2019年08月06日
【定説】哺乳類だけが赤血球に細胞核がない理由
●現在の鳥類・魚類・爬虫類・両生類の赤血球にはすべて核があるが、脊椎動物の中で赤血球に核がないのは、哺乳類だけである。その理由として定説では、効率よく酸素運搬するためとされている。
3 億年前、両生類から進化した有羊膜類が哺乳類を含む単弓類と、爬虫類・鳥類を含む双弓類にわかれた。恐竜は双弓類に分類され、 赤血球に核があったとされている。
では哺乳類は、なぜ赤血球の核を捨ててしまったのか。その理由は未解明だが、考えられる理由は次の3点で、それによって組織全体に効率のよい酸素の運搬を行うことができるとされている。
① 核をなくすことで容積が増し、細胞内に酸素と結合するヘモグロビンをより多く含むことができる。
② 赤血球の特徴的な円盤状の形をとることで体積当りの表面積が大きくなり効率的なガス交換が行える。
③ 円盤状になることによって、微細な毛細血管もスムーズに通過できる。
東邦大学医療センター佐倉病院「気軽に読むサイエンスの話題⑤赤血球ヘモグロビンの進化」
生物進化の途上では、赤血球に先行してヘモグロビンが登場する。酸素運搬に必要な分子の登場は細菌にまで溯る。チューブワーム(羽織虫)の巨大ヘモグロビンは体液中に拡散している。チューブワームは熱水噴出孔に棲息しており,多様な細菌とともに硫黄からエネルギー産生を行っている。生物進化の中でヘモグロビンの登場に比べて赤血球が登場するのはかなり遅く、脊椎動物以降の動物である。ヘモグロビンを体液中に拡散させておくのではなく,1個の細胞に入れる,つまり赤血球を分化させたことは,体内への酸素運搬効率を飛躍的に高めたと考えられる。
●中生代における哺乳類と恐竜類の進化
中生代とは2回の大量絶滅、約2.5億年前の大絶滅から約6550万年前の大絶滅までを言う。古生代は高い酸素濃度だったが、中生代の15%以下の低酸素環境下で、哺乳類と恐竜類は同時に進化したと考えられている。一部の恐竜は現代の鳥類と同じように気嚢システムを持っていたと考えられている。また、化石から有核の赤血球と思われる構造物が証明されているが、血液を循環していた赤血球の核の有無は不明である。獣脚類から鳥類が進化したと考えられていることから、恐竜類も有核の赤血球であった可能性が高い。一方、哺乳類は、腹式呼吸をしていたと考えられるが、中生代の哺乳類の赤血球が現代の哺乳類と同じように無核であったかどうか、また、いつ無核になったかは不明である。
「赤芽球の脱核:その仕組みと生物学的意義の考察(日本生化学会 布村 渉)」
- posted by KIDA-G at : 2019年08月06日 | コメント (0件)| トラックバック (0)