2014年04月19日
【家族って何?】シリーズ.7 昭和時代:民法改正と戦後体制下の「家族」
このシリーズで、「家族って何?」として次のように追求してきました。
■現在の「家族」と言う意識は、江戸時代以前は低かった。
江戸以前の庶民は村(=村落共同体)に帰属しており、「家」の位置づけは低かった。村の集団に役立つこと(役割)を活力として集団統合されていた。
【家族って何?】~プロローグ~
【家族って何?】村落共同体という集団形態~日本の農村における村落共同体とは?~
家族って何? シリーズ3.江戸時代 ~武家だけが血縁父子相続であった~
【家庭って何?】~【番外編】江戸時代には既に信用組合=金融システムがあった
【家族って何?】シリーズ4.江戸時代~市場化の波に対し、村落共同体を守る民衆~
■大衆が「家族」を強く意識することに成ったのは、明治からだった。
明治政府が、儒教文化を下敷きにした家長制の「家」制度を大衆に浸透させて、大衆は「家族」を強く意識するようになった。
【家族って何?】シリーズ5 明治時代 ~洗脳と法制化によって民衆は「家」と「国」に嵌め込まれていった~
家長と家族、各家族と国家との相似形を作ることにより、国家への役割を理解して活力を出すという集団統合を行った。
【家族ってなに?】シリーズ6大正時代~村落共同体が国家圧力、市場圧力で浸食された時代
村落共同体と、国家による家制度に加え、市場化・自由恋愛による核家族化の三つ巴の状態。
そして戦争圧力の上昇とともに、一気に国家収束に傾斜していった。
■敗戦により「国家」と「家」は払拭され、「民主主義」が導入される。
家長制度の「家」は否定されて、昭和の「平等家族」意識が発生しました。
戦後の昭和時代に、どのような「家族」意識を捨てて、あらたな「家族」意識とは、どのようなものだったのでしょうか?
順を追って見てみましょう。
日本は、共同体文化における集団統合が、近代国家の建設~富国強兵による国家防衛など、共同体による統合された集団が画期的なエネルギーを発揮することを、欧米やアジアに示した。共同体文化の下で皆が役割を共有している日本の軍隊は他国に比べて格段に強かったのです。それゆえにアメリカは、そのシステム破壊に注力します。
◇アメリカによる民法改正(集団主義の否定⇒民主主義化=個人主義)
占領軍(アメリカ)は、予想できない程のエネルギーを出す日本の「共同体システム」を恐れました。そこで、十分に研究した上で徹底的に粉砕しようとしました。そしてGHQは天皇制、国家主義を徹底的に否定しました。さらに、明治民法の家長が絶対的権限を有する「家制度」を廃止して、民法改正により「平等」な「家庭」に変えました。
◇アメリカによる民法改正(集団主義の否定⇒民主主義化≒個人主義)
結果、夫婦は平等、子供の相続も均等となり、「家長」権限は廃止された。その狙いは、国家及び家制度が、日本の共同体システムの要であると判断して、その集団活力を使わせないようにするのが狙いでした。
GHQは「国家」体制と連動している「家制度」の廃止を、事前に方針として決めていました。しかし、米国が強制すると逆に反発を受けて、元に戻ってしまうのを恐れました。そこで、日本が自主的に選択したかのように演出するために、東大の川島教授に家制度の廃止を提案させました。(そのあたりが、よくわかる川島教授のインタビューが下のサイトにあります。)
欧米人は、他民族支配で勝ち残ってきた民族で、他民族支配の手法がとても戦略的で手馴れているのに、びっくりします。
◎戦後占領期の民法・戸籍法改正に対するアメリカの戦略 http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=600&t=6&k=0&m=286604
※「戦後の教科書への墨塗り」 国家や集団統合に関して、墨を塗って徹底的に否定しました。
アメリカは、戦後教育の布教で、天皇の否定≒国家の否定≒日本軍の否定≒集団の否定という、イデオロギィーを植えつけました。その結果、「日の丸」「日本国」「軍隊」などの語彙は、「右翼」「軍国主義」等の否定の色に染まっており、この議論はターブーとなりました。議論が深まることが出来ずに、イメージで否定してしまうのが現実です。これらは、集団(≒国家)への国民の賛同(=共同体システムの復帰)は絶対否定しておく事が必要と考えたアメリカの支配の賜物なのです。
アメリカの日本への骨抜き政策で「国家」など集団を否定されながらも、日本の経済成長は世界二位にまで達して、またもや欧米を脅かし始めました。注目すべきは、そこでも活躍したのは、日本の共同体システムだったのです。
◇経済至上主義でも共同体システムを活用 ~田舎から都会への人口大移動~
擬似共同体の構築
戦後は、田舎から都会に大量に若者が流出してきました。田舎の村落共同体から都会に出来た労働者は、都市に町会という擬似共同体を作り、またもや共同体システムを機能させるようにしました。個人で孤独だった都会をみんなで協力し合いながら安心して暮らす共同体の街にしたのです。
