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2012年08月13日

【世界の宗教から見える男女の性】-1.ユダヤ教

 前回までの【神話の世界から見える男女の性】シリーズでは、世界の各地域に伝承される神話を読み解きながら、その中の男女関係について追求してきました。血族集団から部族連合へと集団単位が拡大していく中で父系制による集団統合が強化されていきますが、多くの神話の中には女神・地母神信仰という母性制の名残も多く見られました。
今回からは【世界の宗教から見える男女の性】と題して、現代の婚姻様式を語る際には避けて通れない『宗教』について調べていきます。
第1回目は、キリスト教、イスラム教の元となったユダヤ教から始めます。

(ユダヤ教正統派と呼ばれる人々。嘆きの壁にて 画像はコチラよりお借りしました。)

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○ユダヤ教、ユダヤ人とは?
・ユダヤ教 :古代の中近東で始まった唯一神ヤハウェを神とし、選民思想やメシア(救世主)信仰などを特色とするユダヤ人の民族宗教である。 旧約聖書が重要な聖典とされる。一般的な宗教に見られる「死後の世界」というものは存在しない。最後の審判の時にすべての魂が復活し、現世で善行(貧者の救済など)を成し遂げた者は永遠の魂を手に入れ、悪行を重ねた者は地獄に落ちると考えられている。(ウィキペディアより)
・ユダヤ人 :ユダヤ教を信仰する者(宗教集団)、あるいはユダヤ人を親に持つ者(民族集団)という2つの捉え方がある。中世以前は前者の捉え方がなされていたが、19世紀の国民国家出現以降は差別する側からもされる側からも後者の捉え方が出現した。しかし、すでに多数の白人と黒人がともにユダヤ人と認められている現在、肉体的ユダヤ民族という考え方は過去のものとなりつつある。(ウイキペディアより)
現在では、ユダヤ教を信仰する人、又はその親から生まれた人をユダヤ人と呼んで差し支えないようです。これは、他の宗教とは違う大きな特徴で、キリスト教・イスラム教・仏教ではそのような解釈はありえず、宗教と民族・人種は独立して存在します。ユダヤ教の場合は、信仰自体が民族の証・紐帯のように扱われ、統合の手段となっているようです。そういった意味では、ユダヤ教は神話と宗教の境界上にあると言えそうです。


(アルメニア系ユダヤ人のティモシェンコ元ウクライナ首相)
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(イエメン系ユダヤ人)
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○ユダヤ教の歴史と成立過程
ここで『ユダヤ教(ユダヤ国家)』が成立した歴史を簡単に紹介します。
・BC3000:アブラハム、カナンへ移住
↓  ヤコブ、父親イサクを騙して長子権を相続
↓  ヨセフを頼ってエジプトへ移住、後に奴隷身分に
・BC1280:モーゼ 出エジプト ヤハウェと十戒の契約を結び、カナンへ向かう
※ユダヤ教の成立
・BC1020:イスラエル王国成立(ソロモン王、ダビデ王の時代)
・BC922:南北分裂
・BC721:北イスラエル王国 滅亡
・BC612:南ユダ王国 滅亡
・BC597:バビロン捕囚(神殿が破壊され、礼拝の場を失う)
・BC539:ペルシアによりバビロニア開放、エルサレムへ
※この時期に多くの戒律が整備される 
・BC63:マケドニア、シリアの支配を経て、ローマの属州に
・AD135:数度の反乱を経てローマに滅ばされる。世界中へ離散
・AD1948:イスラエル建国
○ユダヤ人は本当に迫害されてきたのか。彼らの真意は?

