2020年07月31日
【世界の各部族の婚姻形態シリーズ】女の性権力が肥大した部族
世界の各部族の婚姻形態シリーズ、最終回は女性の権力が強くなった部族です。
これまでさまざまな部族の婚姻形態を紹介してきましたが、男女関係は社会の基底部を成すもの。
それにより集団や社会が活力のあるものになるか、滅亡に向かってしまうのかが決まります。
現代の一対婚が当たり前と考えるのではなく、社会状況、人々の意識、人類本体の充足関係とはどういうものかを歴史をヒントにしながら、考えていきたいですね。http://www.rui.jp/new/chumoku/pdf/koninron.pdf リンクより
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■ミナンガバウ族:スマトラ
7世紀から14・5 世紀にかけて中部スマトラ全域を支配した古代王国の建設種族。
回教の弾圧とオランダの支配により王国は崩壊したが、現在も女性優位の母系農耕社会を維持し、回教の一夫多妻制と調和させている。すなわち結婚後も妻は実家で生活し、妻たちの間に序列は存在しない。夫は万遍なく妻の家を訪ねることになっているが、そこで食事をするには家事を手伝うか、耕作をしなければならない。また婚約中はもちろん、結婚後もお気に入りの妻には贈り物を欠かさず、セックスの代償として妻が要求する金額を支払うことさえする。しかし妻の方は、婚前は処女性を重視したのに対し、結婚後のセックスは全く奔放。回教法では姦婦を夫が殺すのも合法だが、ミンナガバウの夫は、暴力もふるわず離婚宣言のみを行う。妻の側からの離婚も容易に行われ、夫の訪問回数が減ると、次の夫を物色して結婚を破棄。独身女は嘲笑の的となるので、離婚した女も未亡人もできるだけ早く再婚するのが通例となっており、初婚で生涯を過ごす女性はほとんどいない。
※回教の一夫多妻は、厳格な階級社会を前提に上位階級において実行されるもので、末端階級の男には女は一人も当たらない、というかたちで男と女の数はバランスしている。ここでは上位に限らず、全体に一夫多妻が見られる。また、女の浮気の自由度が高いことも加味すれば、これは多夫多妻=集団婚と見るべき。この視点に立てば、この部族は農耕+私有意識△を媒介に、交叉婚から妻問婚へ至ったパターンと言える。もともと母系制の集団婚であり、実権は氏族のバアサマにあった。農耕が導入され、集団が家族単位にまで分解されても、家族=生殖の中心であり、母系制は維持される。婚姻制は、多夫多妻はそのままで、基準だけ氏族から婚資へ転換。
婚資が婚姻の最大基準となれば、当然女は性的商品価値の上昇を企み、処女性をエサに交換価値を釣り上げていき、権力を掌中に収めたものと考えられる。そして、高値で売った後は、性権力を堂々と行使して不倫を重ね、その上、婚資だけでは不足だとして、男の家事サービス、耕作が義務付けられるに至った。
∴同類闘争圧力が弱いまま、女の私益性を野放しにして女の性的商品価値を上昇させ、女の性権力を肥大させた部族と言える。
■ボナペ島:ミクロネシア
女尊男卑体制で、あらゆる家庭の実権は妻が握っている。夫の浮気は激しく責め立てられるが、妻の浮気に関しては、夫は発言権すら与えられていない。離婚にしても、妻の家柄の方が夫のそれよりも高い場合は、夫側からの離婚請求は認められず、たとえ離婚しても夫の再婚は許されない。
※兄妹婚の母胎集団からの分派集団が逃げ延びて、ミナンガバウ族とほぼ同じ経緯をたどったものと考えられる。
■カシボ族:アマゾン支流ウカヤリ川
(アメリカ人の女性人類学者ジェーン・ドリンジャーの記録。白人に対して友好的な種族で、そこを訪れた伝道僧の話に興味を抱き、調査を始める。)
・生活形態-ペルーウカヤリ川上流に住む女性優位の母系種族。酋長も女で、狩猟・漁労・耕作など肉体労働は全て男の役割。
・男女関係-常に女が主導権を握る一妻多夫。結婚適齢期に達した娘は、部落中の若者を品くらべした末、最も気に入った男を選ぶ。それが既婚者だった場合は、布や壷などと引き換えに相手の妻から貰い受ける。飽きがきた夫を他の女に譲る際には、夫の蚊帳を次の妻となる女の小屋の前に移すことによって離婚と再婚が成立。男は自分の蚊帳が置かれている小屋の女と暮らさなければならない。
※①女長老に率いられて、兄妹婚の母胎集団から分派し、僻地へ逃げて来た部族である。
②外圧がほとんどなく、男の発散欠乏△→乱交を背景に女の性的商品価値→選択特権を確立→早期に性権力が絶対的に共認された。女の権力が絶対共認されると、女尊男卑の社会(=男はあらゆる負担を押し付けられる労働力であり、同時に所有権移転の対象)になるのが当然であり、最近の日本社会もこれに近いと言える。
③このように女ボスの下で女の論理が強固に確立されると、複数の集団を立体(2~3段)構成で統合する立体的組織統合力が形成できないので、人口増大→集団規模△の際には、分裂するよりほかになく、長期にわたって単位集団のまま女権制を強化していった。
分裂・分派を繰り返すことで、周辺部族が徐々に増大し、同類闘争圧力が上昇する。しかし既に、性権力支配の絶対的共認が確立されていることから、現状維持を第一義として、勢力拡大はせずに、縄張り協定(同母胎集団からの分派集団ゆえに、言語が通じる)により同類闘争を回避(∴同類闘争を通しての男の復権の可能性なし)、立体的組織論を持たないままに、性権力支配社会が継続・維持されていく。
■ワツンバ族:アマゾン支流ウカヤリ川
ボリビア国境近くの上部ウカヤリ川で女だけで生活を営む。吹き矢や槍を用いた戦闘能力にたけ、日頃は他の種族を寄せつけないが、毎年9月に、近くの多種族の逞しい男たちを招いての交情式を一ヵ月間行い、5~6月に一斉出産。(妊娠しなかった女は追放。)男の子は他の部落にやる。
※地理的にカシボ族と非常に近いことから、同一の母胎集団から分派した部族と考えられる。カシボ族と同様に、同類闘争圧力が増大する以前に、女の性権力が絶対共認され、女尊男卑の社会となり、それを極限まで押し進めた結果、性交時以外は男不用となってしまったものと思われる。
交情式の相手の男は、言葉が通じる必要から、協定を結んだ同系部族の男でもあるはず。一斉出産期間中は、同系部族との協定関係で守られている必要がある。また、性権力維持が第一で、戦争=縄張り拡大はしないはずなので、この点からもセックスを武器とする協定により同類闘争を回避しているものと考えられる。
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- posted by KIDA-G at : 2020年07月31日 | コメント (0件)| トラックバック (0)