2010年02月17日
人類の進化 4 観念機能獲得 前夜 ~猿人段階~
先が読めない現代にあって、私たちの足元から確認しようという試み「人類の進化」シリーズ。これまで、
『人類の進化-1 ヒトは何種類いたのか?』
『人類の進化-2 2足歩行は人類を形成した主要因ではない』
『人類の進化 3 人類進化の主要動因は過酷な生存圧力からの観念機能の発達』
と、お話をしてきました。
私たちのご先祖様を含めて、類人猿は様々に枝分かれし、適応を試みてきました。約700万年前から見て、二足歩行していたと思しき亜種はわかっているだけで27種。なかには同時代に並存していたと考えれらる種までいます。しかし、700万年後に生き残ったのは唯一 ホモサピエンス=人類だけでした。この事実は何を意味するのでしょう。
前回までの記事で、私たち人類を人類たらしめているのは、観念機能であることが浮かび上がってきました。二足歩行の上、さらに脳の高機能化をはかった種が観念機能の獲得に至ったわけです。
今日は、その前夜 猿人段階でのご先祖様にスポットを当ててみます。るいネットの関連投稿【人類の拡散と観念機能の進化①~猿人段階~】(西谷さん)を紹介します。
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先日のなんでや劇場「人類の拡散」に出席した。
今回、最大の気づきだったのは人類の拡散過程と、観念機能の進化は密接に関係していると言うこと。
今回のなんでや劇場の中で得られた認識に、調べたデータや事例を付け加えて、この拡散過程と観念機能の進化過程を整理してみる。
1.猿人段階(約700万年前~200万年前(一部150万年前まで))
(サヘラントロプス属→オロリン属→)
アルディビテクス属(ラミダス猿人)→アウストラロピテクス属
→パラントロプス属(絶滅)
脳容量平均 :約400cc前後=現生チンパンジー並
石器の使用 :なし
生息域と移動状況:アフリカ全域?
(化石発掘は東~南アフリカが中心)
アフリカ大陸からの移動は一切ない
猿人段階では、観念機能上重要な前頭葉の発達度合いは低く、言語をつかさどるブローカー野も未発達であることから、言語能力はせいぜい現生チンパンジーレベル程度。石器も使用していないことから、観念機能はまだ獲得されていないと考えられる。
しかし、猿人段階でも知能発達=脳の進化は確実に起こっている。
事実、アウストラロピテクス・アファレンシス(400万~300万年前)→アフリカヌス(300万~250万年前)→パラントロプス・ボイセイ(250万年前~150万年前)と時代が進むにつれて、平均脳容量が約380ccから500cc前後まで発達している。
この知能発達=脳進化の原因は大きく3つ考えられる。
1つは、歩行訓練における共認機能の発達。
完全な2足歩行の形跡は、500万年前のラミダス猿人段階で確認されるが(サヘラントロプス属・オロリン属はまだナックルウォークに近い)当時の人類は言ってみれば「ヨチヨチ歩き」の段階で(それほど2足歩行はバランスが悪い)、日常的に歩行訓練を行っていたと考えられる。この直立歩行訓練の中で親和充足・解脱充足を得ることで、(猿時代に獲得した)共認機能を発達させて行った。
2つ目は、食生の肉食化(死肉食)。
脳は大量のエネルギーを消費する為、栄養価の高い食生が必要不可欠になる。肉食は(肉体負荷が高い一方で)エネルギー量が高く、脳の発達の促進が可能になった。
3つ目は、遺伝子の変化。
DNA解析の結果、約300万年前の猿人段階で全ての生物にセットされている「脳の発達を抑制する遺伝子」が欠損したことが解っている。(脳を発達させることは、出産負荷の増大、エネルギー負荷の増大など生命的負担が大きくなる為、発達を抑制する遺伝子が生物にはセットされている)この遺伝子が欠損したことで、本能的限界を超えて脳を発達させることが可能になった。