(バビロン捕囚 ウィキペディアより)
ユダヤ教(ユダヤ人)というと『迫害の歴史(バビロン捕囚、ホロコースト)』というイメージがありますが、まがりなりにも国家を構えソロモン王、ダビデ王の時代はそれなりに繁栄します。バビロン捕囚以降も国家(自治州)は存続し、ローマ帝国によって自治を禁止されるまで宗主国は変わるものの、その都度朝貢を行い自治州(国)を持つことを許されています。皆殺しにされ、消滅してしまった民族に比べれば、それなりに恵まれていた民族といえないこともありません。
その証拠にバビロン捕囚後、ペルシアによって解放された彼らの中でエルサレムに帰還したユダヤ人は2~3割と言われています。奴隷として生活していたユダヤ人は意外と自由な生活を送っていたようです。
殊更、迫害された歴史を強調するのは何か真意がありそうです。たとえば、イスラエルという国家はドイツからの莫大な補償金によって成立しています。第2次大戦時、戦勝国で無いどころか国家ですらなかったイスラエルが600万人のユダヤ人犠牲者の代理として累積8兆円の補償と「相続者のいない資産」の九五%を配分されているのです。
迫害された歴史の強調が他人から奪う為の自己正当化であるとしたら、かなり歪んだ宗教です。他の神話であれば、自己正当化は民族の優秀性や偉大な歴史を謳うのですが、彼らの論理は「これだけ虐められてきたのだから、お前らのものは貰う(奪う)権利がある。」です。ユダヤ教の特徴である強烈な「選民思想」は、この裏返しではないでしょうか。
○彼らはなぜ嫌われる?彼らの出自と、その強烈な「選民思想」
ユダヤ人の出自は諸説ありますが、旧約聖書に書かれている歴史は自民族の古さと筋の良さを誇るために作られた故事来歴の類であり、おそらくは多様な出自を持つ人々(カナンの奴隷や下層民、遊牧出身の略奪部族)で、周辺の部族に比べて武力に劣り、商才(騙し)に活路を見出していったものと思われます。その後、国家を失った事で、苦難の民族⇒信仰を強めることで結束力を高めた⇒国家が統合機関ではなく信仰が統合機関としての役割を果たす⇒超排他的な宗教というふうに自己正当化が進んでいったものと思われます。
一般には、キリストを裏切ったのがユダヤ人であり、処刑したのもユダヤ人であることから、欧州のキリスト教圏で嫌われ、迫害されてきたといわれていますが、それだけでなく、彼らの聖典「タルムード」に書かれた強烈な選民思想がその原因といえます。
タルムードには「ゴイム」という単語が出てきますが、これの意味するところは「家畜」及び「異教徒」です。ユダヤ教では「家畜」と「異教徒」が同じ扱いなのです。その「ゴイム」に対する扱いを一部引用します。
ゴイムゴイムもしくはユダヤ人を殺した場合は責めを負わねばならぬが、ユダヤ人がゴイムを殺すも責めは負わず。
ゴイムに金を貸す時は必ず高利を以てすべし。
・他民族の有する所有物はすべてユダヤ民族に属すべきものである。ゆえになんらの遠慮なくこれをユダヤ民族の手に収むること差し支えなし。
こんな人が隣に住んでいたら、多分仲良くなることは無いでしょう。彼らにとってはユダヤ教徒だけが人なのであり、それ以外は人非人、大いに騙し、奪うべき存在なのです。したがって、彼らの婚姻・男女関係も同じユダヤ教徒の中だけということになります。

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○ユダヤ教における婚姻・男女関係 
ユダヤ教では、性を否定視する考えはありません。ユダヤ教徒=ユダヤ民族なので、ユダヤ教で性(生殖)を否定することは民族の滅亡を示すことになるからです。旧約聖書によると、婚姻形態は以下のようであったと考えられます。
・父系制(旧約聖書には登場する系図には女性の名前がほとんど記されていない。)
・一夫多妻制、妻の奴隷も婚姻生活の対象となる。
・多産が尊ばれる。(産めよ、増えよ、地に満ちよ)
・男女とも長子権を重視。(長男、長女が先に結婚する。)
・血筋の近い結婚(いとこ婚)が良縁とされる。
以上から見て、概ね遊牧民族の婚姻形態が踏襲されているようです。
当然、こうした規範が適用されるのは、ユダヤ教徒同士に限ります。異教徒との間の男女関係は騙しのオンパレードです。旧約聖書に出てくる異教徒との男女関係に関連するエピソードを抜き出してみます。
・レビ記20章:女もし獣蓄に近づき、これと交わらば、その女と獣畜を殺すべし。
・創世記16章:ソドムとゴモラという男色に溺れた町が、神の火で滅ぼされる。
生き延びた父娘は近親相姦で子孫を残し、アラブ人の始祖となる。
・創世記20章:アブラハムが妻のサラを妹と偽り、エジプト王に仕えさせる。
他人の妻に横恋慕した王に神の怒りが降りかかり、賠償金をせしめる。
・創世記34章:異教徒に強姦された妹の兄達が、謀略を駆使して村ごと皆殺し・略奪。
(改宗すれば女を与えると騙し、割礼させて苦痛で動けないところを夜襲。男を皆殺し、女と財宝を略奪。)
ここで言う「獣畜」とは「ゴイム」のことで、家畜や異教徒と交わった女は「ゴイム」と共に殺すということです。
○一夫多妻から一対婚へ
一夫多妻、多産、教徒内での婚姻を維持してきたユダヤ教ですが、11世紀に入ると宗教指導者により一夫多妻への禁止令が出され、以降(表向きは)一対婚制度となります。これは、キリスト教圏の国々で暮らすユダヤ教徒達が、キリスト教に基づいた立法制度に抗うことが出来なくなってきたからでしょう。
11世紀といえば、教皇の地位が皇帝の地位を上回ったとされる「カノッサの屈辱(1077年)」が起こり、聖地奪回(内実は略奪遠征)を果たした「第1回十字軍(1096年)」が行われた頃です。特に十字軍の遠征では「なぜ異教徒を倒すためにわざわざ遠方に赴かなければならないのか、ここに異教徒がいるではないか。」と、行きがけの駄賃とばかりに多くのユダヤ教徒が略奪を受けています。
ユダヤ教徒は土地を持つことが出来なかった為、各地域でキリスト教の禁止する金貸し業を行っていました。「異教徒からは高利を取るべし」との教えを忠実?に守り、資産家となったものも多くいました。一方、十字軍に参加していたのは相続を当てに出来ない貴族の次男・三男や、食いつめた兵士・農民達がほとんどでした。略奪の過酷さは想像に難くありません。
ユダヤ教の迫害(キリスト教との軋轢)は、実質この時期から激しくなっていったのではないかと思われます。彼らの迫害(略奪)から逃れる為にも、表向きは婚姻制度を改めざるを得なかったのでしょう。
次回は同じ一神教でも、性に関して抑圧的で、一対婚を規範とする『キリスト教』に焦点を当ててみたいと思います。

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