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2010年10月23日

集団を超えた、共認原理に基づく婚姻体制って過去にあるの?11~神話によって統合されたアボリジニ~

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レヴィ=ストロースの『親族の基本構造』を基に、『集団を超えた、共認原理に基づく婚姻体制って過去にあるの?』シリーズ、
1~はじめに~
2~過去投稿インデックス~
3~互酬原理について~
4~インセスト禁忌とは~
5~限定交換と全面交換~
6~オーストラリアの限定交換~
7~ビルマ「カチン族」に代表される【全面交換】~
8~全面交換と購買婚~
9~父方交叉イトコ婚~
10~『親族の基本構造』の総括~
と展開してきました。
レヴィ=ストロースの『親族の基本構造』はかなり難解かつ膨大な論文ですが、かなり噛み砕いて、集団を超えた共認原理に基づく婚姻体制って過去にあったのか!について展開してきたつもりです。興味を持って読んでいただけていたら幸いです。 😀
さて、このシリーズもいよいよ今回が最終回になりますが、今日はこれまで紹介してきたレヴィ=ストロースの『親族の基本構造』を離れ、純粋な限定交換体系のオーストラリア先住民族アボリジニの実態を、紹介したいと思います。以前、。『6~オーストラリアの限定交換~』でも紹介しましたが、その後、アボリジニ研究の第一人者でもある、文化人類学者の松山利夫先生と直接会って興味深いお話しを聞く機会がありました。とても気さくにアボリジニの実態を具体的にお話していただきました。今回は松山先生の書籍の内容も含め、再整理し紹介したいと思います。
11~神話によって統合されたアボリジニ~に入る前に、応援よろしくお願いします。

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■植民初期のアボリジナル人口
イギリスによる植民がはじまった1788年当時、彼らの総人口がどれほどであったかよくわかっていませんでした。人類学者ラドクリフ・ブラウンによって1930年に初めて当時の総人口は約25~30万人と推定されます。しかし、接触伝染が基本となる天然痘の流行と大量死による人口環境の推移で、現在では70万人説が有力なようです。
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(↑クリックすると画像が大きくなります。)
上にオーストラリアの地図に重ねて日本地図を載せましたが、この広大な土地に70万人しかいなかったのです。ちなみに日本の大阪府の人口は880万人です。人口密度の違いがご理解いただけると思います。
■アボリジナル諸語の分布
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(↑クリックすると画像が大きくなります。)
アボリジニは文字を持たない民族ですが、かつて500を数えた言語は、今では五分の一に減少しています。しかし500と言っても全く違った言語ではなく、言語学者の角田太作氏による研究によると、大陸北部のアーネムランドとキンバリー地方では、狭い地域の中で相互に大きく異なる言語が話されていますが、この地域を除く大陸の大部分ではパマ・ニュンガン語群に含まれる方言が用いられていたようです。
■アボリジニの社会集団と婚姻
『6~オーストラリアの限定交換~』では、カリエラ型体系(4セクション限定交換体系)とアランダ型体系(八下位セクション限定交換体系)を紹介しましたが、今回は、割愛させていただいたムルンギン型の図解を下に載せました。現代ではムルンギンと呼ばず、ヨルングと呼んでいるようです。
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ヨルングでは集団規模が、カリエラやアランダに比べ集団規模が大きく、婚姻の対象者も8つあるセクションの中から2つのセクションが対象者になります。
■アボリジニの死生観
アボリジニの葬送の儀礼は二度行われてきました。
最初の儀礼は、人の死にともなう肉体の葬送です。その遺体を死者が生活した本来の土地に埋葬します。
二回目の葬送は、その後半年以上経てから執行されます。この時には、まず埋葬した遺体を掘り出します。ついで死者の骨を足指から順に頭骨にいたるまで細大もらさず拾い上げます。そして、ユウカリの木で出来た丸太の棺に入れ聖地に埋葬されます。
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掘り出した時、まだ肉が付いていれば親族で森に入り焼いて食べるようです。残った少しの肉を親族で食べることで、死者のパワーを受け継ぐ事が出来ると考えられているようです。しかし骨を焼くと魂も一緒に永遠に消滅してしまうため、火葬はしません。
聖地に埋葬されると、魂は精霊の世界に帰るため、その後日本のように墓参りする事はありません。
死は消滅ではなく、精霊の世界に繋がり魂は精霊として生き続けるため、決して恐れるものではないのかもしれません。
■神話によって全てを統合しているアボリジニ
一般に「部族」というとき、それは集団の全体を統括する政治組織、たとえば部族全体の長つまり王と、それぞれが役割をもつ複数の臣下からなる組織、およびそれに従う平民といった構造をもつ社会をいいます。しかしアボリジニは、こうした組織を全くもちません。
アボリジニは太古から語られるドリームタイム(精霊達の神話)の共認による共認統合によって、序列のない集団や社会を構築しているのです。
では、神話によって統合されているとは、どういうことか?
例えば婚姻相手においても、成人(男15~17歳、女13~15歳)になるとリネージ(神話の世界から繋がる祖先からの系統)の由来から、クラン・セクション・婚姻体系の神話を口承という形で伝承され記憶します。記憶していないと結婚相手が不明で、成人or仲間とはみなされません。
アボリジニにとって神話とは、集団として生きていくための規範群なのです。神話の中には集団としての期待があり、役割があります。

チリの落盤事故からの奇跡の救出劇で、絶望的な状況下で、役割と規律が、生きる支えとなり困難な状況を乗り越える力となった。
共同体の原基構造-4~規範原理より

アボリジニにとって精霊達の神話とのつながりを認識することが、役割と規律を生み、集団を統合する収束軸となっているのです。

規範とは端的に言うと、ある単位集団をとりまく外圧に対する対処の仕方そのものであり、外圧に対する集団の運営方針そのものなのではないでしょうか。
るいネット『規範原理 1』より

今回テーマとした族外婚もアボリジニにとっては、集団として生きていくための充足規範に他ならないのです。
アボリジニの集団は、序列的な統合ではなく、【神話】=【充足規範】を共認することにより統合された共認社会を構築しているのです。
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