このように、猿人は観念機能の獲得には至っていないものの、後の観念機能獲得に繋がる脳進化・共認機能進化を図っていた。猿人段階は言わば「観念機能獲得の前準備段階」と言え、この猿人段階での知能発達の基礎があったからこそ、原人段階での観念機能獲得が可能になったと言っても過言ではない。
先述したように、脳の過度な発達は生物にとって負担が大きいが、人類(猿人)は、あえてこの危険な脳進化の道を選んだ。
実現論で語られているように、人類は「木から落ちた猿」であり、本能レベルでは全く外圧に対応できない最弱の生物だった。この逆境状況において可能性収束したのが、(本能ではなく)猿段階で獲得した共認機能の進化=知能の発達だったのである。逆に言えば、本能では全く適応できない逆境状況こそが、知能発達の道を開いたとも言える。
上記の内容をいくつか補足しましょう。
【補足1】アゴを鍛えたパラントロプス属
私たちにつながる直接のご先祖様と概ね350万年前ほどに枝分かれした種がパラントロプス属です。彼らは、私たちとは別の進化の可能性を探りました。それは、アゴ(顎)です。彼らは、脳容量の拡大ではなく、木の根など非常に硬い物を食するため噛む力とアゴの骨を鍛えました。パラントロプス属の頭蓋はどうかというと……
目の上あたりで頭蓋が終わってしまって、おでこがない。現在のゴリラに似た頭蓋をしています。これは、噛む力を支える咬筋と側頭筋を大きく発達させたためです。
噛む動作は、筋肉によって下顎を持ち上げることで起こりますが、下顎を動かす筋肉、すなわち、咬筋と側頭筋は、一方は下顎の骨に、もう一方は頭蓋骨側のどこかに止まっていないといけません。特に、側頭筋に注目すると、その差は歴然としています。
私たちの側頭筋は、側頭骨(こめがみから後頭部にかけて)に止まっていますが、パラントロプス属の側頭筋は、なんと頭蓋骨の頂部に止まっていたと考えられています。彼らの頭蓋骨のてっぺんにあるトサカ状の突起、どうもここに側頭筋の端部が止まっていたらしい。
すると、どうなるか。噛めば噛むほど(下顎を引っ張り上げる反力によって)頭蓋骨は下に引っ張られます。彼らの咬筋と側頭筋は大変発達しており、噛む力は人類の成人の約3倍=300kg(なんと、ライオンと同等!)はあったと言われています。
そんな力で頭蓋骨が下に引っ張られるのですから、頭蓋骨は上に向かって発達できません。おかげで、目から上の部分が完全につぶれた写真のような形に。噛む力の代償として、頭蓋=脳が発達できなかったということですね。
パラントロプス属の末期は、石器を使用したのではないかとの推察もあるようですが、それが限界だったのでしょう。
【補足2】脳の発達を抑制する遺伝子
脳の発達を抑制する遺伝子、その名を「CMAH」といいます。この遺伝子は、大変興味深いことに、チンパンジーなど類人猿を含め人間以外の動物には存在しますが、なぜか人間にはないといいます。私たちのご先祖様が、進化の途上で失った遺伝子だというのです。
分析によると、この遺伝子を失ったのは、概ね200~300万年前。これはちょうど、私たちのご先祖様の脳容量が急速に拡大していく時期に重なります。まさに、外れた箍(タガ)に可能性収束したということでしょう。
しかし、このCMAHという遺伝子、他の動物がすべて持っているということは、余程重要な遺伝子だったに違いありません。その限定を解除してまで進化の可能性として収束するとは……。私たちのご先祖様は、それだけ極限まで追い込まれていた、すなわち、共認機能・観念機能に可能性を見出すしかなかったのだろうと察します。
(参考:「遺伝子を失って進化した人類」るいネット(田中素さん))
【補足3】人類の出産の特徴
人類の出産では、胎児が回転しながら出てきます。これを回旋といいます。実は、回旋を伴う出産タイプは、霊長類の中では人類だけが行っています。他のサルたちはグルグル回らず、ストレートに生むらしい。
