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2019年6月27日

2019年06月27日

有性生殖(2倍体)に至るまでの変異促進機能の進化過程

2倍体生物は、性の仕組み(有性生殖)を持つと同時に死の仕組みを持つ。
2倍体生物では多様な遺伝子セットを持った個体が生まれるが、異常のある遺伝子が消えずに子孫に蓄積してしまうというリスクも孕む。そこで「死」という仕組みが登場した。
有性生殖(2倍体)と死の仕組み」

40億年前生命が誕生してから20億年後、20~15億年前にこの仕組みが登場した。
そこに至るまでの変異促進機能の進化過程は次の通り。
『るいネット』「変異促進機能という概念で生物史を読み解く」から転載。

【1】 生物進化の根元にあり、始原生物に近いる耐熱菌(原核生物)
《単純分裂=無性生殖》

始原生命体に近い耐熱菌の遺伝子は、この後に進化した大腸菌などの遺伝子に比べて、半分以下の小さなもの。そして、そのほとんど(92%)が現在も設計図として機能している。ここでは、生命誕生間もない時期に、ただ命をつなぐことが最大課題で、有り合わせの材料を無駄なく使用し、簡単に分裂できることで適応した。

【2】 その後進化した原核生物(大腸菌など)
《単純分裂=無性生殖が主だが、接合により遺伝子注入という変異促進機能を持つ、雌雄同体》

耐熱菌に比べ、普段は使用しない遺伝子をたくさん持っている。この遺伝子の代表は、プラスミド(やファージ)と呼ばれ、細菌の分裂増殖を担う染色体遺伝子とは別れて存在し、サイズも染色体遺伝子よりかなり小さい。これにより、外圧適応のために、変異要素としての遺伝子を他集団と共有。遺伝子交換の方法は、接合と呼ばれる、他集団個体への遺伝子注入や、環境水中に溶存態の断片DNAを利用などがある。

【3】 真核単細胞生物(ゾウリムシなど)
《単純分裂=無性生殖が主だが、接合により遺伝子交配という変異促進機能を持つ、雌雄同体》

真核細胞になり、原核細胞に比べはるかに複雑になるが、単純分裂で増殖。しかし、500回程度の分裂しかできない。細胞内には、大核=代謝専用、小核=遺伝子交換専用の2つの核をもち、他の個体と接合により、減数分裂した小核遺伝子の交配を行い、それを複数転写して大核遺伝子を総入れ替えすることで変異を実現する。そうすると、また500回分裂できるようになる。

【4】 真核単細胞生物(クラミドモナス)
《単純分裂=無性生殖が主だが、同型配偶子による遺伝子交配という変異促進機能を持つ》

もともと、減数分裂をした状態の1倍体遺伝子を持つ個体。普段は単純分裂だが、他個体と合体し2倍体の接合子をつくり遺伝子交配、発芽して減数分裂を行って複数個体を作ることもできる。基本的に全てが生殖細胞(有性生殖も無性生殖も行える)とも見ることができる。

【5】 真核単細胞生物の群体(プレオドリナ)
《単純分裂=無性生殖が主だが、異形配偶子による遺伝子交配という変異促進機能を持つ》

クラミドモナスが、100個程度集まった群体。一部の細胞が生殖細胞になるが、どの細胞ででも生殖細胞になれるという意味で、生殖細胞専門の細胞が出来たわけではない。この生殖細胞は大きく栄養を溜めた雌型配偶子と運動能力の高い雄型配偶子に別れ、それらが接合子を作り遺伝子交配を行う。この配偶子は、運動能力の差はあるが双方とも移動能力を持ち合わせている。

【6】 真核単細胞生物の群体(ボルボックス)
《単純分裂=無性生殖が主だが、精子と卵子による遺伝子交配という変異促進機能を持つ》

クラミドモナスが、1000~10000個程度集まった群体。それぞれの細胞が細い糸で連絡しあうという多細胞に近い機能をもつ。ただし、一部の細胞が生殖細胞になるが、どの細胞ででも生殖細胞になれるという意味で、生殖細胞専門の細胞が出来たわけではないので、群体に分類されている。

