2008年08月09日
霊長類の群れ社会の進化(1)~霊長類を見る視点<前編>
『哺乳類の群れ社会の原型は、メス(母親)とその娘を核にした母系的な結びつき』
『哺乳類 メス同士の結びつきから群れ社会が生じた必然性』
では、「哺乳類はメス同士の結びつきから群れ社会が生じた」事例や必然性を見てきましたが、今回から霊長類の群れ(集団)の形成過程を見ていきます。
霊長類の群れ社会の進化をたどっていくのに、霊長類学の成果を参考に進めていきます。ただし、『霊長類学の家族の起源』シリーズ(1) (2) (3) (4)で紹介されたように、現在の霊長類学の学説はスッキリと論理整合しません。そこには、「逆境⇒どうする?⇒新機能獲得⇒最先端機能に収束することによって個体も集団も統合される という生物進化の論理がない」のが、決定的な弱点ではないかと思われます。
そこで、本ブログでは、次の視点で霊長類の群れ社会の進化を見ていこうと思います。
◆置かれた外圧状況を把握する
◆群れ社会の進化を塗り重ね構造として捉える
もともと生物の群れ(集団)は外圧に適応するために形成されたものです。この群れ(集団)の成立構造の進化を原猿から真猿へとたどり、初期人類の集団がどのようなものだったのか?に迫る足がかりにしたいと思います。
今回は、その取っ掛かりとして、霊長類を見る視点を整理してみます。
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【置かれた外圧状況を把握する】
霊長類の群れ社会を考える上で、霊長類学の成果・観察記録を参考にすることが不可欠ですが、それには次の認識が重要です。
真猿たちが、現在見られる様な比較的安定した棲み分け分布を示す様になる前は、新たに登場した真猿他種(強種)との間で、激しい種間闘争が繰り拡げられたでしょう。チンパンジーやゴリラやハヌマンやニホンザル(その他、比較的大型化した真猿たち)は、夫々の棲息域で勝ち抜いて他種を圧倒した制覇種だと考えられます。
その様に制覇種が決まると、次は同種間の同類闘争となります。同種間の場合、体力etcが基本的には同じなので、この同類闘争は延々と続きますが、その闘争圧力は種間闘争よりは弱く、一種の安定化に向かう流れと捉えることも出来ます。その流れの中で、ある特殊条件(小島や小半島あるいは人類の繁殖によって分断され閉鎖されたことによる生息域の小地域化)が満たされた場合、極端に闘争圧力が衰弱し、安定化した少数の群れが出現します。
本来、これらの真猿制覇種たちは、夫々に広大な地域で森林という森林を埋め尽くして同類闘争を闘っており、群れも縄張りも絶えず入れ変わります。これは、群れの新陳代謝と云っても良いくらいに流動的です。しかし、小島や小半島あるいは人類の繁殖によって分断され閉鎖された小地域では、この群れ=縄張りの流動性が小さくなり、いつも同じ敵集団とのニラミ合いという状態が、恒常化してゆきます。
通常、戦闘行為(肉弾戦)は一日or数日で決着がつきますが、同じ相手とのニラミ合いが長期化すると兵士たちに厭戦気分が拡がって肉弾戦を回避しようとする様になり、互いに威嚇し合うだけの形式化された闘争に変わってゆきます(現在の多くのチンパンジーやニホンザルは、この状態にあります)。更に上記の如く閉鎖された小地域の様に、その様な状態が極めて長期に恒常化すると、遂にはニラミ合いさえ怪しくなり、同類闘争の圧力が極度に衰弱して、闘争を率いる首雄の存在理由も無くなって終います。
この様な特殊閉鎖地域に見られる現象が、屋久島や下北半島のニホンザルであり、あるいは大河に挟まれた小地域に生息するボノボの生態です。この様に、何を見るにしても歴史的に捉える視点が不可欠だと、思います。もし、その様な視点なしに、ある特殊地域の現状観察だけを大衆向けに発表すれば、殆どの素人は、ニホンザルやボノボは元々そうだったのだ(更には拡張して、サルにはボスは居ないのだ)と誤解して終います。(この点は、学者が大衆向けに何かを云う際に、深く留意して頂きたい点です。)
るいネット『同類闘争の安定化と衰弱の一般則』より引用
現在のサルは、樹上進出段階での種間闘争、そして制覇種となって以降の同類闘争を経て、比較的安定した棲み分け分布するに至った群れ(集団)です。したがって、野生でもあって現在の霊長類の群れを見て、昔からそうだったかのように捉えてしまうのでは錯覚です。
また、人間の手による森林破壊など霊長類が生息する環境が大きく変化している現在、群れの集団様式も大きく変化しているはずです。ましてや人工的な環境下や餌付けされた群れは、当然本来の姿とはいえません。
現在、観察される群れの集団様式に加えて、もともとの外圧状況(環境外圧、闘争外圧など)を考慮した上で、本来の群れ社会を推測することが必要になりそうです。
『霊長類を見る視点<後編>』に続きます・・・(さいこう)
- posted by sachiare at : 2008年08月09日 | コメント (6件)| トラックバック (0)
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comments
骨シリーズから一気に時代が新しくなりましたね。中が抜けているような ^_^;
ところで着物って植物繊維で編んだものでしょうか、動物の毛皮も含まれているのでしょうか?
>大杉さん
返信遅くなってすいません。
500万年→7万年!一気に飛んでしまいましたね。
これから少しずつ間を埋めて行きたいと思います。
>着物って植物繊維で編んだものでしょうか、動物の毛皮も含まれているのでしょうか?
アタマジラミとコロモジラミは、フケと垢の食性の違いなので、着物が繊維か毛皮かは、本にも記載されていませんでしたが、様々な事象の起原を抑えていく中で、仮説が立てられればと考えています。
もう少し追求してみますね。
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