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2017年08月24日

性と死の起源② 私たちはなぜ死ぬのか?

進化上で「死」が登場したのは、遺伝子を交換して子をつくる「2倍体生物(性)」が登場したときだと考えられている。交換することで異常な遺伝子の組み合わせが生じる可能性があり、それを取り除くためためだ。
では、年をとるとすべての人が必ず死んでしまうことは、生物学的にはどのような意味があるのだろうか?

◆DNAの変異と修復は常に起きている
生命活動に必要な情報は、DNAという分子の鎖に書き込まれている。DNAとは、A・T・G・Cの4種類の文字(塩基:炭素や窒素が環状につながった化合物)で書かれた「遺伝子情報の暗号文」だ。鎖は2本で1組である。向かい合うDNA鎖は、AとC、GとCがそれぞれ結合するように配列している。

細胞分裂を行なう際には、このDNAを正確に複製する必要がある。しかし、どうしても複製ミスがおきてしまうことがある。また、普通に生活しているだけでも、紫外線をあびることなどでDNAには傷がついてしまう。傷とは、本来とはことなる塩基に変化したり、塩基が失われたりすることだ。1個の細胞に含まれるDNA(総塩基対30億)には、1日あたり数千個もの傷がつくと考えられている。

細胞の中にも、傷をもたらす原因がある。ミトコンドリアである。ミトコンドリアは、酸素を使って糖類を燃やし、使命活動に必要なエネルギー(ATP分子)をつくりだしている。ところがこの反応では「活性酸素」ができてしまう。活性酸素は、反応しやすい物質であり、DNAに傷をつけるのだ。

これらの傷を放置しておくと生命活動に支障が出る。そのためDNAは、修復酵素を用いて、たえず傷を修復している。これを裏づけるように、修復酵素がはたらかない人は老化が早まる疾患になることが知られている。※但し、老化が起きる仕組みはにはまだ定説がなく、さまざまな原因が研究されている段階だ。遺伝子に傷が残ることは、老化の大きな原因だと考えられている。

DNA修復

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◆不完全なDNA修復が少しずつ蓄積される
傷がついた遺伝子はたえず修復されている。但し、修復を行なったとしても、完全無欠に修復できるわけではなく、傷は少しずつ蓄積していく。こうした傷は、体細胞だけではなく生殖細胞にもみられる。傷の多い生殖細胞を使って子孫をつくると、傷がさらに溜まっていく。すると、その生物種が最終的には絶滅してしまう可能性が高くなる。これをいちばん安全に回避する方法は、ある程度時間が経ったところで、古い個体が必ず死ねるようなプログラムが必要になる。

ヒトのDNAは、傷を修復する能力が非常に高いため、数十年生きているくらいでは傷が多くなりすぎることはない。だが200年も300年も生き続けたとしたら問題がおきかねない。それを避けるためにに死がプログラムされている考えられる。では、自死する仕組みをもたない大腸菌のような生物には、傷が蓄積していってしまわないのだろうか?

1倍体だろうが2倍体であろうが、傷がつくことには変わりはない。但し、大腸菌のような1倍体生物は、1セットしかない遺伝子に傷が入ると、すぐに生命活動や、生死そのものに影響が出てしまう。つまり、1倍体生物は、細胞に死の仕組みを持たなくても、傷が入れば固体の死に直結しやすく、集団全体では傷を溜めこみにくい。一方、2倍体生物の場合は、遺伝子セットが二つあるため、傷がすぐに固体の変化として現れにくい。つまり、傷を溜めこみやすいのだ。

◆修復ミスは「進化」にもつながる
生物はエネルギーを費やして、遺伝子の傷を修復している。しかし、傷がまったく出来ないというのも、実は生物にとってはそれほど望ましいことではない。多くの場合、遺伝子に傷がつくと、異常増殖するガン細胞に変化したり、本来と異なるタンパク質がつくられてりするという不都合が生じる。

ところが、いくつかの変化が重なり、むしろ生存に有利な変化が起きることもある。このような都合のよい変化が度重なることで、生物は進化してきたと考えられる。修復ミスがまったくなければ進化はおきないのだ。

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