2008年09月27日
初期人類は骨を食べていた!vol.10(主食をめぐる様々な仮説紹介)
初期人類は骨を食べていた!vol.9(ヒトとサルの足の構造)で、次回、直立二足歩行の謎における様々な学説を紹介しますと言いましたが、その前にこれまでの初期人類の主食を巡る考え方の流れを少し紹介しておこうと思います。
初期人類の主食な解明は、sachiareさんによって展開されつつある<洞窟に隠れ住んでいた初期人類たち>シリーズでの生存環境を探る上でも、非常に重要な視点になると思われるので、<初期人類は骨を食べていた!>シリーズでも、これまで様々な学者が過去に、初期人類の主食に対して言及している視点、あらためて紹介しておこうと思います。
島泰三さんの「口と手連合仮説」は、「歯列の表面が平らで、臼歯のエナメル質が厚く、すり潰しシステムのある頑丈なあごと、しっかり握りしめる手をもつ直立二足歩行類人猿のニッチは何か?」という観点から、主食が「骨」であることをつきとめていますが、それ以前にも様々な学者が、初期人類の主食の解明にあたっています。
イラスト:『人はなぜ立ったのか?』島泰三著より
では、500万年前の人類に思いを馳せ、同化する旅に出発する前にぽちっとお願いします。
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●レイモンド・ダート「狩猟・肉食仮説」
アウストラロピテクスの名付けの親、南アフリカのレイモンド・ダート博士は、初期人類を「狩猟するサル」と定義しました。獲物のカモシカなどを追いかけて、草原を走り、肉を食していただろうと
アフリカの大草原を駆け回る勇壮な初期人類の姿が描き出されました。
しかし、ちょっと考えてみてください。二本足で走るのは、4本足で走るほど効率的でも速くもないですよね。ノウサギ程度が限界でとてもシマウマやシカなど追いかけるのは不可能ですよね。
そのうえ、アウストラロピテクスの歯は今の人間のはと同じなので肉食には適していないですよね。
人類の歯はすりつぶす歯で、肉食獣のような肉を切り裂く歯ではないですよね
●クリフォード・ジョリー「種子食仮説」
クリフォード・ジョリー博士は、「草原に住むサル」という面で、ゲラダヒヒとアウストラロピテクスの生態が似てるのではないか と考えました。アウストラロピテクスは、草原にたくさんある草の種子を食べていたのではないか!とジョリー博士は主張しました。
そうすると、すりつぶし方式の臼歯は、小さな種子をまわしてくだく臼(うす)と言うことができます。
●渡辺仁「小動物・根菜類仮説(堀り棒仮説)」
「種子食仮説」は変だよ と、東大の人類学教室で生態人類学を教えていた渡辺仁先生は主張しました。ジョリー博士の説明は、歯の形にはいいかもしれないけれど、草の種子を取るのに草原で立たなくてはならない理由がない と主張しました。
渡辺先生の考えは、「草原ではかえって不利なニ本足で立ち上がった理由としては、木の棒を持つこと以外に考えられない」と考えました。木の棒をもち移動し、木の棒を使い地中の木や草の根や小動物などを取って食べていたのではないか!という説です。
●レビス・ビンフォード「スカベンジャー仮説」
レビス・ビンフォード博士は狩猟は無理でも、ライオンたちが残した肉なら食べられたのではないか と考えました。ハイエナのような残りの肉を食べる動物をスカベンジャーと呼ぶので、この説は「スカベンジャー(残肉処理者)説」と言われるようになりました。
しかし、サバンナには動物の死骸が多いといっても、サバンナには死骸の掃除屋がたくさんいます。ハイエナしかり、内臓など柔らかい部分を好む、ハゲワシしかり。
残るのは、骨、それもハイエナの頑丈な歯でも太刀打ちできないほどの大きな骨だけとなります。
●B・E・ポルシュネフ「ボーンハンティング(骨猟)仮説」
アウストラロピテクスの発掘される遺跡では、動物の骨はつきものです。「だから、骨を食べていた 」と、主張する学者が現れました。ロシア人のポルシュネフ博士という人類学者です。
しかし、合理的な仮説だと評価される一方で、骨が食べ物になるというのは、合理的といっても「常識的」ではないと評価されました。
『人はなぜ立ったのか?』島泰三著より要約
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これまで展開してきた、<初期人類は骨を食べていた!>シリーズは、こうした先人の仮説の問題点を、「口と手連合仮説」によって論理整合させる仮説となっているのです。これから展開されていく、初期人類の生存環境を解き明かす<洞窟に隠れ住んでいた初期人類たち>シリーズには、骨を主食とするに至った、初期人類の生存環境をリアルに解明 してくれると思います。
乞うご期待して頂きたいと思います 。
<初期人類は骨を食べていた!>シリーズでは、直立二足歩行の謎における様々な学説を紹介させていただこう思います。
初期人類は骨を食べていた!vol.11(直立二足歩行に関する仮説紹介)・・・・coming soon
- posted by yidaki at : 2008年09月27日 | コメント (4件)| トラックバック (0)
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comments
>「他から入ってくるいろいろな宗教や思想を取り入れやすいものにしながら、日本の伝統的な文化や、全体の組織をぶちこわすような要素は骨抜きにしてしまう性能をもっていたのではないか。」
なるほどです。
日本の文化は、組織崩壊要素を骨抜きにしながら、新たな有効要素はきっちりと取り入れる!
塗り重ねの進化方式を、もっとも有効に活用している民族かもしれないと、思いました。
文無しさん、コメントありがとうございます。
「善か?悪か?」
「YESか?NOか?」
今まで、多くの人たちが、このわかりやすい判断を繰り返してきました。
そして、その結果が、過去から積み重ねてきたものの崩壊なのだとしたら、わたしたちは、今こそ立ち止まり、歴史を振り返る必要があるのではないでしょうか?
この視点で、今年も追及していきたいと思います。
hermes taschen 共同体社会と人類婚姻史 | 「森林の思考」と結びついた「砂漠の思考」
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