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2021年11月11日

原猿の集団構造の中間まとめ

哺乳類の中間まとめに続き、サル世界の中間まとめです。

ネズミキツネザル(原猿)

現モグラが樹上に逃避し、新たな生存域を獲得したのが原猿以降のサル世界。初期の原猿は現モグラが樹上に逃避したところから始まります。足の指が手の指と同じように木の枝を掴めるように変化したことで、樹上生活が可能になりました。この頃はまだ現モグラ同様に昆虫が主食故で果実や種子も食べますがさほど大型化していません。樹上は土中よりも昆虫不足なので、少子化戦略を取らざるを得ませんでした。(産児数は現モグラ3~7匹に対し、初期原猿は1匹)

 

しかし、原猿のなかでもスローロリスやエリマレムール、インドリなど、後期原猿類は大型化していきます。これらの原猿は、腸内細菌の獲得等により食性が葉っぱや木の実、樹皮を食べられるようになったことが大型化した理由と考えられます。そして、大型化することで天敵である猛禽類(exフクロウ)の脅威も無くなり、樹上には外敵がほぼいなくなります。かつ、葉っぱや木の実を食べられるようになったことで食料が豊富になり、その結果大いに繁殖して、樹上はサル同士がひしめき合う世界になります。

それによって、サルの主要な外圧は、外敵ではなく同じ猿同士が縄張りを争いあう同類圧力が恒常的な圧力となります。

 

これまでの生物界には無い同類圧力に晒された原猿たちがどのようになっていったのでしょうか。

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■■恒常的な飢えと怯えを抱えた弱オス(若オス)⇒同一視の獲得へ

後期原猿以降に見られる特徴の一つとして、オス同士が集団をつくっている点が挙げられます。そしてその集団は、哺乳類の連携行動よりさらに高度化し、状況や課題、役割、評価を共認しています。この共認を成立させるには、相手の気持ちが解るという「同一視機能」が土台にあります。

 

現モグラは、縄張りから追い出された弱オスは外敵に食われて死にます。死ぬことで秩序が保たれているという言い方もできます。しかし、原猿の弱オスは縄張りから追い出されても外敵がいないので死なない。しかも、縄張りを持つボスオス(以降縄張りオスといいます)の目を盗んでエサをかすめ取ることもでき、かろうじて食つなぐことはできます。

しかし、常に誰かの縄張りを侵犯しており、その度に縄張りオスに追い立てられる状況で、恒常的な怯えと空腹という不全感に直面します。そして、この不全感に対応した機能は本能に備わっていません。

 

そこで本能を超えて獲得したのが、弱オス同士の同一視かと思われます。哺乳類の親子関係の中で強化してきた真似回路(ミラーニューロン)を駆使して、相手の状況を頭の中に投影します。すると、敵だと思っていた対象が、どうやら「自分と同じ」であることに気がつきます。このとき、脳内には相手プラス視からエンドルフィン系の物質が出て、充足感で充たされたはずです。こうなると、どんどんその充足を高めていくように探索し、エンドルフィンで麻痺させることで不全状態を脱却することができたと思われます。

 

そして、充足(≒麻薬)を伴う同一視機能を獲得した結果、その充足を求めて、相手探索を進化させ、哺乳類に獲得した知能(同類識別機能)を土台に、さらに同類の期待把握、集団内の関係識別へと知能を進化させていったと考えます。

 

【過去のブログ記事】

サル以来の知能進化の基盤は ”同一視”

仲間との共感機能が知能進化に繋がった仕組みとは

サル集団と知能進化の関係は?~個体識別から関係識別への大きく変化した~

 

 

■■原猿になりオスメス集団を形成するにいたった理由

一方、縄張りを持つオスはどうでしょうか。縄張りから追い出しても、外敵に食われず死なない弱オスの絶えざる縄張り侵犯によって、縄張りオスは身も心も休まる暇がない過剰緊張状態におかれたと想像されます。そして、この不全感に対応した機能は本能になく、縄張りオスも本能を超える必要が生じました。

 

また、この同類闘争で最も不利なのは、体格に劣るメス。現モグラ以来、繁殖期以外はオスもメスも単体行動で縄張りを確保するのが基本です。しかし同類闘争では弱オスにさえエサをかすめ取られる状況で、メスが最も窮地にたったと思われます。そこでメスは縄張りオスに守ってもらうため生殖期間(妊娠+授乳)を延長。季節選ばず発情可能で、真猿になるとお尻を赤くし挑発機能を強化したメス猿も登場します。

その結果、後期原猿は恒常的にボスオスに守ってもらうオスメス集団が形成されました。

 

集団を形成した哺乳類は母子集団が基本でしたが、後期原猿以降、初めてオスメス集団が登場したことが特筆すべき点です。このオスメス集団を形成するに至った理由に、メスの縄張り防衛の期待(必要性)と、縄張りオスの不全解消の期待(必要性)があり、互いに期待し応望する関係が、オスメスの関係を繋ぐ紐帯になったと考えられます。

 

【過去のブログ記事】

原猿時代の同類闘争における不全感は、弱メスの方が大きかった?

同類闘争下で庇護してもらうために、生殖機能を進化させた原猿メスたち

 

 

以上、哺乳類のまとめでは、集団の原点は親和関係を紐帯とした母子集団(かつ母系集団)であることを見ました。そして母子のスキンシップによる皮膚感覚の発達が知能の発達を促しています。

 

それが原猿になると、オスメスの集団が登場。オスの不全解消期待とメスの縄張り防衛期待。夫々中身の違う期待を互いが応えるカタチで集団化していったと思われます。

 

また、オス同士も同一視による充足(不全解消)を起点に課題や役割を共認するオス集団も登場しました。

 

母子関係。オスメス関係。オス同士の関係。この関係の基本的骨格は、哺乳類からサル社会までで出来上がったと見えます。

 

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