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2010年01月12日

遊牧部族の父系制社会から私有婚誕生までの歴史構造-5<私有婚家族の成立と土地の私有>

みなさん、こんにちは。
行き詰まりを見せる現在の婚姻制度=私有婚制度の成立構造を解明し、私有婚制度の本質とは何か?に迫るシリーズ『遊牧部族の父系制社会から私有婚誕生までの歴史構造』。今日は第5回をお届けします。
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第1回第2回で、母系制であった集団が、「遊牧」という生産様式故に人類史上はじめて母系制から父系制へと転換。安心基盤を失った女の不安が増大、それに応えるかたちで自集団の蓄財意識が強くなり、次第に私益的色彩が強くなってゆく流れを押えました。
第3回第4回では、父系制へ転換した遊牧部族が、共認内容も「集団私権意識」に染められていき、ついに集団の統合原理が、「力の原理」に転換し、自集団を「正当化する観念」が採用されていったこと。
この自集団の正当化観念が強化されることで、他集団への否定視が可能になり、乾燥化を契機に掠奪闘争の引き金が引かれた構造を明らかにしました。
今回は略奪闘争の下、私有婚家族が成立し、それを背景に土地が家族単位で私有されていく構造を展開します。

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 私有婚(とりわけ固定一対婚)は古代の掠奪闘争により世界で普遍化したように考えられます。
実現論の私権時代冒頭にあるように、イラン高原で始まった略奪闘争は、邪心集団の勝ち抜き戦を通して、あっという間に世界を掠奪集団だらけの状態にしてしまいました。
掠奪集団は、勝った集団も、負けて再起を目指す集団も集団統合のために女の掠奪を行うのが普遍的に見られるようです。
たとえば古代ローマの始源は、荒くれの男だけの少数集団(恐らく掠奪闘争に負けた生き残り)が近隣部族を襲い女を掠奪し、妻としたところから始まる。奪われた部族は、女を取り返すために戦いを挑むが、夫と近親の戦いを見かねた女たちの仲介で和解する。戦いに決着がつかなかったことと、正式な妻として扱われていたため、現状を追認して和解した。(塩野七生さんのローマについての本より)
西欧では、このようなやり方は普遍的らしく、結婚に際して掠奪婚の風習を伝える地方は多い。
ここで注目するのは、掠奪して獲た女も正式な妻として扱っている点です。(もちろんローマ時代の始まりは、イラン高原で掠奪闘争が始まったころに比べてだいぶ時代は下りますが、)これは掠奪集団において、男たちの統合強化のため、あまねく女を分配しかつ、女の取り合い・不倫etcなどの性闘争が起きないように、固定一対婚が様式化(共認)されていたことを示しています。
このようなやり方は、おそらく初期の掠奪集団から、荒くれ男たちの集団を統合するために、行われたのではないかと推測できます。そして掠奪闘争の広がりとともに私有婚(固定一対婚)が一般化していったと考えられます。 掠奪闘争が私有婚を一般化させていった

 略奪婚が始まると、集団内でも、性闘争が激化する為、統合を強化するため、固定一対婚を共認するしかなくなっていくのですね。
しかし、それが生殖過程での集団に対する遠心力を産み、やがて闘争過程にまで及んで、土地を家族単位で私有するようになっていきます。
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 また上位階層による土地の占有→私権社会化という論法にも論理の断絶がある。もともと土地は集団の縄張りであり生存手段である。したがってもし長一人がそれを占有したとしても(自分ひとりで耕せるわけでは無いので)殆ど意味が無いし、そればかりか集団の成員の不満が噴出し、集団が崩壊しかねない。
また各成員間で(上位だけでも)土地を占有することも考えにくい。なぜならもともと集団全体の生存圏であった土地を各人が占有することは、各成員を分断しそこに遠心力=分裂のベクトルを生じさせる。つまり集団の統合力を弱めるだけである。
したがって以上より、私有はある集団が他の集団を支配下に置き、他の集団の土地を分配する場合しか考えられない。
しかし、それでも占有や私有は闘争上の結束において遠心力を生じさせ集団を弱体化させる。従ってそれが成立するためには、闘争過程ではなく生殖過程で既に集団に対する遠心力が働いていたとしか考えられない。つまり集団内での生殖集団の分離=私有婚家族が成立しその要求に従う形で、私有婚家族の活力を引き出すために行ったと考えられる。
以上より、農耕が私有に結びつくためには2つの条件、つまり他の集団に対する掠奪と支配、そして私有婚家族の登場が必要になる。(実際私権文明はシュメールや、竜山など掠奪闘争→覇権闘争を経験した地域にしか登場していない)
歴史の学説が論理に飛躍があるのは学者達が圧力不在の大学空間におり、同類闘争の圧力やとりわけ組織統合(論)に対する視点が全く欠落していることに起因するのであろう。 私権成立には掠奪闘争と私有婚の2つの条件が必要

 次回は、こうして家族単位の私有を共認した血縁集団が、市場社会で集団の解体が進み、核家族化していく過程を展開します。

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