この理由は、胎児の頭部の形状と骨盤および仙骨(背骨の一番下)の形状によります。母体の産道および骨格形状が位置によって異なるため、胎児は場所に応じて頭や体(胸郭)を回転させないと産道を通れないのです。
これは、二足歩行と頭蓋の拡大(脳容量の増大)に要因があると考えられています。
二足歩行した結果、骨盤は上から見ると前後に狭く左右に長くなりました。一方、頭蓋は拡大して前後に長く左右に短い形状に進化しました。結果として、グルっと回転しながら出口までたどり着く必要が出てしまったのです。
具体的には、
骨盤上口では胎児は横を向かないと通れません。胎児は分娩のスタート時に横を向きます。一方、左右の坐骨棘と恥骨下角を含む骨盤腔中部では、坐骨棘の間よりも恥骨結合と仙骨の間の方が長い。骨盤下口でも同様。すなわち、骨盤の前後で、産道の形が90度ひねれているのです。結果、胎児は、骨盤を通り過ぎるまでに、横向きから90度回転して後ろ向きになります。頭部が骨盤を取りすぎ首まで出口に出た後、今度は、頭蓋とは90度バランスの異なる左右に大きい胸郭(肩をイメージすると良い)を通すために、更に90度回転します。
脳容量=頭蓋の拡大と二足歩行の代償として、人類のお産は他の霊長類と比べてアクロバット。かなり無理をしてギリギリやっているのですね。(おかげで、他の介助なく一人で出産できなくなった、という推察もあるようです)
(参考:「骨から見たホミニドの出産の進化史」中務 真人氏)
(参考:「■産道と児頭の回旋」 )
次回は、いよいよ脳容量増大が可能にした「観念機能」について、なかでも観念機能の代表格である言語機能に関連する内容を扱う予定です。
お楽しみに!!
- posted by hayabusa at : 2010年02月17日 | コメント (7件)| トラックバック (0)
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comments
>私たちが赤松啓介から学ぶべきは、このような生々しい事実追求の姿勢だと考えます。そして「どうしていくか」を肯定的・前進的に考える実現思考が必要であると考えます。<
赤松啓介の追求したことはまさにこのことで、それを学ばせてもらいました。
赤松啓介のフィールドワークの姿勢、事実をありのままに伝えていく、(近代人としての)自分にとって都合が悪くても、事実を見据えることがいかに重要かに気付かされました。
事実を見据えることで初めて、どうしていくかを考えることが出来るのだと思います。
>富国強兵を標榜する明治政府は、意図的に資本家をつくり出し、人口の大半を占めていた農民を労働者=搾取対象としていきます。集団から個人へ、共有から私有へ、貧富の格差拡大と共に人々の意識の根本が大きく変わり、現在に至ります。
これって改めて考えるとすごいことですよね…わずか100年ほどの間に国民の意識に強烈な変化をもたらしたわけで。
夜這いとか今ではまったく想像できないですが、つい50~100年前には当たり前のように行われていたんですもんね…
現代に即した共同体の成功例として、木の花(このはな)ファミリーという団体があります。
http://www.konohana-family.org/
50人ほどの血の繋がらない男女が共同で農業を営み、食事や入浴なども全て共同で行なって生活しているようです。
共同体的な生活をしながらも、現代の法規制などには背かない形で営みを行なっており、手作りの有機野菜は近隣住民からも評判が高いとのことで、うまく現代の世の中に溶け込んだ共同体例と言えると思います。
「夜這い」という一連の性風俗の記事を読んで農耕民族に
多い総偶婚的な集団統合の様式や村落共同体がつい一昔まで
続いていたことに驚かされました。
共同体が長く続いていたと言うことは未だ共同体的資質が残っているのではないか、と言う希望も出てきます。
今後この辺りを追求していただけたらと思います。
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