った強力な糸で織ったブランケット、沢山の飾りをつけた篭、毛皮、服などが多数用意されました。貴重な魚油を燃やして、主催者の豊かさをひけらかそうとすることもよくあったそうです。すさまじいのは、自分の「財産」の多さを客に見せつけるために、「奴隷殺し」という特別な棒で奴隷をなぐり殺すこともあったことです。なかでも、最大の贅沢と考えられていたのは、銅板をこわしたり海にすてたりすることでした。自然銅に彫刻をほどこしたこの板は、ひとりの女が何カ月もかかってやっと1枚織りあげるブランケット4000枚以上の値打ちのあるものでした。
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贈りものは、もらう側の必要度ではなくて階級によって決められ、階級が上の者ほど、多くの贅沢品をもらっていました。しかし、もらった者は、それを自分の部族と分け合う事になっていたし、後日、招いてくれた人を招きかえして、自分がもらった以上のお返しをしなければならなかったのです。もし返礼のポトラッチで、贈り物が貧弱だったりご馳走が少なかったりすると、その主催者の地位はゆらぎ、「面子を失う」ことになります。それとは逆に、はじめに招いた側の評判は跳ね上がったのです。この「相手より1歩先に出ること」は、時には大変な規模になって、家族や部族全体までもが破減に追いこまれることもありました。しかし、大抵の場合は、杜会的な抑制が働いて、ポトラッチが手に負えないほどエスカレートするのを防いだようです。
『ポトラッチの実態』より引用。

ポトラッチ自体の目的や在り方も地域や時代によって変化してきているようで、観察者によっても解釈が様々です。
「自己の名誉と威信を高めるための贈答説」
「富の集中を防ぐための分配制度説」
「酋長が成員の尊敬を高め結束を強めるための分配制度説」
「余剰物を無くすためのもてなし説」
「複雑で高度な一種の交換経済説」
「一種の闘争回避説」
など様々な解釈があるようです。
■【ポトラッチ】の本質とは?

 ポトラッチの起源が原始にまでさかのぼるなら、神々や精霊への捧げものが原初の姿だったと思われます。何より精霊との期待・応望関係こそが最先端の課題だったはずで、獲物や生殖の恵みを祈って捧げものをし、そして同時に集団の共食の祭りを伴っていったと想定されます。捧げること(=人間は消費しない、使わないこと)が、次第に貴重品の投棄や破壊という行為につながり、共食の祭りが一種の分配制度のように機能していったと考えられます。

■【ポトラッチ】の変質!

 何より決定的なのは同類闘争圧力の高まりであり、これに対する解決策としてこの制度が利用され変質していったと思われます。当初は友好関係維持のための贈与だったものが(精霊への捧げものや同朋間の助け合いが同類他者への贈与へと応用された)、次第に自我・私益意識の増大につれて、しかし武力による殺し合いを回避する方法として、競争的な「浪費・贈答・破壊」合戦へとエスカレートしていった。いわば武力を用いないで相手を倒す戦いへと変質していった。西洋人によって観察される頃には、すでに貴族・平民・奴隷からなる階層社会を形成しているが、一気に略奪闘争→武力支配国家へと進展するのを押しとどめていたのが、この原始の風習の名残を残すポトラッチだったのではないでしょうか。
『捧げものが同類闘争圧力により変質したものがポトラッチ』より引用 。

■自然外圧▼による集団の共認統合と、集団間の同類闘争をどう止揚するか?
【クラ儀礼】と同様に【ポトラッチ】も、自然外圧の低下から活力の低下となってしまうため、自然外圧に替わる新たな圧力(=活力源)を作り出さなければ集団統合ができなくなったのでしょう。そこで、縄張り闘争圧力という外圧に直結している贈り物の製作が中心課題となり、いかにすばらしい贈り物を作るかという評価共認圧力を活力源としていったのではないでしょうか。なぜこんな時代にこんなものを?と作成動機が不明なものの多くが、活力源を作り出すために共認された課題だったのだと考えられます。
自然外圧を克服することによって人口が増加し、人類同士が縄張りを接するようになったのもこの頃です。
数千年前、他集団と初めて出遭い、高まった集団間の同類圧力をどのように止揚し統合するのか、というまったく新しい課題に対して、人類は、自然と同化するために使ってきた観念(精霊信仰)を他集団に対しても応用したのです。
お互いに注視して相手の欠乏を読み取った結果が「贈り物」であり、贈り物をすることによって縄張り闘争圧力を回避することが、当時の集団間の中心的な共通課題であり、みんな期待だったのです。
集団間に富の偏在による力の差が生じて支配・被支配の関係にならないよう、ポトラッチ(集団課題としては「贈与」)は集団間の共通課題として位置付け、みながそれに収束したのです。
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以上、狩猟採取生産時代の社会期待を見てきました。
次回は、農耕という新たな生産様式に転換した人類の社会期待を見てみたいと思います。次回もよろしくです

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