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2008年03月11日

「不倫の歴史」 ~貴族社会から庶民に広がる~

本の紹介である。
「不倫の歴史」~愛の幻想と現実のゆくえ~
著者:サビーヌ・メルシオール=ボネ-原書房、2001年   ¥3200-
「不倫」は、市場社会がどんどんと広がっていく過程で、庶民にも普及したらしい。
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「匠研究室 「本を読む」より」
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不倫や姦通が成り立つためには、結婚という制度がなければならない。
いまや結婚制度は大きく揺らいでおり、かつてのように子孫を残すことが、結婚だとは考えなくなりつつある。

本書は、古代ギリシャから現代まで、フランスを中心とした不倫観をたどったものである。
本書を読んでまず感じるのは、庶民と支配階級ではまったく異なった倫理が支配していた、ということである。
支配者たちは、有り余る時間とお金をつかって、自分たちだけに通用する倫理観をもっていた。
しかし、庶民は支配者の倫理観とは無関係に働き続けた。
庶民にとって、結婚が意味するのは、互いに生きていくための方策だった。

生きていく為の自然圧力が厳しい時代の庶民にとって、結婚とは「お互いに生きていくための方策だった」 女性は子供を生むだけでなく、大切な労働力としても期待されていたのである。

農耕社会での女性の社会的な地位は、現在ふつうに思うほど低くはない。
とりわけ働く庶民にとって、女性をないがしろにしたら、毎日の生活に差し障りがおきる。
非力とはいえ、女性にも充分の仕事があり、女性もれっきとした労働力だった。
だから労働力に応じて、女性の家庭内地位はそれなりに確保されていた。
しかし、支配者たちにあっては、事情はまるで違った。
支配者たちにとって、仕事とは支配することである。
支配には多くの場合、男性しか用はなかった。
なぜなら、農耕時代の支配とは、戦闘行動がその根幹を支えており、
戦うことは男性の独占領域だったから、女性は支配という仕事に参加できなかった。
そのため、支配階層にあっては、女性の地位はきわめて低かった。
古代ギリシャで、アテネの女性は法的に未成年の扱いを受け、なにも権利を持たなかった。滅多に外出せず、夫ともたまにしか顔を合わさず、・・・・(中略)・・・・・。妻の唯一の務めは、夫の財産を受け継ぐ嫡子を産むことだった。・・・・(中略)・・・・・夫を自由に選ぶことは不可能で、結婚を決めるの  は父親か後見人だった。夫がアテネ内外の自由身分の女性と浮気した場合、妻はアルコンと呼ばれる  行政官に離婚請求することだけが許された。P19
もちろん離婚請求が、簡単に認められるわけがなかった。
・・・(中略)・・・
支配階層の女性は、現在の専業主婦と同様に、子供を産むこと以外に存在価値がなかった。
農耕社会の支配階層にとって、女性は男性の所有物だったのである。

聖書の教えでは、未婚、既婚男性を問わず、既婚女性との性的関係を禁じている。それは妻、使用人、家畜に対する夫の所有権の侵害であり、戒律違反の汚れだからである。違反者は投石刑で殺された。「隣人の妻と姦淫する者は姦淫した男も女も共に必ず死刑に処せられる」(レビ記)古い時代には、夫が浮気をしても相手の女性が結婚していなければ罪に問われなかった。P50

現代は、自我性を中心価値とする私権制度を高度化させて市場社会を拡大し続けてきた。そして女性の社会参加も進み女性の地位も向上した。
中世では女性は男の所有物であったが、現代ではどうか? 女性は未だに男性の所有物である。が、一方で、男性も女性の所有物と成っているのが、現代の「恋愛」である。幻想化された「恋人」を求めて、お互い同士が、互いを所有物の対象(=「恋人」)として捉えて、相手を拘束しようとしているのである。

 こうした時代がながくながく、ほんとうに長く続いた。
それが近代という、庶民が主人公だと言われる時代になって、やっと少しずつ事情が変わり始めた。
働かない貴族を打ち倒し、誰でも働き、
しかも働くことを良しとする社会が実現されて初めて、女性の労働も認知された。
それでも女性の労働力が、社会の主流を支えるには至らなかったから、女性の地位は低いままだった。
19世紀にいたって、女性の婚外の恋がうたわれ始めたが、決して主流ではなかった。
恋にうつつを抜かすことができたのは、働かない貴族たちである。
没落しつつある貴族たちの男女観は、来るべき社会の主流にはなり得ない。

私権制度を極めてきた市場社会の制度の下で、男女関係は「没落した貴族の男女観」つまり、所有物として拘束しあう私権社会での恋愛関係から、元来の生産役割を担い合う新たな男女関係を模索する必要性がある事を説いている書籍である。

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