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2010年05月06日

本格追求シリーズ2 世界婚姻史の構造解明(その1)「第6回 狩猟部族編」

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画像はこちらからお借りしました。
前回まで、採取(漁労・採集)部族の婚姻形態を、時代毎に追いかけてきました。自然外圧の低下により、乱交に移行したこと。人口増加、集団分化が進むと、婚姻形態も複雑に変化したこと。それは部族統合のためだったこと。など、その時々の状況に応じて、婚姻形態は工夫され、集団の基盤を成していたことがわかりました。
前回までの内容はこちらから。
第1回 プロローグ 
第2回 極限時代の婚姻形態
第3回 採取時代の婚姻形態 採取部族編1
第4回 採取時代の婚姻形態 採取部族編2
第5回 採取時代の婚姻形態 採取部族編3
世界各地の先住民事例と共に、婚姻形態の構造化を試み、紹介していますのでぜひご覧下さい。
採取部族の婚姻形態は、前回までで一段落。今日からは、採取部族とは別の道を歩んだ、狩猟部族の婚姻形態を見ていきたいと思います。
※、狩猟:食料や物資のため、野生動物(鳥類・哺乳類)を捕獲する行為のこと。


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まずは世界婚姻史図解をご覧下さい。これは、参考文献から、時代毎、生産様式毎に婚姻形態をまとめた図解です。左から右に向かって、時代が進んでいきます。
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世界婚姻史図解を拡大
一番左端は、人類初期の婚姻形態であるボス集中婚。前回までの採取部族は、そこから図右下へ移行した系統です。今日は、右上へ進んでいく赤囲みの部分、狩猟部族を追いかけていきます。
◆ボス集中婚から勇士婚へ
実現論-前史-から引用

ヨーロッパの森林地帯に留まった白色人(コーカソイド)をはじめとする狩猟部族は、その狩猟という生産様式から、まだまだ強い闘争圧力を受けて強い集団統合力を維持し続けており、その結果、首雄集中婚の規範が長く残り続ける。しかし、外圧の低下によって次第に解脱収束が強まり、集団規模も拡大してゆく。そこで狩猟部族は、首雄集中婚を踏襲しつつ、首雄=族長という資格を一段下に拡張した勇士集中婚を形成していった。

だが、ここに大きな落とし穴があった。首雄は唯一人である。しかし、勇士は一人ではなく何人もいる。しかも、勇士の資格は人工的に作られた資格である。従って、男たちの相対性と各々の正当化から自我を発生させて終う余地が大きい。

マンモスハンター  画像はこちらからお借りしました。
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前回までの採取部族は、豊かな自然環境の中で生活を営み、女達が主要な食糧を確保していました。このため男達の能力差が見えにくい状況。ボスに性を集中させるより、集団内の充足を大切にし、乱交へ進んだと考えられます。
一方、狩猟部族は、男達が狩りを行い食糧を確保しています。従って、集団にとって男達の能力が不可欠となり、男達の能力差もわかりやすくなります。このため外圧が一段低下すると、ボスから勇士へ、一段下に拡張した資格が生まれたと考えることできるようです。また勇士資格は人工的。そこに、自我を発生させてしまう余地があるようです。

◆勇士婚から勇士婿入婚へ
世界各地の婚姻形態から引用

北米インディアンのイロコイ族は、「長女と結婚する者は、その妹たち全てを妻にする権利を有する」という慣習を残存させている。未婚男女間の社会的交際はほとんどなく、婚姻の取り決めは母に委ねられ、当事者の事前の承諾を必要としない。男が娘の氏族的親族に贈り物をすることが、婚姻取引における特色。

