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2009年08月20日

中山太郎の「日本婚姻史」から~団体婚~☆3☆妻の相手は「氏子中」?

824.jpg暑い日が続いていますね みなさんお元気でしょうか
さて、今回は「日本婚姻史」の「団体婚」の章から、母権制度と団体婚との関係についての部分をご紹介します。
ところで、「母権制」って何でしょう?はてなキーワードさんによると、

女性が社会重要性を担っている社会、またはその社会制度。
古代史における父権・母権が現在とは異色の形であり、女性に対する信仰性が強かったことなどを学者バハオーフェンが著書「母権論」のなかで示し、父権制の対立概念として近代思想に大きな影響を与えた。

とのことです。
その「母権制」と「団体婚」にどんな関係があるのでしょうか
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まずはこの節の初めの部分をご紹介します

第二節 母権制度と団体婚の関係
原始時代の人類にあっても、その生殖に男子の参与することが重大なる要素であったことは、自己の体験より推しさらに動物の所作を見聞して、つとに悉知していたに相違ないが、果たしてどの程度まで男子の参与が有力であったかについては、ついに解釈することのできぬ問題であった。
わが国の太古でも、生殖は男女一夜の結合では目的を達すべきものでないと信じていた。天孫瓊々杵尊(ニニギノミコト)が木花開耶媛(コノハナサクヤヒメ)を愛し四子を設けた折に『天神の子というとも、あによく一夜の間に人をしてはらませんや、まことにわが子にあらじ』と仰せられたとある。この仰せ言の意味を反推すると、妊娠は数夜または十数夜の結合を必要としたものとの思想が潜んでいたことが釈然する。さらに大泊瀬若建命(オオハツセワカタケルノミコト)が采女童女君を、一夜与(あたわ)して娠み女子を生んだのを疑い養わなかったのは、この思想と同じものであった。
かくのごとく生殖に男子の参与することが要件であることは了解されていても、その程度については全く不可解のものとせられていた。しかもこの問題はひとりわが国ばかりでなく、文化が発達したといわれた十八世紀の欧州においてすらも、生殖に対して男女いずれが大なる交渉をもつかに関して激烈なる論争が繰り返され、ようやく十九世紀にいたり顕微鏡の発明とともに科学が進歩するにつれて、初めて男性の細胞と女性の細胞との肉体接合によって、新生命を生ずることが明白になったのであるから、古代の民族や全く科学を有しなかった原始人が、不可解とし神秘としたのも道理であると言えるのである。

 妊娠とは精子と卵子が受精して…と、私たちは当たり前のように思っていますが、昔の人はそんなこと知らないのですから、子どもを授かるのはとても不思議で神秘的なこと だからこそ、1回や2回の性交渉ではだめで、何回も努力(?)してやっと授かるものという感覚だったんですね。
では、つづきです。

 加えるに、共同婚にせよ団体婚にせよ、肉体の結合が特定人の間に限られなかった婚制にあっては、生まれた子供が自分の子であると主張する権利は母親より外には無かったはずである。わが国の古い民譚に生児の胞衣(えな:人間の胎盤のこと)を洗ってみたら、『氏子中』と書いてあったというのがあるが、それほど不倫を極めた母親でも、その子は自分が分娩したのを証拠として自分の子に相違ないと主張する権利はあったのである。
嬰児が十ヶ月の間を母の胎内に送るという事実は、共同婚制においても団体婚制においても厳然たる事実であって、これを否定することはできなかったのである。ここに母系制度が成立し、ひいて母権制度が発生するのである。
もちろん、母系制があったからとて、それが直ちに母権制の存在を裏付けるものではないが、しかし両者は大体において前後して行なわれるかあるいは並び行なわれるものであるから、全然、両者を切り離して考えることも出来ぬのである。私はこの立場からわが国の母権制度を功覇し、あわせて母権制度が団体婚から発生していることを精査しようと思うのである。

 「氏子中(うじこじゅう)」は落語にもある話で、落語のあらすじ 千字寄席さんに詳しく紹介されていますので、興味のある方はぜひ読んでみてください 😀
すごく簡単にまとめると、昔、生まれた赤子の胞衣を洗うと、父親の名前(or紋)が書いてあって妻の相手が分かると言われていた。長い間家を留守にしていた男が、その間に妊娠した妻が生んだ子の胞衣を洗うと、「氏子中(=同じ氏神を祭る人々)」と書いてあった。つまり、村の男たちみんなが父親=相手だったという笑い話です。
これが深刻な話ではなくて笑い話として残るくらい、日本の性はおおらかで、たくさんの相手とコトに及ぶのも珍しくはなかったということですね。
また、性の相手が一対一ではない共同婚や団体婚においては、はっきり分かるのは母親だけであり、必然的に母系制度→母権制度が成立するというのが、中山太郎氏の考えです。なるほどですね
次回は、母権制の名残と思われる事例についてご紹介します。今回も最後まで読んでくださって、ありがとうございます

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comments

>みんなが家族であるので、子どもたちは、生みの親こそいるものの、特定の個人の子どもではなく、皆の子どもとして育てられている。
現代の市場経済(≒私権)社会を、忌避して新たな試みが15年続いていることがすばらしい。
そして、子供も居ると言うことは、次世代にも引継がれていこうとされていると言う事。
このグループでは、集団外字継続していく為の、基本課題である男女関係(=性)はどうなっているのだろうか?
そこが知りたいところです。

  • いちもんなし
  • 2009年11月28日 14:20

快楽に落ちて行かない方法があるはずですが、
それは何でしょうか?

