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2019年06月27日

有性生殖(2倍体)と死の仕組み

年をとると必ず死を向かえる。ゾウもネズミも時が経てばその命がつきる。その一方、不死と考えられる生物もいる。寿命は一部の生物が進化によって獲得したものなのだ。では、死ぬことはどんなメリットがあるというのだろうか?
実は、寿命をもつ生物には、「性別をもつ」というもう1つの共通点がある。生物史において、「性」が出現したとき、「死」も生物に備わったのだ。

◆「死」の起源は「性」の起源でもある
人類は60兆個ほどの細胞でできた多細胞生物だ。細胞一つ一つのDNAに、自死するための手順を指示する「死の遺伝子群」が存在する。細胞はこの死の遺伝子を読み、死を実行する。このような死の仕組みは、生物の進化上、いつからあるものだろうか。

◆1倍体生物には、「死」がない

大腸菌は、遺伝子のセットを1つ持つ生物である。このような生物を「一倍体生物」という。大腸菌は、分裂によって増える。まず、分裂前に遺伝子のセットをもう1つコピーしておく。そして、分裂するときに1セットずつ分配する。分裂してできた個体が持つ遺伝子セットは、元の個体と全く同じである。
大腸菌は栄養がある限り、分裂して数を増やすことができる。分裂の限界はない。死の遺伝子を持たないため、自ら死ぬことはない。言わば、不死である。
最初の生命が誕生してからおよそ20億年の間、生物は「事故死」することはあっても、「自ら死ぬ」ことはなかったのだ。
ところが生命誕生(40~35億年前)から約20億年後(20~15億年前)、自死の仕組みを持った生物が現れた。それは、1倍体とは異なり、遺伝子のセットを二つもつ「2倍体生物」である。人類も2倍体生物である。

◆多様な遺伝子セットつくりだせる
自死することはない1倍体生物と、自死する2倍体生物。どうしてそのような違いが生まれたのだろうか?

2倍体生物のほとんどは、分裂だけで個体を増やすことはない。雄と雌が協力して、個体を増やすのだ。
雄と雌それぞれは、自分のもつ2セットの遺伝子をまぜこぜにして、そこから1セット分の遺伝子を生殖細胞(精子や卵子)におさめる。両親の生殖細胞が出会うと、2セット分の遺伝子をもつ個体(子)が生まれる。こうして生まれた子の遺伝子セットは、他の誰とも違う組成を持つことになる。
その結果、2倍体生物の場合は、遺伝子セットのバリエーションが豊富になる。これは、温度や病気に対する抵抗力などが少しずつ異なる個体が生まれることを意味する。それよって、例えば環境が一変した場合に、個体が全滅してしまう可能性を低くすることができる。
2倍体生物の生殖のしくみを「有性生殖」という。2倍体生物は、「性」を持つという点で、大腸菌のような1倍体生物とは異なっている。大腸菌のような繁殖の仕組みは「無性生殖」と呼ばれる。

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◆「死」が生まれたから、「性」が成立した
2倍体生物は、性の仕組みを持つ。そして同時に死の仕組みを持つ。性と死には、関連があるのだろうか?
有性生殖では、遺伝子をまぜこぜにするので、多様な遺伝子セットを持った個体が生まれる。このことは、さまざまな環境に適応できる個体が生まれるという点ではプラスである。しかし、遺伝子の異常な組み合わせが出現してしまうというマイナスの可能性も孕んでいる。
異常な遺伝子を持つ個体は、成長できずに死んでしまうかもしれない。しかし、2倍体生物の場合は遺伝子セットを2つ持つため、片方の遺伝子セットに異常があったとしても、もう片方が正常であれば、成長できることがある。そうすると、異常のある遺伝子は、そのまま生殖細胞に含まれて、子孫に引き継がれる可能性も出てくる。
異常のある遺伝子が消えずに子孫に蓄積していってしまうと、いつか、正常な個体を作り出すことが出来なくなる可能性で出てくる。そこで登場するのが、「死」だ。有性生殖でおかしな遺伝子の組み合わせが出来てしまったときに、それを消去する仕組み(死のプログラム)を持った生物が、いつかの時点で現れた。そうした生物が、今まで生き残り、地球上で繁栄できていると考えることもできる。

【参考】:Newton別冊『ゲノム進化論』

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