南東アフリカのマサイ族は、自立性の高い自治組織で飽くなき蓄財欲から、内部でも部族間の抗争が絶えず、部族の消滅や吸収を繰り返してきた。戦闘能力を持つ少年がある一定の数に達すると、長老達によって割礼式の挙行が決定される。素手で去勢牛の角をつかみ、引き倒して力を誇示する儀礼を行った後、自分たちの集落に戻って実際の割礼を受ける。
氏族内での通婚は禁止。男が見初めると、首飾りを贈り、娘の両親に結婚の意思表明として少量の蜂蜜を送った後に、大量の蜂蜜と牛乳を送る。結婚の申し入れが受け入れられると、男は娘の両親に心付けの品物を贈り、式の当日、2頭の牝牛と1頭の去勢牛、2頭の牝牛と1頭の仔羊、1頭の牝山羊を婚資として持ってくる。

マサイ族  画像はこちらからお借りしました。        勇士婿入婚の図解をつくってみました。
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外圧の低下により、集団規模が拡大(人口増加)すると多くの分派=新集団が誕生していきます。それまでは、単位集団内での勇士婚でしたが、部族集団の分化と統合の中で、氏族間でのメンバー入れ替えが発生しています。
集団の分割基準は血縁の他なく、かつ生殖過程は女達が主導権を握るため、単位集団は母系となっていきます。このため、勇士が母系集団に入る勇士婿入婚へ移行していったと考えられます。
ここでもう一つ注目すべきは、婚資が登場したこと。勇士婚では、女達の強者選択本能に基づき、勇士が決められますが、勇士婿入婚の事例では、男の方から婚資を持って、相手氏族に申し込む婚姻形態となっています。
実現論-前史-から引用

強力な外圧に晒されている時には、サル・人類はこの解脱共認を母胎にして、その上に闘争系の共認を形成し、そこ(課題共認や役割共認)へ収束する。だが、外圧が低下すると、忽ち闘争(集団)収束力が低下して、時間さえあれば解脱充足を貪る様になる。つまり、元々は凄まじい外圧→不全感から解脱する為に形成された解脱回路は、外圧が低下すると、むしろその充足だけを貪る為の堕落回路となる。

つまり、外圧の低下に伴い男達の性欠乏(解脱充足欠乏)が上昇。男女の性需給アンバランスが拡大(性の需要>供給)。従って女達の性的商品価値が発生し、婚資が登場した可能性があります。それは同時に、母系氏族の蓄財意識にも繋がっていきます。 



◆勇士婿入婚から兵士婚へ

さらに外圧が低下すると、勇士の戦力が平準化していきます。求められる男達の能力が著しく緩められことになるため、勇士は、兵士とも呼ぶべき形式化した資格へと変わっていきます。
一方で母系氏族には、蓄財意識があり、平準化した兵士に姉妹全員を与えたのでは、得られる婚資が限られてしまいます。このため姉妹を一人一人に分け、女達を切り売りすることで、集団にたくさんの婚資を確保しようと動くことが考えられます。
このようにして、勇士婚から兵士婚へ。男女が1:1に近づく個人婚への移行が考えられます。



◆まとめ
外圧が低下すると、採取部族では乱交、狩猟部族では勇士婚となり、自然環境と、それに規定される生産様式によって、婚姻形態が大きく異なることがわかりました。
また極限時代のボス集中婚(集団内に唯一人のボス)に対し、勇士資格は人工的であり、自我の発生する余地が示されています。さらに勇士婿入婚へと移行する中で、婚資が登場し、母系氏族に蓄財意識が生まれています。
集団内の充足を大切にした採取部族の婚姻形態と異なり、狩猟部族は、自我の入る余地があり、かつ私有的な婚姻形態に移行していることが見えてきました。
実は、本日扱った狩猟部族の婚姻形態は、その系統の一部が、現在の多くの先進国で採用されている一対婚へと繋がっていきます。狩猟部族の婚姻形態を分析することは、現在の婚姻形態を理解する意味でも大切となります。
一対婚については、次回~次々回以降に、扱う機会があると思いますので、どうぞお楽しみに。

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