  • 男性 20代
  • 2009年11月28日 16:06

いちもんなしさん、コメントありがとうございます。
>このグループでは、集団外字継続していく為の、基本課題である男女関係(=性)はどうなっているのだろうか?<
気になるところですね。
「私有」意識を捨て、子供はだれの子であってもみんなで育てるというところは分かったのですが、婚姻関係についてはブログの他のページを読むと、「メンバーの結婚式は共同体挙げてのお祝いをしている」ようなので、普通の一夫一婦制のようですね。

  • saah
  • 2009年11月28日 22:40

男性20代さん、こんばんは。
おっしゃっているのは「性の快楽」のことでしょうか。
詳しくは分かりませんが、このコミュニティー創設の当初の目的意識の一つが、「市場社会の大元にある『私権(=あらゆる私益)追求』の弊害」を何とかしたいということだと理解しています。
ですから、もともと私益の一つである「快楽追求」は参加者の目的から外れているのでしょうね。

  • saah
  • 2009年11月28日 22:48

saahさん、こんばんは。
私の言葉が少なく申し訳ない。
「性の快楽」もありますが、
自給自足出来る葉っぱの依存もあわせて「快楽」
としてしまいました。
自分では現代思想を、
言葉でうまく説明できませんが、
現代思想にどっぷりつかっていて、
失敗してる私には、
そういう事が羨ましくもあり、
そして、私がそこに居る事はできるのか?
出来ないんじゃないか?と思ってしまう。

  • 男性 20代
  • 2009年11月29日 04:44

男性20代さん、
なるほど、こちらこそ理解が足りませんでした。
確かにただのユートピアであれば堕落してしまう可能性もあるわけで、そうならない為には、参加者全員に何かの「目的意識」が必要なように思います。
所謂、活力源ですね。
私もまだ理解不充分ですが、この辺は是非調べてみたいですね。

  • saah
  • 2009年11月30日 13:28

“お互いにもっと改善”と言うのはそれ自体が充足課題なんでしょうね。
また、それが段々と集団の規範になって行く・・・。
そう考えると、やっぱり本来、規範と言うのは集団にとっての充足規範なのだと思います。

  • R
  • 2009年12月1日 19:08

異端視を受けながらも、市場社会において一定の評価も得ていることは、これからの社会にとって必要な何かを持っているということだと思います。(潜在的には感じるが、みんなの意識として顕在化していないという点で2歩先を歩んでいる?)
しかし、残念なことにこれからの社会を「どうする?」という実現態が見えてこない。逆に今の社会に背を向けて自分たちだけの理想郷を作っているような感は拭えません。
だからこそ、現実を直視し、みんなの意識を顕在化させる『観念化(理論)』とそれらを広めていく『ネットワーク化』が不可欠なのだと思います。

  • オールグリーン
  • 2009年12月1日 20:38

「木の花ファミリー」、HPを覗いてみましたがとても興味深い家族というか共同体だと思いました。
こうした農業共同体、各地でどんどん増えているのでしょうか?
気になるところです!

  • yama33
  • 2009年12月1日 21:03

なるほど、Rさんのおっしゃる様に、”お互いにもっと改善”することで、よりよくなることの充足を感じるから、それがまた新たな活力を生み出しているのではないか、ということですね。

  • saah
  • 2009年12月1日 22:19

オールグリーンさん、『ネットワーク化』することで、外の世界とも繫がりを保ち、閉鎖的にならないようにすることが必要ですね。しかもそうする事で互いに刺激し合い、中身が洗練されてより進化して行くのだと思います。
それにしても>みんなの意識として顕在化していないという点で2歩先を歩んでいる?<という提起は大胆ですね(笑)。

  • saah
  • 2009年12月1日 22:22

yama33さん。最近の動きとして増えているのかどうかは私もわかりませんが、「エコビレッジ」ということでは興味関心も高まりつつあるようで、同様の試みはあるようです。
しかし、大多数は数年で沈滞化してゆくのが多いそうで、発展してゆくには「エコ」とか「カタチ」だけの共同体ではない、求心力、統合力が必要なのでしょうね。

  • saah
  • 2009年12月1日 22:25

検索“修行”しておりました道中、貴HP(道場)へ立ち寄った者にて候。
突然のお知らせ(書き込み)にて御免!
現代の女性に求められる「女性の品格」の源は武士の妻女の品格、気品です。
武道通信http://www.budotusin.net へ御立ち寄りくだり、歴女に知って欲しい『武士の女の品格』をお読みいただければ幸いです。

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