ここでは、栄養を溜めため運動能力の無い卵子と、運動能力は高いが極めて小さい精子が誕生し、遺伝子交配を行う。

※これ以降、多細胞化して、体細胞と生殖細胞が明確に分化する殖産分化にいたるが、この段階では体細胞は明確に分化しては無く、どれも生殖細胞とも言える。

また、変異促進機能は有性生殖の原型でもあり、多細胞化に先立ってこのような機能が獲得されたことにより、明確な雌雄分化ができるようになったとも言える。

これ以外に、ウィルスによる変異促進機能は、原核生物から真核生物まで普遍的に存在する。

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2019年06月27日

有性生殖(2倍体)と死の仕組み

年をとると必ず死を向かえる。ゾウもネズミも時が経てばその命がつきる。その一方、不死と考えられる生物もいる。寿命は一部の生物が進化によって獲得したものなのだ。では、死ぬことはどんなメリットがあるというのだろうか?
実は、寿命をもつ生物には、「性別をもつ」というもう1つの共通点がある。生物史において、「性」が出現したとき、「死」も生物に備わったのだ。

◆「死」の起源は「性」の起源でもある
人類は60兆個ほどの細胞でできた多細胞生物だ。細胞一つ一つのDNAに、自死するための手順を指示する「死の遺伝子群」が存在する。細胞はこの死の遺伝子を読み、死を実行する。このような死の仕組みは、生物の進化上、いつからあるものだろうか。

◆1倍体生物には、「死」がない

大腸菌は、遺伝子のセットを1つ持つ生物である。このような生物を「一倍体生物」という。大腸菌は、分裂によって増える。まず、分裂前に遺伝子のセットをもう1つコピーしておく。そして、分裂するときに1セットずつ分配する。分裂してできた個体が持つ遺伝子セットは、元の個体と全く同じである。
大腸菌は栄養がある限り、分裂して数を増やすことができる。分裂の限界はない。死の遺伝子を持たないため、自ら死ぬことはない。言わば、不死である。
最初の生命が誕生してからおよそ20億年の間、生物は「事故死」することはあっても、「自ら死ぬ」ことはなかったのだ。
ところが生命誕生(40~35億年前)から約20億年後(20~15億年前)、自死の仕組みを持った生物が現れた。それは、1倍体とは異なり、遺伝子のセットを二つもつ「2倍体生物」である。人類も2倍体生物である。

◆多様な遺伝子セットつくりだせる
自死することはない1倍体生物と、自死する2倍体生物。どうしてそのような違いが生まれたのだろうか?

2倍体生物のほとんどは、分裂だけで個体を増やすことはない。雄と雌が協力して、個体を増やすのだ。
雄と雌それぞれは、自分のもつ2セットの遺伝子をまぜこぜにして、そこから1セット分の遺伝子を生殖細胞(精子や卵子)におさめる。両親の生殖細胞が出会うと、2セット分の遺伝子をもつ個体(子)が生まれる。こうして生まれた子の遺伝子セットは、他の誰とも違う組成を持つことになる。
その結果、2倍体生物の場合は、遺伝子セットのバリエーションが豊富になる。これは、温度や病気に対する抵抗力などが少しずつ異なる個体が生まれることを意味する。それよって、例えば環境が一変した場合に、個体が全滅してしまう可能性を低くすることができる。
2倍体生物の生殖のしくみを「有性生殖」という。2倍体生物は、「性」を持つという点で、大腸菌のような1倍体生物とは異なっている。大腸菌のような繁殖の仕組みは「無性生殖」と呼ばれる。

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◆「死」が生まれたから、「性」が成立した
2倍体生物は、性の仕組みを持つ。そして同時に死の仕組みを持つ。性と死には、関連があるのだろうか?
有性生殖では、遺伝子をまぜこぜにするので、多様な遺伝子セットを持った個体が生まれる。このことは、さまざまな環境に適応できる個体が生まれるという点ではプラスである。しかし、遺伝子の異常な組み合わせが出現してしまうというマイナスの可能性も孕んでいる。
異常な遺伝子を持つ個体は、成長できずに死んでしまうかもしれない。しかし、2倍体生物の場合は遺伝子セットを2つ持つため、片方の遺伝子セットに異常があったとしても、もう片方が正常であれば、成長できることがある。そうすると、異常のある遺伝子は、そのまま生殖細胞に含まれて、子孫に引き継がれる可能性も出てくる。
異常のある遺伝子が消えずに子孫に蓄積していってしまうと、いつか、正常な個体を作り出すことが出来なくなる可能性で出てくる。そこで登場するのが、「死」だ。有性生殖でおかしな遺伝子の組み合わせが出来てしまったときに、それを消去する仕組み(死のプログラム)を持った生物が、いつかの時点で現れた。そうした生物が、今まで生き残り、地球上で繁栄できていると考えることもできる。

【参考】:Newton別冊『ゲノム進化論』

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