2008年02月04日
事実婚に対する現代の社会保障
(「東京弁護士会」HPより拝借)
昨今【事実婚】って言葉をよく聞くようになりましたね。
でもよく調べてみるとこの言葉は最近のものではなく、遅くとも1980年代からすでに存在しており、しかもそのことについての研究までされて本も出ているんですね
・太田 武男『事実婚の比較的研究』(有斐閣、1986)
・二宮 周平『事実婚の現代的課題』(日本評論社、1990)
なんて本があるようです。
最近では事実婚をしている人がその体験をブログに書いてたりして、それを読んでみると当人達は法に則って”籍”をいれる【法律婚】と比べ日常生活では何の不自由もなくすごしているといっています。
となると、法律上の”夫婦”っていったいなに?
【法律婚】と【事実婚】の違いに何の意味があるの?
【事実婚】に絡む社会保障ってあるの?
ということで、少しばかり法律上の扱い、特に社会保障制度について調べてみました。
続きに行く前に、いつもの応援もよろしくお願いします。
法的な権利・義務
社会保障制度(医療、健康保険、年金など)は事実婚(内縁)でも受給が認められますが、税制上の優遇などは認められません。
■婚姻に準ずる形(準婚)生じる義務と権利
1)夫婦の同居・協力扶助義務(民752条)
2)貞操義務、婚姻費用の分担義務(民760条)
3)日常家事債務の連帯責任(民761条)
4)夫婦財産制に関する規定(民762条)
5)内縁不当破棄による損害賠償、内縁解消による財産分与(民768条)
6)遺族補償および遺族補償年金の受給権(労基法79条・労基則42条)
7)優生手術の同意(優生保護法3条)
8)年金・健保・労災など各種受給権(厚生年金保険法3条の2、健康保険法1条の2、労働者災害補償保険法16条の2)※扶養に入れますので、国民年金3号も可能です。
8)-b 離婚時の厚生年金分割
(事実婚に係る厚生年金の分割請求の要件について)社会保険庁 (2006年)
9)賃貸借の継承(借地借家法36条)
10)公営住宅の入居(公営住宅法23条の1)
その他
事実婚夫婦の体外受精が日本産科婦人科学会で容認される(2006/4/22)
■事実婚で認められない権利
1)夫婦同一姓名
2)子の嫡出性の推定 ※つまり、全員非嫡出子になります。
3)婚姻による成年
4)夫婦間の契約取消権
5)配偶者の相続権 ※ただし遺言によって贈与することはできます
6)税金の配偶者控除
(「普通に事実婚」より)
法律上も事実上の婚姻関係(=民法の752条のあるように同居し協力関係にある者同士)であれば、夫婦に求める義務と権利を認めているようです。賃貸借契約時なども夫婦であることが入居条件である場合も法律上の”夫婦”でなくとも認められるようで、そういった意味では社会保障の面ではそれほど大きな障害はないようですね。
それどころか、携帯の「家族割引」も、基本的にどの携帯会社でも【法律婚】であるか否かは問わず【事実婚】であれば認められるようです。
また周囲の人達が当人達を「白い目」で見るなどの問題が無く、相続などに関しても当人同士が拘りを待たないのであれば、日常生活には特に問題はないようです。
ただし、周囲がみる【法律婚】と【事実婚】のメリット、デメリットというと、大抵は「家同士の関係に縛られない」とか「離婚しやすい」などといった「自由」を売り物にし、デメリットの多くは【世間体】や【白い目】といった扱いのことをあげているものを多く見かけます。(「事実婚ってなに」)
((写真は「結婚の全て」より)
はじめに
私たちは、大学院在学中に結婚しました。
結婚を決めたのは、大学4年のとき。2人に海外留学の機会があり、 婚約後海外で同居をはじめました。
1年後に帰国。結婚式を挙げ、学生とアルバイトをしながら生活。
修士号取得後は2人とも就職して共働きをし、現在は妻が大学院に戻っています。
私たちは、婚姻届を出していません。また、結婚後もそれぞれの姓を名乗りつづけています。
どちらかを筆頭とした戸籍で、名前もどちらかに (おおよその場合は夫の姓に)そろえなければならない、という現在の民法の規定は、私たちが考えている結婚の形とは違うものでした。
どちらかの家に吸収されるのではなく、どちらの家族も大事にしながら新しいファミリーを作ろうと思っていた私たちは、それぞれの姓を残しながら、2つのファミリーネームを持つことにしました。夫婦別姓で婚姻届を出すことができないため、通称使用か事実婚かを考えた末、今の状態を選択しました。
結婚式では、集まってくれた両親、家族、親戚、友人、恩師など多くの人たちの前で、「夫婦となる」ことを誓いました。日常の生活でも、夫婦として親戚・友人たちとお付き合いしています。
婚姻届を出さない夫婦ってあり?姓が違う夫婦って…?
そんな質問をされることがあります。
実際はぜんぜん特殊なことなんてありません。 ふつうに生活をしています。
自分たちが「事実婚なんだ」と強く意識することは殆どありません。
ただし、法律婚と違って、自分で考えて、やらなくては ならないさまざまなことがあるのは確かです。
私たちの経験を書くことで、いくらかお役に立てればと思います。
(「同上」より)
日常の暮らしに社会保障上も、その他の法律上の問題もそれほど無い。
そしてなにより法律上の【婚姻届】というものが制定される以前は、当たり前ですが全て【事実婚】だった。
今、既存の法制度の持つ意味が薄れてきているこの時代、【法律婚】にこだわる理由はますます薄れていきますね。逆に【法律婚】にこだわる理由、メリットってなんなのでしょう?
- posted by saah at : 2008年02月04日 | コメント (4件)| トラックバック (0)
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comments
霊長類学者の人類進化ストーリーの紹介ありがとうございます。
岡さんの「霊長類学の家族の起源」シリーズを読んで興味がわいたので、山際寿一著「暴力はどこからきたか」を読んでみました。
霊長類学のデータが多く勉強になりましたが、一方、人類進化については「○○に違いない」「○○だとすれば」「○○つだったに違いない」などの記述も多く見られ、それらの繋がりがスッキリしない部分がちらほらと・・・
当たり前ですが、霊長類学者の人類進化ストーリーとは、霊長類学のこれまでの蓄積に基づく仮説です。
霊長類学がこれまで蓄積してきた現象事実は何か?仮説部分は何か?その根拠としている現象事実は何か?それらの現象事実と仮説は論理整合しているのか?などを検証することが必要ですね。
あらゆる事実に照らし合わせて論理整合する論理=構造事実を追求していきましょう。続きに期待しています。
コメントありがとうございます。
仰るとおり、霊長類学を基にしての仮説なので、あらゆる事実と突合せしたいと思います。モレがあれば意見をお寄せください。
『暴力』についても紹介してもらえればありがたいです。
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