2009年12月22日
遊牧部族の父系制社会から私有婚誕生までの歴史構造-2<遊牧部族の父系制転換②>
前投稿 遊牧部族の父系制社会から私有婚誕生までの歴史構造-1 で、もともとは母系制であった集団が、「遊牧」という生産様式への転換により父系制へと転換していく流れを押えました。
今回は引き続き、父系制転換の【骨子】をまとめた上で、【補足】において、その必然構造を明らかにしたいと思います。
<写真引用元は こちら >
〇るいネット 『遊牧部族の父系制転換』 より
【骨子】
●遊牧は、家畜を連れて小集団(小氏族)で独立して移動する過酷な生産様式であり、男たちの縄張り防衛力が重要視される。
●それゆえ遊牧部族は、集団の戦力を維持するために男残留を選択せざるを得ず、人類史上はじめて母系制から父系制へと転換した。
●父系制(女が移籍)に転換すると、必然的に女の不安が増大することになる。
●自集団の蓄財意識(婚姻の持参財でもある家畜の数を増やす)が強くなり、次第に私益的色彩が強くなってゆく。
★遊牧部族の父系制への転換は、私益第一の意識を芽生えさせた点で、人類史のターニングポイントとなった。
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【補足】
①遊牧だと男の縄張り防衛力が重視されるわけ
・遊牧は家畜頼みの生産様式(家畜を失えば滅亡)。
・草地を求めて移動する中で、地理的リスクや気象リスクのほか、肉食動物との遭遇、他集団との接触といった危険要因は非常に多い。
・また小人数で広範囲を移動することから集団の独立性は高く、有事の際は自集団の男たちだけでなんとかしなければならない。
・したがって、移動に必要な地理の知識(どこに草や水があるか、どこが危険か等)、猛獣から家畜を守る防衛力、他部族と接触した時に縄張りを守る力が、集団存続のために重要視される。
②なぜ父系制になったのか?
・上記理由から。特に、縄張り(移動ルート)の地理に精通していることは、家畜の死活問題=集団の死活問題に直結する命綱であり、生まれ育ったころから重要な情報を身につけてきた男を移籍させるわけにはいかない。
・一般哺乳類(チンパンジー除く)も採取時代の人類も母系制が基本(オス=男が集団を出てゆくのは本能的にも自然なこと)。遊牧という生産様式ゆえの父系制への転換は、大きな出来事だった。
※遊牧部族は、小集団(氏族)の連合体のかたちをとっており、部族としてのまとまり(統合)を維持するため(各氏族がバラバラにならないため)、婚姻を通じて男か女かどちらかを移籍させる必要性があった。
③父系制になるとどうなる?
・母系集団では女たちは生まれたときからずっと一緒。女の本分である出産や子育て、また日常の生活においても、女同士の結束(共認)や安心感は強かった。
・しかし父系制では、女は一人で他集団に嫁ぐことになる。嫁ぎ先では、女たちの生まれや育ちはバラバラなので、女同士の結束(共認)は弱くなってしまう。
・また女が嫁ぐとき、出身集団から持参財(家畜=食い扶持)を送ることになっていたが、その家畜の多寡や良し悪し(乳が良く出ればいい等)で、嫁ぎ先での扱いも変わってくる。
・それらあいまって、父系制では、女たちの不安は非常に大きくなった。
④女移籍→女たちの不安が大きくなると・・・
・嫁いだ女が母親になると、「自分の娘が移籍する際は肩身の狭い思いをさせたくない」「持参財(家畜)は少しでもいいものを」という親心になるのは当然で、そのためにも、男たちにもっと家畜を増やすように、もっと縄張りを拡大するように期待してゆくことになる。
・この期待は必然的に、氏族内の蓄財意識を生み出し、しだいに自集団の私益第一の様相が強くなってゆく。
★人類史のターニングポイント
・遊牧部族の父系制への転換は、私益第一(蓄財と縄張り)の意識を芽生えさせることになった。
・そうすると、他集団との接触も増え緊張も高まってくる。そして集団間の警戒心や敵視、利害の対立からくる小競り合いや衝突といった事態も登場してくることになる。
・その後・・・ついに、私益を求めて略奪闘争(戦争)へと突入することになってしまう。
男の闘争の目的は、女や子供たちが安心して生活できる場(=共認域)を守ることにありました。
それが、いったん遊牧という生産様式をとりいれると、まず小数の男たちが母集団を離れざるを得ません。男といえども共認動物であり、彼らがまっさきに不安に陥ったのではないでしょうか?
その男たちの不安解消のために生み出された婚姻制が、女たちの不安を生起させ、その不安を埋め合わせるために財(物)に頼る。遊牧部族の婚姻制は、極めて倒錯した婚姻制であるということができるのではないでしょうか?
しかし、この段階では、まだ他の集団を掠奪するというところまではいかないと思います。
次回以降、父系転換した集団が掠奪へと向う構造に迫っていきます。
どうぞ、お楽しみに!
- posted by naoto at : 2009年12月22日 | コメント (3件)| トラックバック (0)
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