2007年04月19日
<双系>は母系部族と父系部族の姻戚関係構築から始まった
<双系>社会と呼ばれるインドネシアやマレーシアのあるスンダランドには、地理的に考えて日本よりも早い時期から掠奪闘争が玉突き伝播していたと思われる。
掠奪が伝播するまでは漁労、採集を営む母系の原住部族だけだったが、6千年前イラン高原に端を発する、略奪闘争が西方向にも玉突き伝播してくる過程の中で、敗れた(父系転換)部族が海岸線沿いに逃げ延びて来て、大陸の果て=マレー半島あたりに到着した。
スンダランド一帯では14000年前から海面上昇が始まっており、6000年前以降は既に現在の地形に近い群島状態にあったと考えられる。
↑薄い所が水没した元陸地
初めの頃は、父系部族に追い出されたマレー半島原住の母系部族が押し出されて、島々に渡って行くのだが、追い出して定住した父系部族もまた、後からやってきたより強い父系部族に追い出されるようにして島々に移住することになる。
ちなみに、スンダランドにはおびただしい種類の民族(部族数)が現存する。
インドネシアだけで1万7千もの島があり、その内3000ほどの島に、約400民族(=言語)が住んでいると言われている。(世界民族博覧会で数えただけでも200を超える民族が紹介されている。2005年人口推計は約2.4億人。)これにマレーシア諸島やパプアニューギニア、フィリピン、ソロモン諸島まで加えると1,000近い民族数になる。
このことは、一度当りの闘争→敗走する部族規模は小さいが、断続的に異部族間衝突が繰り返されたことを物語っているのではなかろうか?
かくして、母系部族も父系部族もそれぞれ部族ごとに群島に住み分けて、母系部族と父系部族が斑状に分布することになる。
さらに島の人口密度が上がり同類間緊張圧力が高まってくると、異部族間の部族交流=主に圧力緩和のための婚姻も生じる。 父系集団と母系集団が姻戚関係を結ぶ=共存するには、財産継承面でも『どちらも有り』の<双系>とする必要があった。
こうして母系+父系混在の敗走部族連合(≒国家)の妥協の産物が<双系>社会。
逆に言えば、
スンダランドが双系社会なのは、敗走=弱部族の吹き溜まりだったからと言うこともできる。
双系の実態を端的に示すレポートがさいこうさんも紹介されていたボルネオ島のカリス人に紹介されているので参考に抜粋しておく。
ここで、私自身が、カリスの「(擬制)親族制度」に巻き込まれてゆく過程で、徐々に明らかになって行ったカリスの「親族組織」を簡単に整理しておきたい。カリスの親族組織は双系的(bilateral)であると言うことができる。カリス社会のメンバーは、父親(ama)と母親(andu)を通じて辿ることができる親族(sinsama)に、理論的には、同等の社会関係の比重を置いている。彼/彼女は、兄姉を kaka’、弟妹を ari’と呼ぶ。兄弟姉妹の性別を強調する場合は、それぞれの後に、男性の場合は男(burane)、女性の場合は女(buine)を付ける。また、父親と母親の兄弟姉妹を、全て、おじ、おば(kino’)と呼ぶ。第一いとこ(sapu diri)、第二いとこ(sapu ini’)を、長幼男女の別によって、兄か姉、弟か妹と呼ぶ。また、父母のどちらの祖父母も、お爺さん(apu nane)、お婆さん(apu dadu)である。一般に、祖父母より上の世代は全て apu toa’(字義どおりには、「昔の祖父母」)である。カリス社会では、兄弟姉妹(kaka’ ari’)のうち一人が、結婚して配偶者を連れてきて、両親とともに生活するようになるのが普通である。他の兄弟姉妹は、それぞれの配偶者の家に入るか、新しく家を建てて独立して生計をたてることになる。彼らが、義理の兄弟姉妹(epar)を呼ぶ時には、通常、長幼によって、兄弟姉妹の語彙を使う。義理の父母(matoa)を呼びかける際には、通常、父、母の語を使う。
- posted by nandeyanen at : 2007年04月19日 | コメント (3件)| トラックバック (0)
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