町会で祭り、盆踊りさらには運動会などを行い、バラバラな田舎出身の個人を共同体に変えたのです。それは、村落共同体に居るように、子供は町会みんなで助け合って育てると言う、安心して働ける環境です。「豊かなよき社会を創る」共通の課題を持って、急激な経済成長を達成しました。
ここ時代に出てきたのが、「サザエさん」です。町内会は相互扶助の共同体を構築しました。男は外で仕事、女は家で育児・家事と分業が確立して、団欒できる家族がいる。皆で「豊かさ実現」に向けて走ることで充足出来た時代でした。
つまり「家族」は下記のように変貌してきたのです。
江戸時代までは、大衆は村落共同体に帰属していた。「家族」意識は低かった。
明治民法で家長権の「家制度」を制定。各自は家族、さらには国家への帰属意識持つようになった。
民法改正で「家制度」を廃止。大衆は、擬似共同体(町会、会社)に帰属意識を持った。「平等家族」は、娯楽と消費の器となった。
※「サザエさん」家族団欒。町会は皆仲良しです。 ※「三丁目の夕日」若者が町会に溶け込み活力を出しています。
株主のためではなく、社員の幸せを目的とする株式会社
さらに、資本主義が発展すると、個人経営から大企業で戦う経済競争に移行して行きます。
株式会社は、個人主義の支配道具であり、株主(=支配者)が労働者(=奴隷)を合法に搾取するシステムなのですが、日本ではこの株式会社にも、擬似共同体集団として共同体システムを活用するのです。
つまり「会社は、社会に役立ち社員が幸せになるためにある」と日本人は言い出し、元来の株式会社の趣旨とはまったく違う共同体システムに変えてしました。その活力利用により、世界二位のGNPを達成して、アメリカを脅かし始めたのです。
アメリカの支配政策としての、集団否定を日本は擬似共同体(町会、会社)などを作って見事に適応してきました。しかし、、、、
「平等」「個人主義」「民主主義」などの近代思想は、日本文化の共同体システムを少しずつ蝕み始めます。
始まりは、アメリカの家族への憧れかもしれません。テレビで見るアメリカの家庭は、素敵な庭付きの一戸建て車付きの環境、主人は会社の重役で夕方に帰ってきて夫人とあいさつキスをして、贅沢は夕食の家族団らん。専業主婦はショッピングやパーティーで個人生活をエンジョイする。子供は自分の個室をもってプライバシーの確保を夢見たのです。
※「奥様は魔女」で、広い一軒家とマイカー、子供部屋とベットに憧れました。
「平等」「個人主義」「民主主義」を唱えながらも「個人の豊かさ追及」が目標でした。
これは、みんなの為に働くことで充足するという共同体システムと全く逆の思想です。
つまり,個人が好き勝手に贅沢・消費することが幸せであるという金儲け至上主義の個人主義思想だったのです。
1970年ごろを境に、日本は貧困が消滅して豊かさを実現させました。「貧困の圧力」と「豊かさ実現」が皆の課題で活力を出してきたのですが、実現してしまうとその活力も少し減少してきます。そして、個人主義が少しずつ蔓延する中で、町会や会社の擬似共同体集団もどんどんと崩壊してしまい、町会や会社との関係も希薄なり、社会から孤立してしまった「家族主義」が蔓延することに成ってしまいます。
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評論家は、「家族」の崩壊が現代社会の問題であると指摘します。しかし、江戸時代には家族意識などあまり無くて、帰属意識は「村」であったので、子供は「村の子供」でした。
明治時代に、国家が儒教的家長制度の「家制度」を大衆に強要して、「家制度」が出来ました。これが大衆の「家族」意識の始まりです。大衆は共同体意識で「国家」と「家制度」をうけいれました。
しかし、戦後にアメリカに「家制度」を廃棄させられて、民主主義の「平等家族」が抜け殻のように残ったのです。大衆は、町会や会社を擬似共同体として帰属意識を持ち、社会との関係を維持して活力としました。
こうして見ると、日本人は集団形態を、「村」 ⇒「家制度」「国家」 ⇒「町会」「会社」 と移行させながらも、その根底の「共同体意識」は一貫として堅持し続けているように思えます。
◆集団に役立つことで活力を出すという集団統合を考えると、「平等家族」は消費・娯楽・生殖の器と、ずり下がってしまい帰属意識の元となる活力の元となる集団と成りえなくなりました。とすると、家族の再生ではなく、日本の「共同体意識の再生」が課題だということが見えてきます。
by 猪飼野
- posted by TOKIO at : 2014年04月19日 | コメント (0件)| トラックバック (0)
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