2021年10月21日
サル以来の知能進化の基盤は ”同一視”
感電した仲間を助けるサルたち
(写真はこちらからお借りしました)
哺乳類からサルになる段階で、さらに飛躍的に知能が進化します。オランウータンや集団をつくるサルを見ていると、他者を助けたり、協力しあったりします。なんでそんなことができるかというと、他者の気持ちがわかる かるからです。言葉のないサルにとっては、相手の微細な表情や行動を探索し、見極める必要があります。それが知能進化を促したと考えられます。その基盤には「同一視」ができるというサル以来の認識機能があると考えられます。それはどのようにしてできるようになったのでしょうか。
木登りモグラが樹上に適応して、手や足や尻尾で木の枝を掴めるようになると、樹上という最高の防衛力と生産力を手にします。森を埋め尽くすほど繁殖した結果、同類間の縄張り闘争が激しくなります。このときメスは個間闘争上は弱者。メスは発情や保育の期間を延長するなどして、武器である親和や性で強いオスをひきつけ、その期間だけでも(間接的に)守ってもらえます。一方、若い=弱いオスは、常に強いオスに追い払われ、辺境でおびえる しかありません。
通常、敵に対する怯えは逃げれば解消されます。また、逃げることはより外敵に食われやすくなることを意味します。しかし、樹上では逃げやすく外敵もいないので、怯え続ける状況は変わりません。「 (本能では)もうどうしたらいいのかわからない」という異常事態。
このような状態になると生物はどうなるのでしょうか。
何をしても充足できず、展望が見いだせないので、意識を後退させるしかありません。哺乳類になって封鎖した追従本能や親和本能を探索します。そのような意識で周りのオスを見ます。本来は性闘争の相手である(同じ境遇の)オスが襲ってきません。
ちょっと違う対象として感じられ、それだけで ちょっと充足します。さらに、哺乳類の親子関係の中で強化してきた真似回路(ミラーニューロン)を駆使して、相手の状況を頭の中に投影します。すると、敵だと思っていた対象が、どうやら「自分と同じ」であることに気がつきます。このとき、脳内には相手プラス視からエンドルフィン系の物質が出て、充足感で充たされたはずです。こうなると、どんどんその充足を高めていくように探索します。かくして辺境においておびえの状態に苛まれていた弱オスは、エンドルフィンで麻痺させることで不全状態を脱却することができました。(右写真はこちらからお借りしました)
豊かな縄張りから追いやられたテナガザル系のオランウータンは、大型化し、敵が少ないニッチで生きてきました。そのため、明確な闘争集団を形成することはなかったと思われます。
一方、オナガザル系は豊かな縄張りを確保し、同類があふれかえった状態に陥ります。同一視を基盤に、仲間意識を生み出し、強オスとの縄張り闘争に挑みました。結果、数で勝る弱オス集団は縄張りを確保。しかし、性闘争本能にスイッチが入れば、お互いに闘い、負けた方は縄張りを出ていきます。問題は、そこで勝った強いオスといえども、仲間を組んで襲ってくるオス達に怯えることになります。そうなると、それに対抗するために、仲間となるオスを引き入れるように動きます。なんせ 相手が何を望んでいるかわかる ようになったのですから。そのようにして、闘争集団をつくっていったサルがチンパンジーやニホンザルのような集団ザルになったのです。
サルは、この相手の気持ちをわかり、自分と同じだと感じて安心するために、表情やしぐさを読んだりするために知能を進化させました。更に、仲間と敵を峻別し、集団を組んで同類と闘うという高度な行動をするために、さらに知能を進化させていきます。それはどんなしくみなのでしょうか。
- posted by kumana at : 2021年10月21日 | コメント (0件)| トラックバック (0)
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